65.疾風の告白
少し先に複数の人影が見えた。
本隊だ。
互いに敵を振り切り、合流することが出来たのだ。
「大地、晃!」
俺たちは先頭を歩く大地と晃のもとへと走った。
「拓海! 無事だったか? 」
「ああ。でも色々あって……」
俺が駿を紹介しようとした時だった。
「なぜお前が!?」
晃が駿に殴りかかった。
「お前のせいですみれは! そいつは敵だ!
なぜ連れてきた!?」
俺は晃と駿の間に割り込んだ。
「待ってくれ、それが……」
駿は晃の前で土下座をした。
「すまない! 今までのことを許してくれとは言わない!
ただ……」
駿は手のひらの上に乗せた緑の珠を見せる。
手首から緑の蛇、ハイドルがニョロニョロと
地上に降りてきた。
晃の肩からリンクが飛び降り、
リュープスとともにハイドルの方へと向かう。
リンクがハイドルの前で晃に向かって、
ニャーと鳴いた。
「本当に申し訳ないことをした。
償わせてくれ。もう二度と同じ過ちはおかさない」
駿はたちあがり、晃を見つめた。
「未来を守りたいんだ。
あの子が生きるはずだった未来を……」
駿は深く頭を下げた。
「頼む! 仲間に入れてくれ!」
晃は大地と顔を見合わせ、唇を噛み締める。
「だが、待ってくれ!
緑の戦士は疾風隊長のはずだ。
やはり嘘だ。嘘をついている。
騙されないぞ!」
晃が駿に詰め寄る。
駿を取り囲む輪から、一人外れどこかに行こうとしている
疾風隊長を見つけた。
「ちょっと待った! 隊長さん」
俺は隊長を呼び止めた。
左目が熱い。
俺は左目を押さえた。
そこにまた誰かの記憶が映る。
一人の男と疾風隊長が戦っている。
「あんた、何を考えている?
敵か? 味方か? 教えてくれ。あの男は誰だ?」
俺の左目と鎧が青く光る。
大地と晃が驚き俺を見つめていた。
空からエイクが飛んできて俺の肩に乗った。
「エイク? まさかそんな」
疾風がエイクを見て驚いている。
それも尋常ではない驚きかただ。
「お前は……」
俺のとなりに、大地、晃、優輝、駿が並んだ。
それぞれの鎧が美しい光を放つ。
やはり、敵なのか?
「クラリサを奪った者を見つけてからと思っていたが、
仕方ない。
そうだ。俺は……緑の戦士ではない。
俺は、昔太楽国と天澄界をつな舟の渡し守をしていた」
疾風は話し出した。
渡し守には一つ決まりがあった。
暗黙の了解というべきか。
それは太楽国の者と恋に落ちてはならないということ。
だが、俺はあの人を……愛してしまった。
俺の気持ちに気づいた王は俺と彼女を離すため、
少しの間、俺に別の仕事を与えた。
その仕事が終われば望みを一つ叶えてやると。
人の心を変えることだけは出来ないが、と。
俺は人間になりたいと言った。
そうすればあの方と……。
そうして俺は少しの間、渡し守の仕事を親友に
頼むことにしたんだ。
たった一人の親友に。
しかし二人は、恋に落ちた。
疾風は俺をじっと見つめた。
「なぜ王は俺からあの方を遠ざけた?
俺じゃなく、青月ならよかったのか?
親友と愛する人が恋に落ちた。
絶望の淵に立った時、聞こえたんだ。
クラリサを渡せば、お前の望みを叶えてやる。
どんなことも。
人の心を変えることさえも」
俺は疾風隊長に詰め寄った。
「かつて天澄界のクラリサを奪ったのは、
ヴェルグラスの甘い誘いにのった戦士だと聞いた」
俺が駿を見ると、駿は頷いた。
「疾風隊長、あなたなんですか?」
「私だ。たった一つの願いを叶えるために」
疾風は手のひらを見つめている。
そして俺を睨みつけた。
「だが、あいつに邪魔された。
俺から全てを奪ったあいつに!」
その目は憎しみに満ちている。
「拓海、お前の父親だ……」
ちょっと待ってくれ。
理解が追いつかない。
俺の親父はいつもプラネタリウムで寝ているあの親父だ。
疾風隊長の親友?天澄界の?
「ちょっと待ってくれ。
俺の親父は隊長の親友なんかんじゃない。
何を言ってるのか意味がわからない」
疾風はじっと俺を見ているようだが、
視線はもっと遠く、どこでもない遠くを見ている。
「俺はあの方ともう一度会う。
たった一つの願いを叶える。
この旅が決まった時、どんなことをしてでも
天澄界を出ると決めた。
そのためなら何でもする。
最後のチャンスだ。もう邪魔はさせない!」
疾風の蛇が黒く光り、黒い煙を吐き出した。
疾風の周りに竜巻がおこり、
煙が消えた時、疾風の姿はなくなっていた。




