1-①初めまして
「で、ナオミはどうすんの?」
「・・・・・へ?」
いつもの学校の帰り道。
いつものように友人とともに帰り道を共にするナオミ。
「話聞いてなかったの・・・・?」
「う、うん・・・」
「はぁ~・・・・」
大げさに反応する友人の姿に、少し罪悪感を覚える。
だ、だって、少しぼーっとしてたんだから、話なんて聞けないよ!
「だから、明日の選択、どうすんの?」
「選択って、クローン学のこと?」
「そうよ。取るの?取らないの?」
あっ、そっか・・・・。
明日はクローン学の選択の日だ・・。
クローン学とは、その名の通り、クローンについて学ぶ授業のことだ。
一般的に、学校では選択制のの授業となっている。
その理由とは、学校には「クローン」の生徒たちが通っている場合もあるので、彼らに対しての配慮として選択制の授業となっている。
でも、明日はミツワー大学での講義だったな・・・・。
「面倒くさいな・・・・」
「そういうこと言わない!」
「アオイは、明日の出る?」
「当ったり前よ!なんてったって、あのミツワー大学でやるのよ!!!」
何でこんなに興奮したるわけ??
あそこって、広くて綺麗な良い学校だったけど、そこまですっごく秀でてるようなこと、あったっけ?
「あそこって、美形集団の集まりなのよ!!しかも、超がつくほどのね!!」
「そういうことか・・・・」
溜息をつく。
やっぱりそういうことだったか・・・・。
なんか裏があると思っていたけど、美形見たさに選択取るのか・・・・。
「だから、あんたも明日の選択取りなさいよ。一緒にイケメン探しましょ♪」
「わかった・・・・。明日、絶対に私とバディ組んでよね!間違ってもイケメンと絶対組まないでよ!!」
「わかった、わかった。この間のことは悪かったって」
この間のこととは、実験でバディを組む際、アオイは中々の美青年に誘われて、あっさりとナオミを捨てたのだった。
あの時、まったく知らない科学オタクっぽいぽっちゃりと組まされたんだから!!
ほんっと最悪だった・・・。
あいつ、いろいろやってることに対してイチャモンつけてくるわ、ウンチク語ってくるわで、何度殴りたくなったことか・・・・!!!!
「だから、悪かったって・・!だから、明日はあんたと一緒にバディ組むからさ、ね?」
手を顔の前で合わせて、「ね?」と上目づかいで迫ってくるアオイに、そこから先は何も言えなかった。
「あっ、あの人見たことある気がする」
ナオミが指差す先には、大画面に映るライブ映像だった。
人が多く通る交差点の真ん中のビルに、その大画面はぴったりと配置されているのだった。
「そりゃそうよ。だって、あの人私たちの親世代よりも前に活躍したミュージシャンの『クローン』だもの」
さも当たり前のように答えた答えの中には、「クローン」という言葉が。
「あの人、何十年も前に亡くなってるよね?あのクローン、まだ20代前半ぐらいじゃない?」
「亡くなって随分経ってから、遺言に従ってクローンにしたんだって。ほんっと今更だよね~」
亡くなった人は戻ってくるはずがないのに・・・・。
今更クローンという存在を作ったところで、あのクローンが元の形になんて、なるはずがないのに・・。バカみたい・・・。
人混みの中で立ち止まっていることは難しく、アオイに手を取られて画面の前を立ち去った。