杯ノ百六十六
音の無い世界に沈んだ青年は、目下でうねる赤い水の波音を見つめながら…、
(どうにも、確実に行き場を断たれているって感じだな。二つ、三つ用事もあるからな、死んであの世に逝くのは問題じゃない。最悪、水堀の中で溺死するか、凍死する事も覚悟していた。…まっ、覚悟を決めている間に、あいつの血に先を越されたんだけどな…。だが、こうなってしまうと…あいつの血の中に飛びこむ勇気は流石に無い。こうして俺を避ける不自然極まりない動きを見ている分、尚更にな。だいたい、それが出来る位なら、あの棺に手を突っ込む事を厭う様な事も無いっての。)
と、青年は誰にともなく胸中で悪態を吐いた。
耳も、鼻も利かず、直視しているものさえも現実の光景とは思い難い。唯一の『マシな情報』と言えば、彼がいずれ死ぬ事…死ねば、この得体の知れない状況ともおさらば出来るという事だけ…。
彼が浮足立って、自分と言う一個の存在すら他人行儀に捉え始めた事も、この非常時にはしょうがない。いいや、むしろ、そんな客観的な視点こそが彼の軽挙を諌めている節すらあるのだから…それが青年の志に適っているかは別の問題として…ある意味では好都合かも知れない訳だ。
それは誰にとっての都合の良さなのか…無論、それは青年にとっての…そして青年が『日常』を生きる事を願いながら、それでいて、彼がこうなる事を…青年が『非日常』へと飛び込むのを予期し、望んでもいた者たちにとってである。
それを証明するかの様に…少なくとも、そこに何者か意思が介在しているであろう事を示す様に…ほら、青年の飛び込んだ世界が…俯く彼を映し出すものが露わに成っていく。
血は流れ切ったのだ…。
杯ノ百六十六を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)
近頃は、夜眠るギリギリまで暖房器具を動かして、そのまま碌に窓も開けず就寝いたしますので…朝目覚めると、ま~っ、乾燥していること、乾燥していること…。
多分、いびきをかいて寝ているのでしょうね。まず、起きぬけの開口一番に喉の乾きが気に成ります。
それから、日課としてすっかり定着した執筆活動の段になると…気に成ってくるのが手先の、特に指関節の乾燥。
そう言う時には、お気に入りのサラッとしたハンドクリームを手に塗って万事解決…するといいのですけども、今度は、何となくキーボードを叩く指がベトつく様な気がしてきまして、指先の部分だけティッシュで拭う事もしばしば…。
毎年の事とは言え、6月くらいまではこんなイタチゴッコが続く訳です。…とりあえずは、心の潤いまで失くさない様に、執筆活動に勤しみましょうかね(^v^)
それでは、また、次回の梟小路の綴る文章でお会いいたしましょう。