トロルの箱
ある朝、ハルヴォルが家のとびらを開くと、大きな木の箱が置かれていました。
開いてみると、中には毛むくじゃらのトロルの子が入っています。
とてもみにくいトロルでしたが、ハルヴォルに飛びかかってくることはなく、大きな目で驚くハルヴォルをじっと見返すばかりでした。ハルヴォルがトロルを箱から出してやり、ミルクやパンをあげると、おいしそうに食べました。
「親に捨てられたのか。ひどいことをするもんだ」
あわれに思ったハルヴォルとその妻は、そのトロルを我が子として育てることにしました。
トロルとの生活は、全くとんでもないものでした!
毎日、ミルクを10びん、パンを15枚、それにオムレツを8個もぺろりと平らげ、まだ物足りないようなのです。
薪を切ってこいと言えば森の木々の半分も切り倒し、近くに住む子どもたちはにらめっこでみんな追っ払ってしまい、親子げんかでもしようものなら、父も母もひょいと屋根の上にのっけて知らんぷりをするのです。ハルヴォルの家は、毎日大さわぎでした。(でも、いいこともあるのです。ハルヴォルの家に入り込んだどろぼうは、トロルに叩き出されて二度と来ませんでした。また、みんなで海に遊びにいった時は、ハルヴォルたちを背中にのっけて泳いでくれました)
時が経ち、近所の子どもたちは皆大人になりました。トロルも大人になった……のかは、よくわかりません。背丈も顔も、はじめて家に来た時とちっともかわっていないからです。トロルは相変わらず家にいて、たくさんごはんを食べ、馬鹿力でさわぎを起こしていました。
ところがある日、トロルはいなくなってしまいました。さよならのあいさつも、書き置きもありません。ハルヴォルも妻も、トロルがどうしていなくなったのか、どこにいったのかさっぱり分かりませんでした。
トロルが去った後の家は、そりゃもうがらんとしてみえました。
ハルヴォルが家の掃除をしていたある日、久々に、トロルがかつて入っていた木の箱を見つけました。妻を呼び、2二人でなつかしさにひたります。トロルがはじめて家に来た時のこと。それからのにぎやかな日々。トロルの乱暴なところ、やさしいところ。
二人は、トロルの残した宝物(……といっても、がらくたのようなものばかりです)や、服をしまおうとして、箱のふたを開けました。
中をのぞいてびっくり、中にはきらきら光る黄金がぎっしりとつまっています。
二人は顔を見合わせ、それからしみじみとつぶやきました。
__黄金なんていいから、たまには帰っておいで。かわいい我が子よ。




