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74.宿敵②

「お母さん……なぜここに?」


扉を開けた時、そこにいたのは母親だった。

燃え盛る炎の奥、

「あなたがやったのよ」

と言って扉を閉めたあの母親。


「優輝、まさかお前の?」


拓海が尋ねる。

私が頷こうとした時だった。


「お前はあの時の」


背後から声が聞こえ、振り向くと駿が立っていた。

敵を倒して追いついてきたのだろう。


「駿、知っているのか?」

拓海が駿に問う。


「ああ、あっちにいる時に少し話したことがある。

昏哭界に来た理由を話した。確か……」



「私がここに来たのは出来の悪い娘のせいだ」


母親の声を聞くのは、あの日ぶりだ。


私のせい?どこまで私を嫌えば気が済むのだろう。

だが、私にも知る権利がある。


「なぜ死んだの?」


「お前は本当に私の邪魔ばかりする。

お前が死んだ後、病院と我が家は

マスコミから袋叩きにされた。


放火犯が働いていた病院、放火犯を育てた親……、

お前は医者になるはずだった弟の邪魔を

するだけでは飽き足らず、

私たちにどれだけ迷惑をかけたら気が済むの?



あれから翼は引きこもりになり、

お父さんからはお前のせいだと責め続けられた。



そしていつしか悪い病気が私の体を蝕んでいた。

気づいたらもう手遅れ。全部、貴女のせいよ!」



呆れてものが言えないとはこういう時のことだと

初めて知った。

でも一つだけ当てはまることがあった。



「そうね……私にも責任はあるかもしれない。

翼のこと。

なぜもっと早く気づいてあげられなかったのだろう。


医者じゃなくてもいいんだって、

どうして言ってあげられなかったんだろう。


自分のやりたいこと、やってみたいと言う勇気を

あげられなかったのだろう。


こんな親の言いなりになることに何の意味もないって、

言ってあげれば翼はあんな風にはならなかった」



「何を言っているの?

医者になることが幸せなのよ。

期待されなかったからっていい加減なこと言わないで。

貴方が翼に何か吹き込んだんでしょう!」



「お母さん、子供は親の所有物じゃないよ。

思い通りになんかならない。

それでも家族なの。悩み、苦しみ……本当のことを言えるのも家族だけじゃない。


お母さんは私と翼の何を見ていたの?

目を逸らさず私たちをちゃんと見て欲しかった」



私の目からは涙が溢れていた。

わかっている。どうせ伝わるはずもない。

でもずっと言いたかった。でも言えなかった。


本当の気持ち。




「うるさい!お前に何がわかる!

私はお前のせいで人生を台無しにしたんだ。

大病院の院長夫人の座も、医者の母親になる夢も」


母親は持っている槍を構えた。



感謝する。

もし母親が少しでも私の言葉を理解し、

申し訳なかったと言ってくれたなら、

私は母を斬る自信はなかった。



だが、もう迷うこともないようだ。

そして斬ったとしても後悔や罪悪感なども

持たずにすむらしい。本当に感謝する。



「残念だが、もう二度と会うことはない。

もし私が生まれ変わったとしても

お前の子供にだけはならない。翼もだ!」



私の鎧はかつてはいほどに赤く染まり、

スコルプと共に斬り込んだ。


何も言わず、私の想いを受け止めてくれている

拓海や葵さん、駿にも感謝する。



私はここで私を断ち切る。

今までの私。何かを期待していた私。

もしかしたら母親は私を見殺しにした後、

後悔してるのではないか?

悲しんでくれているのではないか?

本当は……愛してくれていたのではないか?



その答えを知りたくなくて、

私は生まれ変わりたくないと願った。

だがもう答えはわかった。願いなんてクソ喰らえだ。



そう、もし生まれ変わってもあんな親だとは

限らない。


自分の人生は自分で切り開く。


それまで!私の刀は大きく振り下ろされた。



女の叫び声が響いた。涙はもう出なかった。

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