1話
「全部この顔のせいだ、こんな顔に生まれなければっっ」
という自分の叫び声が頭に反響している記憶を最後に目が覚めると、目の前には昔話に出てくる神様のような爺さんが話しかけてきた。
「ちと、やっかいなことになりよりましてな。。お前さんの身体は死んだが、意識が片方の身体に混ざり合い、2つの意識が1つの身体にある状態になってしまった。だが、1つの身体に意識を2つもつ事はできんのじゃ」と俺の方を向いて話す。
隣の男が答える。
「俺は良い。このまま死なせてくれ。」と答える。恐ろしく美形で、スラッとしている男だった。まつ毛は長く、鼻は高く、堀は深く。文句の付け所のない顔をした男だった。
「そうか。お前さんはどうかね。」
「俺の体は死んだけど、こいつの体を貰って生きていいってことか。」と俺は尋ねる。
「まあ、そうなるわな。こいつが、良いと言うなら。」
と言い終わるのを待たず、俺は
「マジか。この体くれんのか。何が辛いんだそんな見た目持ってて。勝ち組じゃんかよ。」と俺は言うが、隣の男は何も答えない。
「まあ、こんなにすぐ答えが出るとは思わなんだが、双方異論がないならそれで良いかね。」
「ああ」と隣の男が答えると、俺も頷く。
その瞬間また、意識を失い、目の前が白んでゆく。
「痛ッ」と頭の痛みを感じつつ目を開けると、病室だった。窓からは眩しいほど光が入り、心地のよい目覚めだった。
腿のあたりに気配を感じ目をやると、これまた恐ろしく美形な少女が、寝ていた。暫く見惚れていると、ゆっくりとその少女が目を開いた。
こちらと目が合うと少女は、バッと立ち上がり、
「看護婦さーん、」と叫びながら病室を出ていった。
俺はそれを眺めつつ、あれは彼女かと妄想を膨らませていたが、あの男の顔によく似ていたので、姉か、妹の線が濃いかなどと考えていた。
暫くすると、医者から色々と説明があり、運の悪い事に、ビルから飛び降りた俺にこいつはまきぞいをくらい、病院に運ばれたらしい。俺の元の体は植物状態になっているらしい。しかし、何故こいつは死ぬことを選んだのだろうか。どうにも事故だったようだし。俺は一先記憶がないことにして、様々な説明を受けた。
名前は 坂田 俊。
年齢16歳。高校生。
両親はおらず、姉との2人暮らし。
姉は2つ上の18歳。
母親は俺が物心ついた時には亡くなっており、父親は俊が13歳の頃に交通事故で亡くなったらしい。家は一軒家を持っていて、ある程度父親は貯金をしており、残った遺産で暮らしているらしい。ただ、そこまで裕福ではないので姉が高校を卒業してからは働いて養ってくれているようだ。
1週間程度、病院で過ごし、俺は退院し、姉と共に家に帰った。その間に何度か姉は見舞いに来て、甘いものを差し入れてくれていた。
家に帰り、昼食を姉と一緒にリビングのテーブルで退院祝いに寿司を買って、一緒に食べた。
「しかし、立派な姉さんですよね。こんな物語みたいな兄弟いるんすね」と他人事の様に俺は話しかける。
「あんた、記憶がないとはいえ、性格まで180度変わっちゃうもんなのかね」と姉は呆れるように言う。
飄々と言っているが、一瞬顔が曇ったのを俺は見逃さなかった。やはり悲しいものなのだろうなと俺は考えていた。若干、こいつの体を貰ったことに罪悪感を感じる。何でこいつは死ぬことを選んだのだろうか。 「あんた学校はいつから行くの。」と俺の思考を遮るように姉が話しかけてくる。
「いつから行っていいの。」
「一応、もう大丈夫みたいだから、来週とかからいったら。」
「じゃあ、それで。」
「あんた、そんな感じで学校馴染めんの。」
「行ってみねえとわからんな。しかし、このルックスならクラスの1軍で人気者でモテモテなんじゃないの。」
「あんた、基本的に喋らないし、学校での事とかはよく知らないよ。まあ、虐められたりはしてなさそうだけど。」
「友達とか連れてきたこととかないの。」
「そういえば、見たことないねえ。実は友達いないんじゃない。」
と姉は意地悪そうに言う。
俺は姉の感じをみて少し疑問に思い、
「あんまし、喋んないって言ってるけど、結構、仲良くない?お宅ら兄弟。」
姉はまた一瞬表情を曇らせるが、すぐに元の表情に戻り、
「まあ、意外とこの事故のおかげかもね。あんたはいつ頃かから、急に暗くなったからね。。そういえば、昔はこんな感じの性格だったかもね。」
何となく、何かあったのかもなと思った。こいつが、生きたいと思わなくなった理由もこのあたりなんだろうか。
1週間後、俺はGoogleマップで場所を調べながら、学校へ向かった。
校門の辺りまで行くと、体格の良い、柔道部みたいな見た目の男が話しかけてきた。
「おう、俊、治ったのか。」
「あー、なんか記憶喪失みたいだ、、お宅俺のクラスメイト?」
「何となく、話は聞いてたが、本当みたいだな。まあじゃあ席とか分からんだろうから案内してやるよ。」
「おー助かるわー。後名前は。」
「岩田 宗光」
「なんて呼んでた?」
「宗光」
「じゃあ、俺もそれで。」
教室に入ると、遠巻きにこちらを見て軽くざわざわしていた。
「ここ」と宗光に言われ俺は席につく。俺の席はクラスの一番後ろの一番奥だった。宗光は俺と同じ列の前から2つ目の自分の席に荷物を置き、俺の元へ来ると、
「俺は屋上に行くけどお前はどうする?」と聞いてくる。
「屋上?授業サボる感じのキャラかお前?」
「お前も結構そうだけどな。オレと違ってテストの点は良いが。」
「おー、やっぱカッコいい感じのキャラか」
「本当に他人事だな。記憶なくなると、こんなんになんのか。別人だな。」
「俺は辞めとくわ。ちょっと他のクラスのやつらと話してみるわ。」
「お前、嫌われてるから、辞めたほうがいいぞ。」
と言い残し、宗光は教室を出ていった。
あいつ嫌なこと言いやがって。俊の奴は嫌われてるのかと思いながら。別にいいかと隣の眼鏡をかけた、あからさまに根暗そうな女に話しかける。
「おはようさーん。俺記憶喪失になっちゃったから、改めてよろしくっちゃ」と気軽に話しかけると、顔を背けて、無視された。
「おい、何で無視するか」
「あの、あまり話しかけないで貰えませんか。貴方は記憶を失っているかもしれませんが、私は貴方にされた事は忘れてません。私は貴方が嫌いです。」
こんな堂々と嫌いと言われるとは。しかし、怖がられてるとかじゃなくて、普通に嫌われてるのか。どういう奴なんだこいつは。サボったりして、不良みたいな奴なのかと思ったが、根暗な女が不良にするような反応じゃないな。
「あちゃー、俺あんたに何したの?」
「もう、別にいいので、話しかけないで貰えませんか。」
「じゃあ、教えてくれや。教えてくれるまでは話しかけるぞ。」
心底嫌そうな顔をして、
「貴方は私が初めて、話しかけた時に無視して、私が聞こえなかったのかと思って、もう一度話しかけたら、舌打ちして、話しかけるなと言ったんですよ。」
「あー、そういう感じの奴か、やっぱ、顔が良いと根暗女子とか相手にせんのか」と言うと。
また、凄く嫌そうな顔をして、
「記憶がなくてもやっぱり根っこの性格は変わらないんですね。」と皮肉を言いバックからスマホを取り出しイヤホンを付けた。
「おい、もっと話聞かせてくれや、学校の事とか分からんのやんけ」
根暗女子は無視する。
俺はラインを開きクラスラインとかあるかなと見てみるが、俊はクラスラインとか入ってないっぽい。もしくはないか。
俺は少し離れた席の男の3人グループところまで行き、
「なあ、クラスラインとかある?」
と話しかけると、三人はおどおどしながら顔を見合わせ、真ん中の男が、
「あの、これですけど」
「招待してもらっていい?」
「は、はい。じゃああの、友達登録を」
「これでいい?」
「は、はい。じゃあ招待しておきます。」
「あと、俺の席の隣の席の女の名前って何?」
「氷室、氷室 結城さんです。」
「どういう字?」
「こおりに教室の室に、結ぶ城です。」
「お前、クラスの女子の名前、フルネームで漢字全部言えんの結構怖くね」と俺がと言うと。
やや、慌てて、
「い、嫌、そんな事ないですよ。」
と言った。あんまし興味ないが、こいつ、あの根暗女の事好きなのかなとか思った。
俺は席に戻るとライングループから氷室 結城の名前を探し、電話を掛けた。すると隣の結城はビクッとして、こっちを向いた。
「何のつもりです?」
「お前が無視するなら、俺は邪魔をし続ける。」
結城はため息をつき、
「わかりました。何が聞きたいんですか。」
「俺ってどういう立ち位置の生徒?」
「基本的に、岩田君以外の人と話しません。と言うより、岩田君がいつも一方的に話して、基本的には相槌打っている感じです。授業は受けたり受けなかったりです。ですけど、毎回学年10位の成績は取っています。」
「不良ってわけでもないないんだろ?」
「多分。学校終わってからは何をしてるかは知りませんけど、部活とかはしていないみたいです。」
「暗い?」
「はい。」
「でも、いじめられたりもしてないんだろ?」
「寧ろ、いじめる側じゃないんですか?」
「その割には、結城さんとかには怖がられてないよな。」
「下の名前で呼ばないで貰えませんか。あんまり、声を荒げてるのとかは見たことないですが、単純に人への態度が悪い人って感じです。中二病みたいな感じじゃないんですか?」
「まあ、こいつの家族環境的にはそんな感じになりそうだわな。」
と言うと、一瞬結城の顔が固まる。
「何か、複雑な環境なんですか?」
「さあ、俺もよく知らんけど、姉に育ててもらってるみたいで、両親は居ないみたいだな。」
そう言うと、微妙に気まずそうな顔をしていたが、
「でも、だからといって、他人に態度が悪いのは別です。」と早口に言った。多分何となく罪悪感があったのかもしれない。それを、誤魔化すように言葉を出したようだった。
「まあ、その通りだわな。お宅からすりゃ、そんな事関係ないし、それはコイツの問題で、あんたにゃ関係ない。だから、まあ、気にしなくていいんじゃないか。」
と言うと、結城は少し驚いた顔をして、
「本当に別人なんですね。私は良いですけど、お姉さんは悲しいかもしれませんね。」
「まあ、何となく、悲しそうだったけど、意外と元気そうだったぞ。寧ろ、ほとんど家でも話さないから、こんなに話したのは久しぶりだって、少しだけうれしそうだったけど。まあ、それが別人なんだからちょっと、悲しいがね。」
「本当にものすごく他人になったみたいですね。」
「まあ、記憶がないんじゃ、別人だろ。」
そんな話をしていると、1限目の教員が入ってきて、授業が始まった。
放課後になり、俺は結城さんに話しかける。
「結城さん、部活は?」
「あの、この感じで、ずっと話しかけてくるつもりですか?」
俺は休み時間の度に結城さんに話しかけていた。最初は嫌そうにしていたが、段々会話してくれるようになってきていた。
「俺は仲良くしたいと思ってるけどね。」と爽やかにニコッとしてみた。コイツの顔があればこういうのも自信満々に出来るわなとやってみたが、結城さんは軽く流し、
「私は、別にあなたと仲良くしたくはないですがね。」
「俺、この辺の道とかも全然わからんのよ。時間あるなら案内してくれちょ」
「嫌です。」
「部活は?」
「内緒です。」
「陸上部なんだろ。今日は休みらしいな。」
「何で知ってるんですか。」
「聞いたから。」
「誰にですか。友達いないんでしょ。」
「こんな感じで色んな人から情報を、集めた。1週間後には人気者になってるかも知れんぞ。」
「何で、そんなに私に絡んでくるんですか。」
「俺は、こいつがどんな奴なのか知りたい。何で結城さんにそんな態度を取ったのか。姉と何で話さなくなったのか。何に苦しんでいたのかとか。そうするにはやっぱ色んな人と関わるのが良い気がするから。」
「何か苦しんでいたんですか?」
「まあ、ちょっとそんな痕跡があったんだよ。」
「痕跡って?」
俺はニヤニヤしながら、
「結城さんも、ちょっとは俺に興味出てきたか?」と言うと、無視して教室を出ていった。
結城さんを追いかけ俺も教室を後にした。
校門を出たところで結城さんに追いつき、隣を歩くと、
「どういうつもりですか?」
と結城さんは言う。
「どっか、案内してくれ。そうじゃなきゃ家までついて行く。それは嫌だろ。」
「結構、ちゃんとストーカーですよ。高校生じゃなきゃちゃんと警察呼ばれますよ。」
「結城さんて、陸上部ぽくないよな。美術部とか、吹奏楽とか」
「貴方は本当に失礼な人ですよね。私にも、文化部の方にも失礼ですよ。」
「まぁなぁ。結城さんて、運動神経いいの?」
「体育の成績は10です。」
「10!10って普通取れんのでないか。凄いやんけ。俺は?」
「体育出てないですね。そんなことより何処に行けば満足してくれるんですか。私早く帰りたいんですけど。」
「結城さんは友達とかと遊ばないのか?部活せっかく休みなんだし。」
「私もあんまり友達居ないので。何処に行きたいんですか?」
「似たもの同士じゃんか。結城さんも意外と人にキツイんじゃないの?」
「あの!」
と結城さんは立ち止まり少し声を荒げる。
「記憶を失ってるからって、何を言っても良いわけではないんですよ。私にだって、私の事情があるんです。」
「事情って?」
「何で貴方に話さなきゃならないんですか。本当に迷惑なんで、早く、帰ってくれませんか。」
「結城さん。陸上部で、少し浮いてるんだってな。」
「ッッ、人のこと聞き回って、何がしたいんですか?ズケズケと何様のつもりなんですか?」
「まあ、他人様だな。他人事だからズケズケ踏み込む。」
「辞めてくれませんか。迷惑です。」
と揉めていると、後ろから
「俊、何、初日早々揉めてんの。その女の子は?あんた何したのッ」と姉が語尾を強めに話しかけてきた。
俺は姉を指差し、
「これ、姉」と結城さんに紹介する。
結城さんは少し冷静になり、
「あ、坂田くんのクラスメイトの氷室です。」と自己紹介をした。
「あー、どうも俊の姉の、美羽です。」
あー姉の名前聞き忘れてた。美羽って言うのか。
「もしよかったら、家寄っていかない?すごい近いのよ。丁度茶菓子買ってきたから。」
「いえ、もう帰、、、」
「丁度、どこ行こうか悩んでたんだよ」
と俺は結城さんの言葉を遮り、断りづらくした。姉との会話から色々探れるし、こんなチャンスないと思い、やや強引に結城さんを家に連れて行った。
俺と結城さんは家のリビングの宅に付き、姉は台所で買い物を片付けている。
「ちょっと、どういうつもりです。本当に帰りたいんですけど」と結城さんは小声で訴えてくる。
「まあまあ」
「まあまあ、じゃなくて」
と言ってるうちに、姉は茶菓子をテーブルに並べ、
「コーヒーとお茶、どっちが良い?」と聞いてくる。
結城さんは
「じゃあ、お茶を」と言うと、
姉は持っていた、コーヒーを自分の本に、結城さんにお茶を差し出した。
「俺のは?」
「あんたのはない。欲しけりゃ自分で用意しなさい。」
俺は茶菓子を齧り我慢する。
「結城ちゃんは甘いもの食べれる?」
「はいっ。好きです。」
とやや緊張気味に答える。コイツ、俺にはあんなに態度悪かったのに。まあ、本来は結構礼儀正しい性格なのかなと思った。
「結城ちゃんは俊とは仲良しなの?」
「いえ、今日までほとんど話したことないんですが、急に」
「そうなのよね。事故以来記憶がないみたいで、別人になったみたいなのよね。あー事故とかのことは知ってた?」
「はい。担任の先生が少し話していたので。」
「まあ、そのうち戻るかもしれないみたいなんだけど、当面は分かんないみたいなのよね。」
と少し、落ちた声で姉は言った。結城さんもそれに気付き、少し気まずい空気が流れた。
「でも、明るくなりましたよね。人当たりもよく。」
と結城さんが間をつなぐ様に言った。
「そうね。私もこんなにちゃんと喋ったの久々だし。」
「家でもほとんど話さなかったんですか?」
「うん。昔は明るい子だったんだけど。そういえば、何を揉めてたの?」
と、姉は場の空気を考え話しを変えたようだ。
「ちょっと俺がお節介し過ぎて。」
と言いづらそうな結城さんを見て、俺が答えた。
「あんた、初日でお節介って、馴れ馴れしすぎんじゃない。」と姉に呆れられる。
「まぁなぁ。」
「女の子にそれやると、結構問題なったりするわよ。」
「まぁなぁ。」
俺はどうせ他人の体だしなあと。気軽に考えていた。
「なんか、結城さん部活で浮いてるんだって。」
と、俺が言うと結城さんは驚きと怒りの混じった顔で俺をみてきた。
「え、それ聞いていい話なの?あんたもしかして、そんな事に踏み込んだの?」と姉はまくし立てる。続けざまに
「結城ちゃん大丈夫?大変な思いしてるの?」
と姉も踏み込む。
あんたも大概やで、と俺は思う。
結城さんは観念したようで、
「私、少し性格がキツイみたいで、ちゃんと練習していなかった部員にキツイことを行ってしまって、そこから少しずつ、周りから避けられる様になって、」と話し始めた。
「あーまあ、熱量ある人いると、たまに起こるわなあ」と俺は言った。
結城さんが、怒ったのはそこかと、俺は気づいた。結城さんは性格がキツイ事を気にしているから俺に言われた、キツイという言葉が刺さったみたいだ。
「でも、それから少しして、その子が結局辞めちゃって、もしかしたら、私が間違ってたのかもなって、部活はちゃんとやることが正しいと思っていたけど、みんなは楽しくやりたかったんだって。頑張っていれば正しいって思い込んで、結局人を傷つけてしまって。」
と結城さんは俯きながら話す。
「それで?」
と姉は飄々と言った。
結城さんは、不思議そうに顔を上げる。姉からの意外な言葉に疑問を持っているみたいだった。
「それで?」と結城さんは聞き返した。
「昔の話みたいに言って、悩んでるみたいだけど、今ってまだ渦中なんじゃないの?悪いと思っているなら謝れるし、まだ、腑に落ちないならもう一度ぶつかることだって出来るじゃない。」
と姉は言った。俺はあー、こういう人なのか。この人は、まっすぐ問題と向き合って解決して生きてきた人なのかもなと思った。
結城さんは
「でも、もう、嫌われてしまっているみたいだし、私とは多分話したくもないんじゃないかと。話すことでまた傷つけてしまうんじゃと。」
「でも、今日まで結城さんも俺とは二度と話したくないって思ってたんじゃないの?」
と俺はニヤニヤしながら言った。
結城さんは鳩が豆鉄砲食らったように固まった。
俺と姉は顔を見合わせてニヤニヤしていた。意外と俺等はお似合いの兄弟かもなーと思った。
夕方、
「もう遅いから結城さん、送ってあげなさい。」と姉から言われ、家の近くまで送っていくことになった。
結城さんの家は家とは逆方向だが、学校からそんなに離れては居ないらしい。
「お姉さんて、結構強い人だね。」
と結城さんから話しかけてきた。
「あー、俺も思った。」と言うと。結城さんは笑いをこぼしながら。
「本当に、どこまで他人事ね」
と言った。
俺は見逃さなかった。徹底的にいじってやろうと思って。
「あー、笑ったでおい。あんなに話したがらなかった奴が。偉い出世やで、結城さんを笑わせられるとは」と言うと。
「結構。嫌な人じゃないのかもね。坂本くん。」
と気が狂う事を言う。
「それに、なんか少し大人びてるかもね。飄々としているようで、思ったより人のこと見えてる。」
「あー、そこまで言われるちょっと調子狂うな。なんか結構刺さった?」
「うん。なんか、私勝手に自分のなかで色んな事決めつけて閉じこもってたのかもって。坂本君の事も嫌な奴だって決めつけて、あれから一度も話さなかったし。」
「まあ、俺のその態度は如何なもんかとは思うが、でも結構、人って話してみないと分かんないよな。結局話して、その人の考え方聞いてみないと、ただの妄想でしかないし。」
「また、たまにちゃんとした人みたいな事言って。本当に別人が入ってるみたいね。」
「まあ、そうなんだよ。俊の奴は死んじまって。俺が代わりに入ることになって。だけど、なんかこんな若くて、かっこいいやつが、どうして死のうと思ったのか俺はどうしてか、他人のこいつが凄く気になる。だから、結城さんや、美羽との会話からこいつを知りたい。」
と真面目に言う。
「なにそれ。なんかやっぱ中二病入ってんじゃないの?」と結城さんはからかう。
「まぁなぁ。」
次の日の放課後、結城さんが俺の席に来て、
「ちょっと一緒に帰らない?」
と話しかけてきた。
帰り道を歩きつつ、近くの公園のベンチに俺はアイスを買い、結城さんはペットボトルのお茶を持って、腰掛けた。
「なんか、私の勘違いだったみたい。あの子が辞めたの別に私のせいじゃなくて、本人もずっと辞めるつもりだったみたいで、私に言われて、確かにと思って、しばらく考えて、部活よりも普通に遊びに行ったほうが楽しいかもって。でも、ちゃんと、強く言ったこと謝ったら。私も悪かったって。」
「あー、まあすれ違いって感じだな」
「ただ、本気でやりたいだろうから、あんまり邪魔しないようにだったり、私が怒っているかもって、少し気まずくてみんな話しかけないようにしてたって。でもこれからは普通に話しかけてくれるって。」
「あー、まあよかったわな。」
「だから、ありがとう。」
「ん、珍しい。まあ、俺よか美羽に伝えといてやるか。」
「ううん、ちゃんと坂田くんにも感謝してる。これからはちゃんと言葉に出して伝えてみようって。」
「普通に嫌いとかは言葉に出して伝えてたけどな。」




