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71.真琴の死

クラリサを奪い、ヴェルグラスの館へと入った。


もうすぐ、願いが叶う。

このまま連合軍が俺を止めることが出来なければ。



俺の願い。

そう、それは真琴を生き返らせること。

ヴェルグラスはどんな願いも叶えるといった。

そう、人の心を変えることさえも。


そんなことをして虚しくないのか?


何度も考えた。

それでも……もし真琴が愛してくれるのならば、

どんなことでもする。

本当に青月ではなく、俺を選んでくれるのであれば、

俺は……。



あの時、28年前のあの時。


青月を失えば、いつの日か、時が経てば、

青月のことを忘れ、俺に心を開いてくれるかもしれないと思っていた。


待つことは慣れている。

側にいれば、いつの日か。


だが、真琴は自ら命を絶った。



青月がクラリサを奪い、そのせいで

赤ん坊も死んだと告げた。


真琴は絶望した。

俺はその絶望につけ込もうとしていた。


翌日、俺は導きの間を訪れた。

そうやって毎日来ることで、

いつしか俺がそばにいることが当たり前となることを願った。



だが、俺が訪れた時、

変わり果てた姿の真琴を、従者の弓弦が

抱き抱えていた。



「嘘だ……何があったのだ?」


俺は弓弦を問い詰めた。



弓弦は言った。


「手遅れだった。最期に真琴様はこう言っていた。


私は誰一人大切な人を守れなかった。

青月様がクラリサを奪ったとしたら、

それは私のせい。


悪いのは私。

いえ、誰かを愛することが悪なのだとしたら、

この世界にもう希望はない。


あの人とあの子のところにいかせて……」


「何故だ! 何故逝かせた!

お前がそばにいながら何故!


なぜそんな冷静でいられるんだ!」



弓弦は俺をじっと見た。

何かを見透かしているような眼で。


「冷静?


我らは代々、導きの巫女をお守りする血筋の者。

真琴様は高貴なお方。

私などとは結ばれることなない。

それは過去からの掟。


だが、私も真琴様を愛していた」


「私……も?」


弓弦は気づいていたのか。

俺の気持ちに。


「お前は真琴様の大切な者を奪った」


弓弦が俺を睨む。


「なぜそれを?」

俺は思わずそう返してしまった。


「彼女に話したのか?」


俺は恐る恐る弓弦に尋ねた。


身勝手だとは思っている。

だが、それだけは考えたくなかった。

真琴が、俺を恨んで命を絶ったなどとは。


「話しても二人は戻ってこない。

これ以上、真琴様を傷つけたくはなかった」



ほっとしている自分がいた。


真琴を失ったのに。

真琴に憎まれることが何より怖かった。




28年前、俺がクラリサを奪った理由。

願いを叶えるため。

その願いとは、人として太楽国へと行き、

真琴の心を変え、共に生きること。


そのために俺はクラリサを奪った。

だが青月に止められた。


その結果はどうだ?


親友をこの手で殺し、

愛する人を傷つけ、

愛する人の子供は姿を消し、

そして……愛する人は自ら命を絶った。


子供が生きているとは思ってもいなかったが。




本当ならば後悔してもう二度と、

クラリサを奪うことなど考えないかもしれない。


だが、俺は

だからこそ俺はもう一度チャンスを掴む。


今度こそ、今度こそ願いを叶える。


待つことは慣れている。



たった28年。



やっと巡ってきたチャンス。

必ず手に入れる。


今度こそ、真琴と生きる。

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