表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/86

72.宿敵① 

クラリサはどこだ?

疾風はどこだ?

ヴェルグラスが復活する前に、

ただ目の前の敵を蹴散らすのみ。


長い廊下をひたすら走る。

その時だった。



「片桐先生、久しぶり。

こんなところで会えるなんて運命だね」



目の前によく知る男が現れた。



現れる敵は無数。

昏哭軍も総力戦だ。

だが、まさか……

あいつがいるとは思っていなかった。


佐治 太一。


俺が無罪にした連続殺人鬼。


俺の命を奪い、それだけでも足りず、

すみれという女性の命を奪った。


いや、その後ももしかしたら……。


太一はニヤニヤと笑い、片手にもっったナイフを

くるくると回している。


23歳だったはず。

大会社の社長の息子として生まれ、

何不自由ない暮らしをしていた。


何が原因で犯罪を犯すようになったのか。

親の期待?

いい子でいることへのストレス?

そんなことが理由ならば許さない。


この世界、ストレスで犯罪を犯していたら

全員犯罪者になるだろう。


自分の頭で考え、

自分のしたことがどんな結果、未来を招くかを

想像し、なんとか踏みとどまる。


そうやってみんな生きているんだ。


って、ちょっと待て。

笑えるな。


俺は自分のしたことがどんな結果、未来を招くかを

考えていたのだろうか。


考えていたつもりだった。

だが俺は未来の片側しか見ていなかった。

マスコミにもてはやされる自分。


だがもう一つの片側は?

犯罪者を世に放ち、何の罪もない女性達の命が奪われ、

遺族を悲しみの海へと突き落とす。




そんな未来を想像できていれば、

この男の罪を隠し、反省の機会も奪い、

バカ息子を作りあげた親からもらった汚い金で

事務所を立ち上げることに

なんの価値もないと気づけたのだろうか。



俺は拓海や晃たちに告げた。


「悪い。先に行ってくれないか。

コイツはどうしても俺が倒さなければならない」



晃は察したようだ。


「まさか、すみれの命を奪ったやつなのか?」


俺は頷いた。


「なら俺もすみれの仇を……」


「晃の気持ちはわかる。

だからこそ、俺に任せてくれないか。頼む」


俺は頭を下げた。


晃は俺をじっと見つめていた。


「わかった。拓海、俺たちは先へ急ごう」


「駿、頼んだぞ!」


拓海は俺の肩をポンと叩き、葵を連れて前へと進む。

俺は感謝の気持ちをこめ、背中に頭を下げた。


俺は太一と少し距離を取り、向かい合った。


「どうしてここに?」


「先生、聞いてよ。

火事場の馬鹿力って本当にあるんだね。


最後に襲った女がさ、抵抗しまくってさ。

俺が持っていたナイフを奪って、俺を刺したんだよ。


あり得ないだろ?なんでお前が刺すんだって話。

刺すのは俺だっての」


太一は声をあげて笑う。


「でもさ、ここに来て正解!


上の奴らがさ、敵を殺せっていうの。

太楽国じゃ人は殺すなって言われてたのに。


もうこっそりしなくていいんだって。


こっそり出来なくて、俺の好きなマークをつけたり

してみたんだけどさ。


でも誰にも言えないんだもん。つまんなくて。


ね!ここは俺のための世界だろ?」



「お前のための世界?」


俺の肩に乗っている蛇のハイドルが

長い舌を出し、シューと鳴いた。



太一は驚き、体をビクッとさせた。


「怖いか? 身勝手な奴だな。


お前が殺した人たちがどんな怖い思いをしたのか、

お前は知らないんだろうな。



わかるわけないか。

想像力のかけらもないもんな。


いや、お前は想像してたのかもしれないな。

俺を選んだんだから。


俺も想像力が欠落してることを見抜いてたもんな」


俺は太一をじっと睨んだ。



「お前はどんな世界にも生きる資格なんてない。

俺は絶対にお前を許さない」


ハイドルが緑色に光る鱗の手裏剣を飛ばす。

ナイフで器用に振り払うが、一枚の鱗が太一の

頬をかすめた。


頬から赤い血が流れる。


「ここは偽善者なんていない最高の世界だ。

先生もこっちにおいでよ」



血を手で拭い、太一が語りかける。


「ああ。知ってるさ。俺もそこにいたからな」


「え?」


「もうそこには戻らない。

決めたんだ。もう未来を間違えない。


お前みたいな奴はこの世界と共に消えろ!」



太一は気づいていなかった。

俺の言葉を聞いている間に、

ハイドルは太一の足元から徐々に締め上げていく。


「やめろ!放せ!」


ナイフでハイドルを斬ろうとするが

ハイドルの鱗は硬く、ナイフを持つ手の

自由まで奪っていく。


「先生! 死にたくないよ。

助けてよ。ねえ、助けてくれたじゃないか。


先生。頼むよ。助けてよ〜」



太一の声が小さく遠のく。


終わりだ。

だが、俺の罪が消えたわけではない。

すみれが生きるはずだった未来を取り戻す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ