66.青珠の記憶
28 年前。
月の光に照らされてクラリサが納められている
祠が浮かび上がった。
その場所を知るのは天澄界の王、太楽国の帝の一族と
その臣下だけ。
本来であれば、盗まれない様に祠を守るはずだった。
まさか自分が盗人になろうとは。
俺は祠にそっと手を伸ばした。
「疾風! やめるんだ」
驚き振り返ると青月が立っていた。
同じく王の臣下である青月は俺の行動を
不審に思い、つけていたのかもしれない。
「何をしている? それをどうする気だ?」
「青月、お前にはわからないだろうな」
「何がだ?」
「親友に全てを奪われた気持ちだ」
俺は祠からクラリサを取り出した。
赤・青・黄・緑・紫、5つの美しい珠がついた
スクエアピラミッド。
初めてみるがそれは美しい光を放っていた。
「どうなるかわかっているのか?」
青月は剣を抜いた。
「お前でも見逃すわけにはいかない」
「望むところだ。 お前などこの手で消してやる!」
俺も剣を抜いた。
俺と青月、幾度となく剣の稽古をしてきた仲だ。
相手の動きが互いにわかる。
クラリサを持ちながらの闘いは不利だ。
青月に腕を狙われ、俺は不覚にもクラリサを
落としてしまった。
青月は急ぎ、クラリサを奪い取った。
「返せ!それを……あの人を……、
俺の全てを返せ! 」
青月はもちろん渡そうとしない。
もし王にでも渡されたら俺の終わりだ。
「それを渡せ、青月」
「嫌だといったら?」
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俺は左目を押さえた。
時々映る、誰かの記憶。
青月。疾風隊長はそう呼んだ。
俺の、親父だという男。
おそらく彼の記憶?
いつも誰かの記憶で見る男が赤ん坊を抱えている。
川沿いを歩き、空にはエイクが飛んでいる。
どうやら怪我をしているらしく、
血がポタポタと流れ落ちている。
エイクが砂を巻き上げ、血痕を消していく。
少し先に一軒の家が見えた。
男は庭先に籠を見つけ、中に赤ん坊を入れた。
大事そうに。
「ごめんな……ずっと一緒にいようって言ったのに。
お前は俺みたいに嘘つきになっちゃダメだぞ。
お母さんを守ってくれ」
男の手にはクラリサが握られている。
男は何かを決心したような表情で、クラリサから
青い珠を抜き取った。
そして赤ん坊の左目の上にそっと手をかざす。
男は家をじっと見つめる。
「お母さんのお兄さんだ。
見かけは怖いが、一番信頼できる人だ。
どうか……無事で」
男は苦しそうに立ち上がる。
「もう時間だ。
愛してる…… 。お母さんにもそう伝えて……」
家の灯りがついた。
「誰かいるのか?」
家の仲から声がする。
扉が開き、男が出てきた。
そう、知っている顔だ。
若いが、すぐにわかる。
親父。
俺の親父は青月という人なのか?
そして俺は、親父の息子じゃないのか?
俺は、本当に生まれてきてよかったのだろうか。




