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杯ノ十六

 青年は、広くなった視界に浮かび上がった左腕を伸ばして、板戸の窪みを…金具の埋め込まれた取っ手に触れた。引き戸は奇妙な程…本当に奇妙なほど簡単に…何らの抵抗をすることも無く、壁の中に埋め込まれた戸袋へと収まった…。

 青年は良い知れぬ怖気を感じながら、気色の悪そうに、取っ手に触れた左手の指をジーンズに擦り付ける。摩擦でカッと熱くなった人差し指と中指を、親指と擦り合せながら…青年は引き戸の奥に懐中電灯の光を差し伸べる。暗闇のどこにも光は落ち様としない。

 しかし、その理由は懐中電灯の角度を下げることですぐに解った。

 (階段か…それに、ここにも窓どころか、明かり取りに成りそうな何物も存在しない。やっぱり、こっちで正解だ。吸血鬼が館に入り込む為に仕立てられた道程(みちのり)。これを逆に辿って行けば必ず、あの女の寝床に行き着くはずだ。…親父が、そうだった様に…。)

 青年はずるりと足元を滑って行く光を見つめながら、自分が、かつて父親が通った道を進んでいると言う確信を深めていった。…一段、一段、段差を縁取る闇をおぞましく感じるのは…この洋館を訪れていた当初から見せていた、父親を懐かしむことへの反発からくることなのだろうか…いや、それだけでは無いだろう。

 青年が階段の壁に左手を宛てがいながら、木造の階段をゆっくりと降り始めた。

 昔の家屋に有りがちな急な階段。踏み外さぬ様、足を滑らせぬ様、青年は拍子を取る様に埃のマットの上に靴底の型を押していく。

 その(つづみ)を打つ様な単調なリズムを聞いていると…段々と著者にも、この洋館の底知れない不気味さが呑み込めてきた…。

 この洋館には恐ろしいまでに生き物の気配が無いのだ。

 今回も、一読、ありがとうございました(^v^)

 お陰さまで杯ノ十六も、それなりに小気味良く、それなりに言葉遊びをさせて頂きました。この調子が続いてくれると良いんですけどね…。

 では、この辺で…また次の、梟小路の書く文章でお会いいたしましょう。

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