70.大切な人
「さあ、行くぞ」
いつしか俺の声が号令となっていた。
建物の中に入った。
長い廊下が続く。
どこからともなく現れる敵。
悪い顔をした奴らがゾロゾロ。
各々の武器を手に襲いかかる。
斬っても斬ってもゾンビのように湧き出る。
優輝が手をかざし、炎を出すと、
大地が風を送り、遠くまで炎を飛ばす。
リュープスの上にスコルプが乗り、
廊下を駆け回り、毒矢を放つ。
襖のような扉が開き、新たな敵が多数出てきた。
ため息がでるほどにキリがない。
駿が一人で行こうとすると、
晃が駿の肩を掴む。
「一緒に行こう」
「いいのか?」
「仲間……だからな」
目を合わせ、二人は少し微笑む。
晃が叫ぶ。
「一気に行くぞ!」
駿が手をかざすと肩に乗るハイドルが
光る鱗の手裏剣を飛ばす。
敵の目が眩んだところを、
リンクが作った剣で晃が次々と斬っていく。
駿の背後から1本の火矢が飛んできた。
「リンク、盾だ!」
リンクが光で紫色の盾を作った。
晃が手に取ると本物の盾に変わり、
駿の後に瞬時に回り込む。
盾に刺さった火矢が燃え落ちた。
「ありがとう」
「お互いさまだ」
リンクがニャーと鳴く。
駿と晃が一気に走り出す。
俺は葵を守るように部屋の中へと入った。
「ごめんね。私とペアだと損だね」
葵が申し訳なさそうな顔をした。
「何言ってんだ」
エイクが大きく羽を羽ばたき、
道を拓いていく。
「俺は本当の両親のことを、何も知らない。
疾風の話を聞くまでは、俺の父親が青い珠を
盗んだ悪人なんじゃないかって思ってた。
でもこの左目が覚えてる気がするんだ。
父は愛する母の世界を守るため、
最期まで戦った。
その気持ちが少しわかるんだ」
俺は必死で敵と戦う葵を見つめて言った。
「大切な人を守るためなら、どんなことも
怖くない。
存在こそが力になる。だから……」
敵から守るため葵を強く引き寄せた。
「そこにいてくれりゃいいんだよ!」
少し照れくさそうな俺をみて、葵は大きく頷いた。
「拓海君、一緒に行こう」
俺たちは走り出した。
もう止まっている時間はない。
前へ。前へ。




