杯ノ百十二
その右手が…青年の心理が足場を踏み外した一瞬に…ガクンッと重くなる。
右手に握られていた杭が、これまでの左右の動きとは異なる上下方向への圧力で、わずかに…ほんのわずかにだが、童女の肋骨の隙間を押し広げ…と、散々っぱら嫌味な感触を味わってきた青年の右手が、極め付けに最悪な手触りを覚えたのは、その時だった。
それは人差し指の傷口に、ピリッと、静電気の走った様な鈍痛。痛みと言っても、指が傷ついていなければ気が付く事も無かったであろう、些細な感触…。
しかし、青年は気付いた。…偶然か。はたまた、奇縁でか…童女の肋骨に、小さなひびが入る痛みに…。
その、あまりにも何気なく、あまりにも鮮明な感覚。青年は他人事の…それも憎い相手の『痛み』のはずの感触に、
「あっ…。」
と、思わず、自分でも目眩がしそうな程の素直な声を漏らした。
…著者は思う。それは…青年が、童女の『悲鳴』の異質さの正体と考えた振動数…奇しくも、その振動数が合致したのではないかと…。
胸に去来したわだかまりそのままに、青年が漏らした声。声量そのままに、青年が零した…童女への微かないたわりの気持ち。
そんな青年の心情が籠った声の振動数が…童女の心の琴線を揺らす振動数と…重なったのではなかろうか…。
だからこそ、どれだけ悪態を吐こうと、どれだけ気の利いた冗談を吹こうと、何らの応答も示さなかった彼女が…今は、
「…あっ…あっ…あぁっあっ…ああっ…あっ…。」
こうして…青年の気持ちに胸中を掻き乱された事を…その美声を震わして伝えているのだ…。
自分の滑らせた声に続いて、スキャットを口ずさむ童女。青年は、口を半開きにした状態で固まっている。
杯ノ百十二を読んでやって下さり、ありがとうございました(^v^)
お歳暮シーズン真っ只中。のんきに日々を過ごしている梟小路も、それなりに忙しく成って参りました。
まぁ、それでも、『貴女を…』の執筆には影響は出ないのでしょうが…問題は、当作品の更新宣言を行っている、『Twitter』の方なんですよね。
一度、更新した旨を呟けば…それだけで済ます訳にもいかず…他の利用者からの反応にお礼をしたり、反応し返して上げなければならないしで…結構、時間を食うんですよね、これが…。
そう言った事情で、かつ、現在製作中の二次創作小説を執筆する時間を捻出する為にも、これからは『Twitter』での更新宣言を行わない場合が出てくるやも知れません。
ですので、『Twitter』で『貴女を…』の投稿確認をされていた方が居られましたら、ご理解の上、宣言無しに更新が行われた理由を、『あぁ、面倒臭がったんだな。』と、察してやって下さいm(__)m
えっ、忙しいのなら、この『後書き』は削らないのかって…いやいや、まさか、そこまで追い詰められていたなら、スパッと、『Twitter』を止めますとも…はい。
それでは、また、言うまでも無く執筆最優先の、次回の梟小路の綴る文章でお会いいたしましょう。