杯ノ百四十九
青年の目にも、その赤々と染め抜かれた牡丹の色が、己が童女へと抱く害意を象徴しているかの様に感じられた。
見れば見る程に白く、無垢な童女の死に顔。そして、見れば見る程に紅く、禍々(まがまが)しい牡丹模様。その二つを見比べて居る内…青年はあることに気付く…それは…、
(待てよ…こいつの寝ている布団の柄…確か、白い牡丹の花じゃなかったか…。)
その時の青年の心を支配していたのは、とてもでは無いが名状する事の出来ない感覚であった。
仮に、彼の体温が平熱を維持して居たとすれば、それを『悪寒』や、『寒気』などと言う言葉で括る事が出来ていたかも知れない。
そして間違いなく、その様に感じとれなかった事が青年の寿命を縮める事に成ったろうし…そういう意味でこれは、青年にとって『弱り目に祟り目』であったろう。
しかしながら著者には、それが青年にとっての不幸だとは思えないのだ。
彼の肉体がそうやって素っ惚けて居てくれたお陰で、恐怖を恐怖だとして単純に捉えようとしなかった事が…いつの日にか青年の、実りある出会いへと開花する…著者にはその様に思えてならないのだ。
それはきっと、これまでの青年の支えであった『非日常』の…彼に生きる勇気と希望を与えていた『父親の絵空事』の代わりに、彼を支え、守るものと成る…。
それはきっと…空想が作り出した『非日常』でも…彼に生きる許しを与える空想でも無い。
それはきっと…青年が心から望んでいた…彼が生き続ける事を切望する…それでいて、彼が生き続ける事を『強要』する…勇気も希望も霞む様な、力強い『日常』…紅く染まった牡丹の花の様な、散り様の艶やかさを秘めた新世界。
杯ノ百四十九を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)
『野郎四人で麻雀をして過ごす、侘しいクリスマスイヴ』が終り、野郎だらけの飲み以外で、次の主だった予定はと言えば…『野郎六人で麻雀をして過ごす、侘しい大晦日』…です。
まぁ、一昨年の事を思えば、群れる麻雀狂…もとい、群れる野郎が居るだけましかなぁ…フフフッ、人生の潤いなど、雀牌を湿らせぬよう、とっくに拭き取ったわ。フハハハッ…ハハッ…(^v^)大晦日の『貴女を…』更新タイミングは、見通しが付き次第、お知らせいたします…。
それでは、また、次回の梟小路の綴る文章でお会いいたしましょう。