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杯ノ百二十七

 青年は嬉しかったのだな。自分は必要とされている。自分は選ばれたのだと言う感覚が嬉しかったのだ。

 仮にそれが、食糧(しょうくりょう)として必要とされ、獲物として選ばれたのだとしても…。

 父親は吸血鬼の美貌に(うつつ)を抜かして、酔っては物語を自分に話して聞かせながらも、決してこちらを(かえり)見ることは無かった。

 母親が自分を見る時には、常に、その先に居る父親へと意識は向けられ、愛情も、憎悪も、彼という存在を素通りしていた。

 そんな幼少期を、青年期を、それが人生の全てとして青年は歩んできたのだ。

 青年はただひたすらに欲していたのだろう。

 血を吸われ、命を奪われるのであっても…お前が居なければ、お前が何もかも明け渡してくれなければ、生きられないと…自分の存在を渇望(かつぼう)される感覚を…。

 青年はそんな、『父親と、母親の息子』という存在としてでは無く…誰に頼まれた訳でもなく、童女の寝床に上がり込んだ不埒者(ふらちもの)として…馬鹿をやった挙句に、吸血鬼の術中にはまり込んだ己として…自分自身として彼女に(むさぼ)られ、吸い尽くされ、絶命する事に…底知れない程の充足感を覚えていた。

 だからこそ青年にとっては…このまま静かに死んで逝くのが、一番良かったのかも知れない。

 童女が目覚め、自分を見る。その紫色の瞳に映る感情を読み取り…絶望し、激怒する事に成る位なら…。

 膝を突いた青年の目の端。絶え間なく流れ落ちる湧水の、その奥底で見えていたはずの揺らめく月光が、透明な水の影に吸い込まれ、掻き消えた。…今、月が地平線へと没したのだな…。

 最もか弱い光源を失っただけで、洞窟内の全ての輪郭が朧気に霞んでいく様だ。

 杯ノ百二十七を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)

 昨日、『二次創作小説』の投稿をいたしました。

 で、その事が、どの程度まで『貴女を…』の更新に影響するのやらと心配して居りましたが…まぁ、特段の問題も無く、こちらはこちらで『連日更新』を継続することが出来ています。まずは、何より。

 明日にはもう一度、『熔ける微笑 乙』の更新が控えております。それに関しましても、また、この場を使って宣伝させて頂くことと思います。

 どうか、よろしくお付き合い下さいませ(^v^)

 それではまた、別作品の投稿があろうと、文字数、ペースとも滞らせはしない、次回の『貴女を啜る日々』でお会いいたしましょう。

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