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egotism  作者: 親不知
3/5

3話

「坂田くん。進路希望ちゃんと書いて貰えないかな。」


 俺は顔を上げると、学級委員の確かーー村田?が立っていた。


「君、白紙で出したみたいだけど、どうするのかちゃんと書いてくれないと通せないよ。」


「あー、まあ、じゃあ」

と言って、俺は就職と書く。


 「就職か、大学は行かないつもりなのか?職種とかは決まってるの?」


 「あー、そこまで決めないとだめなやつ?」


 「うーん、まあ一先これで出しておくけど、ちゃんと進路のこととか考えたほうが良いよ。」

と言い残し、村田は去っていった。


 「あいつ、誰にでもあんなお節介なわけ?嫌われてる?」

と隣の結城さんに話しかける。


 「貴方が言う?それ。結構彼、人気者だと思うわよ。お節介だけど嫌味ないし、結構本気で相手のこと考えてるみたいよ。」


 「まあ、確かに先のことしっかり考えたほうが良いけど、高校生でそんなに考えるやつのほうが珍しくないか?」


 「まあ、確かにそうだけど、彼の言っていることは間違ってはないと思うわよ。実際、結構人生に置いて大事な時期だし。」


 「あー、余計なお世話だな」


 「だから、貴方が言う?それ。」




1限が始まり、体育の授業になると皆、着替えてグラウンドに出る。

まず、ペアになり、ストレッチが始まが、当然俺は一人になった。

 そういえばクラスに仲のいい男友達っていないな。

 そうすると後ろから、


「坂田くん、僕と組もうか」

と村田は話しかけてくる。

 

「僕もあぶれちゃって、良かったら気まずいし、一緒にやらない。」

と俺の方にフォローまでしてきた。

 こいつ、人に気を遣って生きているんだなぁと思った。


 「ああ。」

と答えストレッチを始める。


 「坂田くんは、もう、体調良いのかい?」


 「ああ。」


 「記憶も思い出せないって聞いたけど。」


 「ああ。」


 「坂田くんて、僕のことあんまり好きじゃない?」


 「ああ。」


 「ははは。そこまではっきり言われると、清々しいね。」


 「お前、嫌われても良いって思ってるだろ。」


 「いや、そんな事ないよ。傷つくし、出来れば嫌われたくないけど、そればっかりはしょうがないし。」


 「最初から、嫌われる前提で覚悟して、話して干渉してるだろ。」


 「坂田くん。急に凄く詰めてくるね。まあでも、これだけお節介を焼くんだから、嫌われても仕方ないとはいつも思ってるよ。でも、こっちは出来るだけ相手のことを考えて話せるようにしようとは思ってるけど。」


 「なんか、お前人間味ないんだよな。どこか、自分を自分に入れてない感じがして、お前と話しても面白くないんだよ。」


 「随分はっきり言うね。坂田くん友達少ないでしょ。」 


 「まぁなぁ。」


 「でも、良く人を見てるね。凄く良く見てる。僕はずっと君は人に興味がないと思ってたから意外だったよ。」


 「まあ、記憶ないからな。お前もここまで言われてよく、怒らんな。」


 「僕はね。そこまで自分にも興味がないんだよ。他人のために動ければそれで良いと思っているよ。」

 と、村田は何のためらいもなく言う。多分何か色々と覚悟があるんだろう。


 「お前、話し甲斐ねえなぁ。やっぱ人間味ねぇわ。」


 「ははは。」


 俺達はストレッチを終え、授業に入る。授業はマラソンだった。

俺は入院をしばらくしていたせいか、全然体力ないみたいだ。

 6限まで、疲れは取れず、寝て過ごした。




 「貴方、今日ずっと寝てるわね。」

隣の結城さんの声で目を覚ます。


 「あー、めちゃくちゃ体力ねえみてぇだ。コイツ。」


 「運動神経、結構ないんじゃない。」


 「意外な欠点だな。スポーツ万能かと勝手に思ってたが。」


 「私、美術部行くけど、坂田くんはどうするの?」


 「あー、まあ行っとくか。」

と、俺と結城さんは美術部に向かうと、村田と、野々宮が話している。


 「これは、ちゃんと部員を集めたとは認めづらいよ。幽霊部員に近いし、部費とかも出しづらいよ。」

 

 「えっ、でも一応ちゃんと部員は入れましたよ。」


 「部費って言うのは、上限が決まっているし、学校全体のためにその部活がどこまで貢献できるかとかを見越してつけないといけないんだよ。だから、これでは部活とは認め辛いよ。」


 「どうしたんだ。」

と俺は割って入る。


 「坂田さんと、氷室さんを入れる事で、部活の廃部を取り消して貰おうとしたんですが、、、」


 「俺等がちゃんとした部員じゃないから、認められないと。」


 「はい。」


 「一応、入ってるし、それじゃだめなのか?」


 「これだと裏口入学みたいなものだよ。ルールは本来意味があって作られているものだから、そのルールの形だけ乗っとても、本質をねじ曲げてしまっているよ。」

 と村田は言う。


 「じゃあ、俺等が毎日ちゃんと来るなら良いってことか?」


 「まあ、そうなるけど、ちゃんと、部活として活動してないとだめだよ。来てダラダラするだけでは。」


 「それって、誰が決めるんだ。例えば、ダラダラしている様に見えるけど、必死に創作のエネルギー蓄えているかも知れんくないか。」


 「一応、僕は全部の部活を責任を持って、見て回っているから、僕の判断になってしまうけど。それと、業績とかも加味して、判断するようにしてるけど。」


 「それって独裁に近くないか?」


 「そう思われても仕方ないけど。それが、この学校のルールだし、ちゃんと、ルールを設定しないと、学校であっても、無法地帯になってしまうよ。」


 「あのっ!」

と野々宮が割って入る。


 「どうしたら、ちゃんと認めて貰えるんですか?」


 村田は少し考え、

「そうだね。一先、コンクールに三人とも絵を出展してもらう事。それを美術部の基本活動として、部員の数がこの人数なら、コンクールの業績を加味して、存続させるべきかどうかを会議に入れる感じにしようかな。」


 「結構、強引じゃねえか?」と俺は言う。


 「一応、その部活を希望する人数か、実績かのどちらかの要件を満たしてもらうという事を条件にしたいと思ってるよ。そう言い換えればそれなりにフェアだと思うけどな。」

そう言って、村田は出ていった。


 「野々宮さんて、賞とかは狙えば取れる?」


 「いえ、私、多分賞とかは」


 「結城さんはそもそもコンクールに出す絵をちゃんと描く暇とかあるの?」と俺は尋ねる。


 「まあ、入ると言ってしまったし、陸上部が休みの日にちょっとずつ仕上げればなんとか。」


 「どっちかといえば、賞が問題か。」


 「貴方が本気出せば、賞とかは取れないの?」


 「どうなんだ。俺自体は絵が描けるきは全然しないけどな。どっちかといえば、もっと裏口入学みたいな方法取った方が良い気がするけどな。理事長脅して、上の権力使うとか。」


 「そんな事したら、大問題になるわよ。」


 「まあ、最悪退学だよな。」


 「あのっ!私頑張ってみます。本気で描いて、賞、目指してみます。」

 と、野々宮さんは言う。


 「そうだな。まあ、取れるかも知れないし、一先頑張ってみるか。」



 俺等は、2ヶ月後にあるコンクールの絵の締め切りに向けて、本格的に絵を描き始めた。

 俺も絵を描こうと描き始めたが、この前の様には筆が乗らず、素人と変わらぬ絵を描き続けていた。当然、結城さんも、野々宮さんも俺の絵を見て、当選することは不可能だと気づいていた。

 


 「野々宮、もう帰ろう。暗くなるぞ。」

  

 「いえ、まだ全然出来てないんです。もう少しやらせてください。」


 「でも、浮かばないんだろ。絵。ずっとにらめっこしてるぞ。」


 「はい。少し焦ってしまって。でも、焦れば焦るほど、浮かばなくて。」


 「明日、連れていきたい所がある。ちょっと付き合ってくれ。」


 「いえ、明日も描かな、、、」

と言いかけた野々宮の言葉を遮り。


 「良いから付き合え。」

強引に言われて、渋々野々宮は頷く。



 次の日、部活中、部活にいかず、俺は野々宮を近くにある幼稚園に連れて行った。

 「今日はこの子たちに絵を教えてやれ。」

と唐突に、俺は野々宮に言う。

 「えっ?そんな事してる場合じゃ。」

 「良いから。」

野々宮は渋々、幼稚園の子供たちと一緒に絵を描き始めた。


 「おねーちゃん、象描いて。」

 「イルカ描いてー。」

 「鹿さん、鹿さん。」

 野々宮は、園児達の相手をするうちに、コンクールの絵の事など忘れて、楽しそうに描いていた。


 日が暮れて、夕方になり始めると、親が迎えに来始め、最後の子が帰ると、俺達も園長先生に挨拶をして、幼稚園を後にする。



 「私の気分転換にしてくださったんですよね。ありがとうございます。」

 

 「野々宮、お前の絵ってさ、コンクールに出すための絵じゃないだろ。本当はこういうために絵を描いているんだろ。だからさ、そんなの忘れて、好きな絵を描けよ。」


 「え?でも賞を取らないと、美術部が。。」


 「確かに、美術部は賞を取らないと、なくなっちまう。部費だってでなくなる。色々不便かもしれない。だけど、今、賞のためにお前が絵を無理に描いたら、それこそ本末転倒だと俺は思う。お前の絵は誰かに評価されるためにあるんじゃないだろ。部費が足りないなら、皆でバイトすりゃ何とかなるし。」

 

 「何でそこまでしてくれるんですか?坂田さんは美術部に入りたいわけでもないですよね。」


 「さあなぁ。お節介だからじゃねえか。」


 「坂田さんは、いつも人のために何かしようとしてますよね。」


 「いや、俺は多分自分の欲のためだと思うぞ。色々知りたいってのもあるし、本当は村田の野郎の方が、人のためにって思ってると思うぜ。形は違うが。」


 「どう言うことですか?」


 「多分、村田は大勢のために、少数を切り捨てる正義を元に動いてるんだよ。学校全体の利益、学校全体の利益が上がれば、生徒のための施設は充実し、もっと多くの人を幸せにしてやれる。そんな風に、大きく見なきゃいけない立場なんだよ。自分が嫌われても、大きく見れば、良い方向に向かうように。」


 「私たちの美術部をなくしてもですか?」


 「大きな目で見れば、無くす事が学校のためになったりすることもある。悲しい事にな。だから俺は、人のためじゃなくて、自分のために、自分のエゴで、美術部を無くさない様に動くし、結局、自分周りの人が良ければ他は良いっていう考え方なんだよ。極論で言えばな。」


 「何か、悲しいですね。」


 「誰も間違って無くても、分かり合えない時もあるんだよ。と言うより寧ろ皆間違ってないんだよ。だからルールが正義になる。それを村田はやっているだけなんだよ。」

 野々宮は黙り込んでしまった。何も言えないんだろう。結局俺等はルールに従うしかないのだから。どんなに悲しくても、そうするしか無いのだから。


 コンクールの結果、誰も賞を取ることは出来なかった。

 「短い、美術部生活だったわね。」

 と結城さんが言う。

 

 「まぁなぁ。」


 「賞は取れなかったですけど。でも何か楽しかったです。皆でコンクールに向けて絵を描いたのも。幼稚園でみんなと絵を描いたのも。」


 「幼稚園?」

 結城さんには言わずに行っていた事を思い出す。

 

 「なにそれ。また、私だけ除け者にしたの?」


 「あー、まあ結城さんにはあんまし関係ないしな。」


 「はい。」

と、野々宮は悪戯に笑う。


 「貴方達、最近仲良いわよね。ちょっと前まで、怖がってた癖に。」


 後ろの扉がガラッと空き、村田が入ってくる。

「これ、君の仕業かい?坂田くん。」

村田は俺達にに、幼稚園児の描いたおねえさんありがとうという手紙と、野々宮の似顔絵を見せた。


 「え?どういうことですか?」

と野々宮は問いかける。


 「今日、会議で部活の話になった時、理事長が、美術部は地域貢献による我が校の印象向上を見込めるため、このまま存続を様子見するという方向にするって言い出したんだよ。」


 「まあ、その部活に価値が見込めるんなら、廃部にする必要はないわなあ。」


 「どこまで君が糸を引いているのかはわかんないけど、まあ、上手くやったね。でも、これから先も効果が見込めるかは分からないよ。僕はそれでも、ほかの部活に回したほうが価値があると思うし。」


 「それでも、ルールだろ?一先、先送りにはなったわけだ。」


 「そうだね。まあ、僕にこれを止める権限はないし、一先ずは存続かな。」

 野々宮は訳が分からず俺等はの会話を目で追っている。


 「まあ、とりあえず、僕は行くよ。まあ、良かったね。美術部存続出来て。」

 村田は皮肉っぽさなど一切なく。感情もあまり感じない言葉を発し、美術室を後にした。


 「坂田さん。そのために幼稚園連れて行ったんですね。」


 「まあ、打算もあったわな。単純に子供と絵を描くことが野々宮のためになるかもなとも思ってもいたが。」


 「貴方、妙に頭回るわね。」

と結城さんが言う。

 

 「大分、分の悪い賭けだったけどな。しかも今は一先だしなあ。」


 「でも、まだ、続けられるんですよね。。。また、坂田さんに助けてもらっちゃいましたね。」


 「いや、そんなつもりもないけどなあ。野々宮から、絵の事いろいろ聞きたいって打算もあるし。」


 「絵の事ですか?」


 「ああ、俊の記憶を辿るのに、絵から探していったりするのもありかもなあと思って。俊爺さんも画家だったらしいんだよ。だから、その絵とか読み解くの手伝って貰ったりとかもしたいしなあ。」


 「俊?」


 「あー、俺の下の名前だな。記憶なくなってから他人みたいだから、昔のこいつのこと俊て呼んだりしちゃうんだよ。」


 「なんか、本当に他人が入ってるみたいですね。でも分かりました。こちらこそ色々手伝わせてください。」


 「あーじゃあまあ、今回の件はそれで返してもらうってことで。」


 「また、私を置いてきぼり、、、」


 「はいっ!。よろしくお願いします」

と結城さんの言葉に被せて野々宮は言う。


 


 体育の授業で俺と村田はまた、ストレッチを一緒にすることになった。


 「坂田くん。本当に変わったね。あそこまで、人のために動くと思わなかったよ。」


 「お前、どっちでも良いって思ってたろ。最初から賞を取るでも良いし、廃部になっても良いし、とにかく、学校の利益を求めてたろ。」


 「もちろんだよ。僕は常に学校を良くする事を考えているし、私情は挟んでいないつもりだよ。」


 「何でそこまでする。学校を良くして何の利益がある。」


 「これは僕の役割なんだよ。皆が、より良く過ごすために、動くのが生徒会の役割だからね。」


 「まあ、ちゃんと答える気は無いってことか。でもな、俺は別に大勢を大切にしたいなんてほど、大した人間じゃないからな。ルールの本質は人を幸せにするためのもんだと思ってるから、ルールで人が不幸になるんなら、そんなもん要らねえと思うしな。全員が納得できるルールをじねえなら、俺は邪魔するぞ。」


 「そんなに単純じゃないよ。君はずっと綺麗事ばかりだね。」

 村田は表情は笑っていたが、恐ろしく冷たい声で言った。


 「へぇ。なんか始めて感情見せられた気いすんな。」


 「なんちゃってね。」

村田はいつも通りの鉄面皮でニカッと笑った。


 俺はまた、6限まで寝て過ごし、結城さんにどやされた。



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