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76.母

暗い暗い昏哭界が一瞬、真昼の様に

明るくなった。


「まさか……」


葵が俺を見た。


「どうやらクラリサが投げ入れられた様だな。

ヴェルグラスとやらが目覚めたってことか」


恐れていたことが現実となった。

もうすぐ泉だということは感じていた。

だが疾風がそんなに早く泉を見つけるとは。


いや、疾風だ。

俺たちがもっと早く追い付かなければならなかった。


ヴェルグラスが復活したとして、

すぐに3つの世界が闇になるわけではない。


まだ間に合う。

全ての世界が闇になるまでに

ヴェルグラスを倒す。

そのために葵と共にやって来た。



扉の前に立った。

赤、黄、緑、紫の戦士。

葵。

大地の弟やここまで付いてきてくれた連合軍。


そして、俺。

残念ながら青い珠は俺の左目に埋まったままだ。

だが勝機ある。

王はきっとそのために俺を選んだはず。



この扉をあければきっと奴がいる。

気配を感じる。

恐ろしい。足がすくむほどの恐れを感じたことは

初めてだ。


だがこの扉を開けなければならない。

「拓海君。お願い」


俺は頷く。

扉を開けた。



一瞬の光はおそらくクラリサの光だろう。

そしてその強い光は……とんでもない化け物を

生んでいた。



暗い霧の奥。漆黒の水が流れる泉。

そしてその前に、疾風が立っている。


いや、元疾風というべきか。

おそらく疾風の体はヴェルグラスに乗っ取られたのだろう。

目だけが黄色く光り、もはや人ではなくなっていた。




ふと見ると、隣に美しい女性が立っていた。

人形の様に無表情だ。


見覚えがある。


そう。親父が持っていた写真の女性。


おそらく、疾風が愛した女性。

そして……俺の本当の父親が愛した女性。



疾風がこちらを睨んだ。


「青月、憎き青月。

ずっとお前を許せなかった」


俺を青月だと思っているのか。


「残念だな。青月。

真琴はもうお前など愛しいない。


真琴は俺を愛しているのだ」



俺は真琴と呼ばれる女性を見た。


左目が熱い。

俺は目を抑える。


何かが見える。

まただ。おそらく青月、父親の記憶。


美しい花畑。菜の花のような美しい花が咲き乱れる。

真琴の手を引き、走っている。


「青月、そんなに走ったら危ないわ」


「だって君に早く見せたくて」


「もう、私一人じゃないのだから」


「え?」


青月は立ち止まり、真琴を見つめる。

真琴はお腹を触った。


「本当に?」

真琴は頷いた。



「喜んで……くれないの?」

真琴は目を伏せ、悲しそうな顔をした。


「まさか。驚いただけだ。

嬉しいに決まっている!」


「王は許してくれるでしょうか。


もし罰が与えられるならどうか私に。

私が青月を愛してしまったから……。


青月は心配しないで。

私がなんとかする。

もしこの子に何かあったら……」


「何か……?」


「私の兄を頼って。信頼できる人よ。

きっと私たちを守ってくる」


青月は真琴を引き寄せ抱きしめた。


「すまない。君にそんな心配をさせて。


俺が必ず守る。君も、この子も」



真琴は嬉しそうに涙を流した。


「でももし何かあったら必ず兄を頼って。

名前は……水澤 多聞」



俺ははっとして、目を開けた。

目の前には真琴が立っている。


親父はこの人の兄だったのか。

そしてこの人が……俺の母。


俺の肩にエイクが乗り、ぴーっと鳴いた。

真琴を呼ぶように。

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