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杯ノ百七十三

 青年にも、正面に立ち尽くす童女が、自分の手で台無しにしてしまったはずの童女本人であるのかは解からない。だがそれでも彼は、誰に教えられずとも感じとっていた…自分はきっと、失敗したのだと…。

 吸血鬼を殺す事…この場から逃げ出す事…誰の糧にも、誰の重荷にもならずにひっそりと死んで逝く事…自分の人生、自分の『日常』という因縁を断ちきる事…それら全てに自分は失敗したのだと、青年は気付いたのだ。

 その瞬間、青年を支えていた最後の意地が、気力が、彼の可笑しくて堪らない…切なくて堪らない…笑顔から抜け出していく。

 そして青年は、気の抜けた風船の様に、石舞台の上に仰向けに成った。

 か細い、か細い青年の笑い声が、洞窟の冷たさに吸い込まれる様に木霊している。そうして一度全身の力が抜けてしまった後は、不思議な事に彼の左手も、両脚も鈍くではあるが再び感覚を取り戻していた。…それで、青年は何をしたのかと言えば…満足そうな顔で天井を見上げ、大の字に成る…ただそれだけだったが…。

 か弱く、か弱く反響を繰り返す青年の笑い声。それは恰も、アマテラスオオミカミが神々の笑い興じる喧騒に引かれ、天岩戸(あまのいわと)をこっそりと開いた様に…その無邪気で、屈託の無い笑い声を耳にしていた童女も…(まぶた)の奥の、紫色にぼんやりと輝く瞳を開いた。

 その大粒のアメジストに似た瞳で、青年の有り様を見つめる、童女。一糸纏わぬ姿の彼女は、どんな言葉で青年に語り掛けるのであろうか。

 童女はまず、生まれたばかりの赤子が皆そうする様に、深く息を吐き出した。…いいや、違う。こんな息を赤子が吐き出す訳がない。

 こんな溜息を吐くのは成熟した大人の女だけだ…。

 杯ノ百七十三を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)

 何だろう…。勘違いかも知れませんが、ここ二話くらいの間に俄然物語が進んだ様な。

 モチベーションとは無縁で執筆を続けてきた梟小路ですけども、何とはなしに、明日の分の執筆が楽しみな気がしております。

 それでは、また、次回の梟小路の綴る文章でお会いいたしましょう。

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