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egotism  作者: 親不知
5/6

4話



 俺は先天性の病気で顔が人とは違う子供だった。

 俺は、物語の様に、養護施設に赤ん坊のまま、捨てられていた。

 だけど、養護施設の職員さんは、俺を特別扱いせず、他の子達と同じ様に育ててくれていた。

 そのせいか、俺は特別自分に劣等感を持って、育つことはなかった。


養護施設の職員の人はよく、

「人間は異常な人間しかいない。だから、異常であることが正常なんだ。この世の何処を探しても普通のやつなんてのは居ないと」

俺達の前でタバコを吸って話していた。


 学校にも普通に通っていた。小さい頃は、皆、

「どうしてそんな顔なの」

と何の躊躇いもなく、聞いてきていた。その頃は俺に気を使う人はいなかった。

 だが、中学校に上がり、少しずつ周りが、普通に接する事に、戸惑いを感じ始めたのだろう。

 何か、ある時にも、皆どこまで踏み込んで良いのかわからず、微妙な空気になることが多々あった。

 俺は居づらさを感じ、少しずつ一人で過ごす事が多くなっていった。



 ある時、俺らの中学校に転校生が来た。そいつは俺の席の隣になった。

 

「どうもー、俺、吉村 龍、よろしく。」

 俺は転校生に話しかけられ、伏せていた顔を向けた。


「うわっ、お前すごい顔してんな、何?事故?病気?」

 そいつは何の遠慮もなく、人の心に土足で踏み込んで来るようなヤツだった。なんか久しぶりだなと思った。


 「ああ、先天性のな。」


 「はー、やっぱ苦労してきた感じ?なんかちょっと暗そうだもんな。」


 「友達はいないが、そんなに苦労はないな。」


 「へー、結構いい環境で育ったのかもな。なんか割といじめられそうじゃんか?それか、お前が相当しっかりしたヤツなのか。まあ、どっちにせよお隣さんだしよろしく。名前は?」


 「北尾真也。」


 「あー北尾君ね。よろしゅう、よろしゅう。」


 何となく、こいつとは長い付き合いになるんじゃないかなと思った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 俺達は毎日、学校の校舎裏に続く、外階段で、一緒に昼食をとるようになった。

 基本は人が来なく、ゆったりした時間を過ごせる。

 龍は気さくな、人柄から、友達も多かった。それでも、何故かずっと俺と一緒に昼食を取った。

 俺達は昼食を取りながらよく話した。


 「龍って部活どうすんだ。」


 「部活ねぇ、俺できれば学生時代はダラダラしようって決めてのよ。どうせ社会に出たら忙しいのに、何が悲しくて、忙しくせにゃならんのかね。お宅は?部活入ってるの?」


 「入ってないな。帰って手伝いしてる。」


 「手伝い?家自営業とか?」


 「いや、俺両親いねえから、施設で育てて貰ってんだよ。そこの他の子達の面倒見たりとか。」


 「はー、結構苦労してんのねお宅。まあ、そりゃ大変だ。そうか、そのせいか。どうもお宅、人の面倒見慣れてる感あるよな。相手のしようとしてること、先回りで察して、軽く気遣ったりしてるだろ。」

 

 少し驚いた。こいつは飄々と適当なようで、意外と人をみているんだなと思った。最初は失礼なやつなのかと思っていたが、もしかしたら、俺に最初気を使わなかったのはわざとなのかもしれない。

 だが、単純にバカな奴なのかとも思っていた。


 「龍って、意外と、気、使える奴だよな。」


 「なんだいきなり、気持ち悪っ!当たり前やんけ。お前、俺なんか気遣いオタクなんだぞ。」


 「はは。なんだそりゃ。」


 「おー、お前俺の前で始めて笑ったんじゃないかね。お宅、考え方は暗くないけど、表情とか、暗いんだよ。もっと笑えよ。」


 「そりゃ、お前が普段面白くないんだよ。笑うとこが全然ないだけだ。」


 「おー言うなあ、お宅、嫌われてる理由、顔だけじゃなくて、性格もなんちゃいますか?」


 「お前、俺が前向きだったからいいが、後ろ向きのやつだったら、自殺しかねんレベルの話だぞ。」


 「お宅じゃなかったら、言わないの。俺は。お宅、全然卑下してないでしょ。自分の事。」


 「まぁなぁ。」


 「普通、卑屈になったりしないけもんなの?」


 「まあ、運が良かったんだろうな。なんか、良くも悪くも育ててくれた人が、正常とか、常識とか嫌いな人でな。昔から、異端者みたいな扱いされてたみたいなんだったから。俺のことを異常な目で見なかったんだよ。」


 「はー、そう言う経緯があるのね。まあ、確かに運がいいねぇ。」


 「そう言えば、お前は?どんな感じの家庭環境なの?」


 「俺は普通だなあ、妹が一人いて、ちょっと体弱いんだけど、まあ、治りかけてるし、そんな気にしなくても良さそうなんだけど。」


 「親は?何してる人?」


 「普通にサラリーマン。母親とは離婚してるけど、たまに会うぜ。まあ、母親は自由な人って感じだな。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「おい、傘持ってる?」

と、放課後、龍が話しかけてくる。

外は大雨だった。


 「持っているが、一つしかない。」


 「お宅、家近いし、貸してくれよ。」


 「断る。」

 

 「はんっ!良いもんね雨別に嫌いじゃないし、ショーシャンクみたいに帰るっちゃ。」


 と、ぶーぶ言いながら走って帰っていった。


 俺も帰路につこうとして、帰ろうとすると、下駄箱の前で女の子が立ちつくしていた。

 どうやら傘を忘れたみたいだ。


 「これ、学校の貸し出し傘。お前の友達から、渡しておくようにって言われて。使えって。」

 相手は俺の顔を一瞬見て、驚いた表情を浮かべた。まあ、いきなり話しかけられると怖いか。

 やや、不自然だろうが、相手は俺の顔にも驚きつつ、状況を理解する間もなく渡したので、相手は何も言わず、ながれるまま、受け取った。

 俺はやや強引に自分の持っていた傘を渡し、相手の返答を待たないうちに校内へ引き返し、別口から雨に打たれながら帰った。


 次の日、学校に行くと、龍が昨日、女の子に渡した傘を持って、俺のところに来た。


 「お宅、俺には傘、貸してくんないのに、女の子には貸すんだねぇ。何?狙ってんのあのコ?」


 「顔も名前も知らんし、ほとんど後ろ姿しか見てないから顔、もう一回見ても誰か分からんぞ。まあ、やっぱ、俺の傘だとはバレたか。」


 「ん?どうやって貸したわけ。なんか普通に、吉村くんて、北尾くんと、仲良かったよね。この傘北尾君に渡して貰える?って渡されたけど。」


 「他の友達から頼まれたことにして、学校の傘だって言って、渡した。」


 「君、そりゃ、気づくがな。職員室とか持ってったらそんなの無いって言われるだろうし。」


 「まあ、良いんだよバレても。とりあえず、その日受け取らせれば濡れないんだし。」


 「かー、お宅顔が普通だったら結構モテたんちゃいます。」


 「顔がこんなんだから、こういう性格になったんだけどな。」


 「はん、言い返ししてくるねえ。ま、そのうち分かってくれるやつが出てくるって。」


 「まぁ、今回はまた、避けられたけどな。渡したときに、顔見て、驚いてたし、まあいつも通りだが。」


 「何?傷ついてんの?」


 「いや、慣れてるしな。だけど何となく、今回の驚き方がいつもの感じと少し違ってな。なんか、単純なビックリよりも気まずそうな感じだった。」


 「お宅、以前何かしたんちゃいますの。」


 「いや、見覚え無かったし、始めてあった奴だと思うけどな。」




ーー吉村龍視点ーーー


 「吉村くん!」

俺が休み時間に廊下を歩いていると、後ろから、以前傘を渡された少女が話しかけてくる。


 「あー、傘少女。」

 

 「西山 穂香!。貴方、書道の授業は一緒でしょう。」


 「え?本当に?君影薄いんちゃいまんの?」


 「吉村くんて、失礼な人だね。って、そんな事は、どうでもよくて、あの、北尾くんて、どういう人?結構仲いいよね。」


 「あー、何?気になってんの?だったら直接傘返せばいいのに。お宅

、直接行かないから、傷ついてるぞー。全く、失礼なやつやで。」

 龍は飄々とした態度でいつもの調子でに話す。


 「何も知らない癖に、知ったようなこと言わないでよ。」

 そんな龍の態度とは、違い、少しムッとして穂香は語尾を強めて言い返す。


 「あー、ごめんて、なんか事情ありな感じか?」

 龍は予定調和の様に、飄々と会話を続ける。

   

 「ちょっとね。」

穂香は少し俯き、静かに言った。


 「彼、何か言ってた?」

と、続ける。


 「え?あー何だっけかな。何か驚かせちゃったみたいな事言ってたっけか、まあ良くある事だとか何とか?」

 そう龍が言うと、穂香は少し悲しそうな顔をした。しかし、心配なども混ざったようなどことなく複雑な表情をしていた。


 「へー。どうも嫌われてるわけじゃないみたいだねぇ。真也のやつは。穂香ちゃん、龍と以前にも会ったことあるでしょ。しかも、顔のことで、気まずい思いしたでしょ。」

 龍は広い範囲で引っかかりそうな言い回しで、言葉を投げかける。


 「え?北尾君がそう言ったの?」

 穂香の返しにある程度、予測を固め、龍は言葉を繋ぐ。


 「いや、真也は君の事、知らない娘だって言ってたよ。多分、君が一方的に真也の顔をみて、何か、失礼な反応をしてしまったが、真也はいつも通りのことだったから、覚えてない。そんな感じなんじゃないの。」


 「吉村くん、何も考えて居ないようで、随分観察してるわね。でも、想像でしょ?」


 「まあ、想像なんだけど、真也の口ぶり、穂香ちゃんの態度、状況事実を組み合わせると、結構こんな想像になりそうじゃない。」



少し、間をあけつつも、穂香は

 「まあ、概ね当たってる。でも、もっと酷いのは、私は気まずくなったんじゃなくて、怖かって、泣きそうな顔して、逃げちゃったの。彼は落とした、ハンカチを拾ってくれただけなのに。前も、こんな風に職員室に届けてくれていたの。それで、彼の事を聞いて。でも自然に話せる自信もなくて、また、怖かってしまったらって怖くて話しかけられなくて。」

と話した。


 「あー、そりゃ酷い。真也じゃなきゃ、トラウマなるわ。女子に走って逃げられるとか。」

 穂香はそれを聞き、グッと落ち込む。


 「あーあー、まあ、でもそういう風に思ってくれてることに、感謝するような奴だと思うよ。真也は。傘を貸したときも、自分の事より、君を驚かせてしまったことの方に気を遣ってたみたいだし。」

 穂香はより落ち込んでしまった。罪悪感が刺激されていた様だった。


 「まあ、でもほらいつものことだし、気にしてなさそうだから。」

 と龍は言葉を取り繕う。しかし、穂香は下を向いて黙ってしまった。龍が困って、穂香を見ていると、不意に小さな声だが、はっきりと、


 「いつものことだからで、済ませていい訳がないじゃない。そんな事がいつもの事だなんて悲しすぎるじゃない。」

 穂香は少し目に涙を溜めながら龍に食ってかかった。

 「いつも、そんな目に遭って、それでも私に親切にしようとしてくれて、それでまた、傷ついて、でも、私はまた傷つけてしまうかもって謝りもしないで。」

 穂香は感情を高め、声を震わせながら、言葉を紡ぐ。龍は穂香の様子を見て、色々と悩み、それでも答えが出ないでいるのだろうと思った。

 

 龍はそんな穂香の感情と打ってかわり、冷たい声で、

 「君、悲劇のヒロインみたいな事言うねえ。」

 思いがけない龍の声のトーンと発言に、穂香は驚きの眼差しで龍を見る。


 「どういう意味よ。」


 「他人のことをみているようでいて、自分の事ばっかりだなあって。確かに気遣っているのかもしれない。共感しているのかもしれない。でも、真也は本当に気にしてないんだよ。謝りたいなんてのは、君の勝手なんじゃないの。本当に真也の事を思うなら、今まで通り、関わらなければ良いんだよ。なんとも思ってないんだからね。君が、考えていることは、自分の殻に閉じこもり、相手を勝手に決めつけて、同情して、至極、自分勝手な行動だよ。」

 と龍は淡々と、冷たい声で話す。


 穂香は強い言葉に圧倒されながらも、

 「じゃあ、どうすればいいの。このまま、彼はずっとこうやって、他人に優しくして、冷たくされて生きていくの?」


 「それこそ、君には関係ないよ。あいつは自分の人生を可哀想だなんて思ってないし、報われたいって思って優しくしてるんじゃない。多分、そういう人間になりたいからそうしてるんだよ。君が、やっていることは見下しだよ。」

と龍は冷たく返す。


 「確かに君の言う様に、真也は過酷な人生を送ってきた可能性だってある。君はそこに踏み込もうとしているんだ。彼の人生に大きな影響を与えてしまうかもしれない。彼と関わるならそれくらいの覚悟が必要な可能性だってある。もしかしたら、君のしようとしていることはそれくらい重い可能性だってあるんだよ。だから、覚悟がないなら辞めておいたほうがいい。」


 龍の言葉に穂香は、自分の言葉を否定され、呆然としていた。もしかしたら、自分の考えていたことは、自分の罪悪感を紛らわすための行動なのかもしれない。彼の人生の痛みを軽く勝手に想像して、決めつけてと。

 穂香は、恐ろしく冷静な龍の言葉に、呆然とし、言葉を出せずにいた。


 

 「だから、真也のためじゃなくて、君の責任で君の覚悟で、君のために、真也と話してみなよ。」


 「え?っ」

と、更に思いがけない言葉に穂香は顔を上げる。


 「確かに、今までは真也は気にしていなかったかもしれない。でも、もし君が、もっと踏み込めば、真也は今までとは違う痛みを感じてしまうかもしれない。君は真也に対して、自己満足でそんな事をしようとしているんだよ。だから、覚悟がないなら、やめたほうがいい。」


 穂香は、まっすぐ龍の目を見つめながら、黙って聞いている。


 「もし傷つけてしまっても、最初は上手く出来ないかもしれない。けど何回でも自然に話せるようになるまで、話しかけに行って、真也の事を知って、そんな風に、関わっていきたいって覚悟があるなら、もしかしたら、真也の人生は違った色が生まれるのかもしれない。」

 と何処か遠くを見るように龍は言う。


 「どこまで他人のためなんて言おうと、人は勝手に想像し、自分の為に人に関わる。

そして、勝手に救ったり、救われたりする。でも、それを無意識でやってしまえば傲慢さが生まれる。だから、自分の為にでいい気がする。自分の為に人の為に。とかね。」

 


 穂香は龍の言っている事を何となく理解し、少し考えると、少し潤んだ目を擦り、「ありがとう」と言葉を残し、そのままの勢いで、教室に向かって行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー真也視点ーーーーーーー

 

 昼休み、俺と、龍は昼食をいつものように一緒に取る。


 「何かこの前傘貸した子に謝られたんだけど。」


 「え?何で?」


 「何か、前に一度会ってたらしくて、その時も逃げてしまって、本当に失礼だったって。」


 「どう思った?」


 「なんか、悩んでたみたいだし、悪いなあって。」

 そんな事を話していると、後ろから階段を降りてくる音がして、俺と龍は後ろを振り向く。そこには西山さんが立っていた。


 「あの!私もたまに一緒に食べてもいいですか?」


 「え?何で?別に本当に気にしてないから気使わなくても良いよ。」


 「いえ、私が一緒に食べたいんです。だめですか?」


 「あー、まあ別にいいけど。」


 「俺は反対だっちゃ。俺達の憩いの時間を邪魔するでない。」

と龍は割り込むが、それを西山さんは無視して、

 「ここ、失礼しますね。」

と腰掛ける。

 

その感じに疑問を持ち、

「もしかして、2人って知り合いだったりする?」


 「まあ、ちょっとね。」

と龍はニヤニヤしながら言う。


しかし、話すこともなく、気まずさを埋めるために俺は西山さんに、

 「西山さんて、趣味とかあったりします?」

 と尋ねる。

 

 「は、はい。音楽とか結構聴きます。」

 

 「へー、どんなん聴くんですか?」


 「yoasobiとか、ヨルシカとかですかね。

北尾くんも聴くんですか?」

 

 「いや、俺はほとんど聞かない。サブスクとかも入ってないし。」


 「え?あーじゃあ逆に趣味とかあったりしますか?」

 

 「え?ん、あー趣味か、あー」

 

 「家とか帰ったら何してるんですか?」

俺は基本施設の手伝いをしていたが、家庭環境などを聞くとより、気を使ってしまうかと思い、言葉を濁していると、


 「あ、言いづらければ大丈夫ですよ。ちょっと踏み込みすぎでしたかね。」

と西山さんは気まずそうに言う。

 俺はこんな事なら最初から話せば良かったなと後悔していると。


 「ちょっと!何その退屈な会話。」

と龍が痺れを切らし混ざってくる。


 「いや、ほぼ初対面だし、相手を知ろうと、、」


 「穂香ちゃんは部活は?」


 「軟式テニスやってるけど。」


 「はー、テニスか、テニス少女はモテそうだね。モテる?」


 「いや、そんなにはモテてないと思うけど。」


 「そんなに?何か合った?」


 「え?いや、まあちょっと。」


 「好きな人とかいるの。」


 「おい!お前は踏み込みすぎ。」

と俺は割って入る。そうすると、


 「あはは。」

と西山さんは笑った。

 

 「何か、2人って全然違うのに何で仲いいのか分からなかったけど、何か似てるかもしれませんね。2人とも適当に話しているようで、裏では凄く考えながら話しているようで、何となく温かみがあります。」

 俺と龍は顔を合わせ、首を傾げる。


 「何か評価高くねえか?ほぼ初対面なのに、龍何かした?」


 「いや、結構思い込み激しく、自分の中で勝手に燃え上がるタイプなんちゃうの」


 西山さんは、少し恥ずかしそうにしながらも、取り繕う様に

 「褒めてるんだから、素直に褒められてよ。」

 と言う。


 「あれ?そう言えば西山さんて、龍にはタメ口ですよね。」


 「え?ああ、私、北尾君には敬語ですけど、基本、皆タメ口ですよ。」


 「え?なんで俺だけ?まあ良いんだけど、俺あんまり敬語得意じゃないから、タメ口にするわ。」


 「え?はい。じゃあわたしもタメ口にします。いえ、タメ口にする。」

俺は何となく西山さんは俺に気を遣っていないと、思われないように気を遣っているんだろうなあと思った。


 「西山さん、本当に気、使わなくても良いよ。別に俺は本当に、覚えてなかったし、気にしてないから、せっかくの昼休みなんだし、俺も、無理されても迷惑だし。」

 と、俺は彼女の罪悪感を紛らわそうと、わざと強い言葉を使った。


 しかし彼女は気まずそうにするどころか、

「あはは」と笑い、

 「やっぱり、2人似てますよ。人のことばっかり見てます。何処かいつも深いところを見ていて、わざと強い言葉を使ったり。」と俺の方に向き直り、


 「でも、私は、私の為に北尾君と話してみたいんです。罪悪感とか、そういうのもあるかもしれないし、純粋な気持ちだけじゃないかもしれない。それでも、私は図々しく、北尾君たちと関わってみたいんです。」

 と、清々しく言う西山さんに少し驚いた。何故か隣で龍がニヤニヤしながら、コーヒー牛乳を飲んでいた。

 何となく、彼女とも長い付き合いになるのかもしれないと思った。


 

 



 

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