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杯ノ一

 貴女の事ばかりを思います…貴女が居なければ、私は生きては居られないのだから…。

 貴女を憎んでいます…貴女は私から家族の暖かみを奪った(ひと)だから…だから…貴女は…今の私の全てです…。

 雷雨の夜だった。青年はずぶ濡れに成りながら、この山深い場所に佇む洋館にやっとのことで辿り着いた。

 荒い息、燃える様に火照る身体。しかし、青年には休むことは許されない。何せ、この洋館の中には、憎んでも憎みきれない相手が…親の敵とも呼べる女が眠っているのだから…。

 洋館の正面の鉄柵門には幾重にも鎖が巻きつけられ、ご丁寧にも鍵まで取り付けてある。

 青年は、背中に巻きつけて背負ってきたハンマーを手に取ると、門の錠前に思いっきり振り下ろした。

 豪雨の音に交じって、くぐもったカツンと言う音が響き渡る。だが、一振りでは錠前を叩き壊すことが出来なかったようだ。青年はもう一度ハンマーを振りかぶると…勢いを付けて錠前を叩く。

 更にもう一度、更にもう一度…っと、その最中、青年は思い返していた。

 (父さんに聞いていた通りだな…この館の作りは…。)

 青年が何度目にかハンマーを高らかに振り上げた、その時、背後で落雷の轟音が響き渡った。

 足元の泥濘(ぬかるみ)を伝わってくる様なその嬌声に…流石に青年もギクリッと…しかし、

(今さら…ここまで来ておいて…俺に、恐れる何が有るって言うんだよ。)

 青年はこの雨の様に冷たい笑いで身体の内側を満たすと…ハンマーの柄をギュッと、根限りの力で握りしめて、再び、錠前に振り下ろした。

 ガツンッと言う音ともに、錆の浮いた錠前は叩き落とされた。それに伴って、鉄作門に巻かれていた鎖もスルスルと、力を失って地面へと落ちる。

 思った通りと言うか…この様に尻切れトンボで終わりました。

 そう言った訳ですので、杯ノ二は、この続きから唐突に始まることになります。…まっ、それはそれで面白いかとも思いますが…。

 おそらくは、杯ノ二以降でもこの様ないきなりな話の終わりが、そして唐突過ぎる前回からの続きが頻発することと思います。

 ですが皆様、どうぞ、『貴女を啜る日々』をよろしくご贔屓にお願いいたします。

 それでは、また、次の梟小路の書く文章でお会いいたしましょう。それまで、お元気で。

 …何にしても、毎日投稿できるのはなんとなく楽しいねぇ…(^v^)

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