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57.身代わり

大地の話は、今の大地からは想像できないものだった。

だが俺にはわからなかった。


「拓海、なぜ逃げたのか?って思っているだろう?」


大地が俺を見て聞いた。


そう、殺していないならそう言えば死ぬことは

なかったのではないのか?と俺は思っていた。


「本当のことを言えばわかってもらえたんじゃないか?」


「お前は……幸せだからだよ。

人を怖いって思ったことないだろ?」


怖い。確かに怒った親父もそこそこ怖かった。

だが、きっと大地が言っている怖さとは

次元が違うのだろう。

俺は何も言えなかった。



「間もなく出発だ。行こう」


大地が腰を上げた。


*******************


連合軍は疾風隊長の周りに集まった。


「認めたくないが、連合軍は劣勢と言わざるを得ない。

クラリサを奪い返せる保証はない。

私の責任だ。だが、ここで諦めては世界は終わる。

それだけは避けなければならない」



疾風隊長は隊員を見つめて話す。


優輝が前に出た。


「敵は明らかに葵様を狙ってきていました。

なんとしても葵様を守らなければ、クラリサを

奪い返しても何の意味もありません。

とにかく葵様を守るような作戦を……」



「あの……」


後ろからすみれが手を上げた。

隊員の視線が一斉にすみれに移った。




*********************


ヴェルグラスの泉を目指し、連合軍は歩き出した。


笠を深くかぶり、青色の着物をきたすみれを

中心に、陣形をとった。


葵様の身代わりになるとすみれが言い出した時、

俺は反対した。

だが、すみれの意思は固かった。

この不利な現状を考えて、疾風隊長も

承認せざるを得なかった。


「晃、すみれを守ってくれ」


「承知しました」

もちろんそのつもりだ。

俺はすみれの側についた。



「怖くないのか?」


すみれは俺を見つめた。


「怖いよ……。でも世界が終わるほうがもっと怖い。

毎日朝起きて、太陽を見る。

あ〜今日も始まっちゃった。

そんな当たり前の幸せが終わってしまうなんて。

晃さん、そう思わない?」


「俺は朝起きて太陽を見る。

そして思った。今日も地獄の日々が始まるって」


すみれはふっと笑った。


「晃さんともっと早く出会えていたら良かった。

楽しい日々を一緒に過ごせたかもしれないのにね」


俺はすみれに見惚れていた。


「いてっ!」

肩にのるリンクが俺の頬を引っ掻いた。


「リンク、ヤキモチ妬くなよ!」


「どうしてヤキモチ?」


すみれが答えづらい質問を投げかけた。


「それは、俺が君をす……っといつも守るからだよ。

とにかくコイツ、すぐヤキモチ妬くんだよ」


「わかる!うちのこもそうなの」


「猫飼ってたの?」


「今も飼ってる。きっと私の側にいると思う」



すみれがこの世界の者と少し違うと思うところは

こういう時だ。

だが遠くを見つめるその瞳がミステリアスで

惹かれてしまう。



前方から強い光を感じた。

目が眩むほどの光。



地響きのような音と共に、

敵が押し寄せてきた。


「戦闘体制に入れ!晃、大地、頼んだぞ!」


疾風隊長の指示に俺と大地は頷いた。



「リンク!武器だ」


リンクが目から光線を出し、しょぼい刀を作る。


「おいおい!空気よめよ。リンク」


仕方ななく、俺はしょぼい刀を手に取り、

敵を斬っていく。


幸い、リンクは自分の周りの敵に関しては

光線を発し、次々と倒してくれた。


すみれの周りは俺と大地でなんとかなりそうと

思った時だった。


「何?」

すみれが驚き周りを見渡す。


連合群の周り、四方が大きな鏡に囲まれている。

まぶしさを感じたのは鏡の反射だったのだ。


リンクの放った光線が鏡に反射し、

戻ってきた。すみれの方向だ。


「危ない!」


俺はすみれとリンクを庇うように、

間に入った。

光は俺の肩をかすめたが、大した傷ではなさそうだ。


「晃さん!大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ」


俺は傷口を押さえ、周りを見た。


「だが……ちょっと闘いにくそうだな」


「こっちもだ」


大地が寄ってきた。

大地の周りでは分身したリュープスが、

鏡に映る姿に向かい、吠えていた。


「さあて、どうしたもんか」


俺は大地と顔を見合わせた。

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