51.すみれ
「晃さんの猫。リンクっていうのね。とても綺麗」
すみれが、肩に乗るリンクを見て呟いた。
リンクは俺の気持ちを悟っているかのように
機嫌が悪い。
そう、俺はすみれの事が気になっていた。
顔に太陽のような傷があることを気にしているのか
少し顔を隠すように話すが、
敵を前にした時は別人の様に真っ直ぐに敵の動きを見極める。
どんな時も一生懸命だ。
そして……
なぜかこの世界の者と少し違うと感じることがある。
その違和感が何なのかはわからない。
太陽の様な傷。
俺が生きている時に起きていた連続通り魔事件と
関係しているのかもしれない。
もしそうなのであれば、その傷について聞かれたいわけがない。
きっと忘れたい出来事だろう。
この世界に来れば、傷はなくなるのかと思っていた。
思い出さずにはいられない傷あと。
きっと辛いだろう。
だが傷があっても無くても、美しい。
それは変わらない。
太楽国に戻らないことを願ったばかりなのに
こんな気持ちになるなんて
思ってもいなかった。
生きている頃に恋人はいた。
一生一緒にいると思っていた。
だが、そう思っていたのは俺だけだった。
贈った指輪は宅急便で送り返されてきた。
「晃の事は好きだけど、
お義母様の面倒を見る生活は考えられない。
ごめんなさい」
俺の全部を愛してくれるんじゃないのか?
なんて思ったりもした。
だが、きっと逆の立場なら俺もそう思うかもしれない。
自分の親だって厳しいのにそりゃそうだ。
はっきり言ってくれて、正直すっきりしていた。
所詮そんなもんだ。
期待なんかしないほうが楽だ。
そう思っていたのに、どこかで期待している
自分がいる。
馬鹿だな……。
「晃さん、死ぬ時ってどんな気持ちだった?怖かった?」
死んだことがあるはずのすみれが、
変わった質問をしてきた。
期待通りの答えはきっと出来ない。
なぜなら……。
「俺は自分で選んだから。怖くはなかったよ」
すみれは驚いたように俺を見つめた。
「そうか。怖くないんだ。良かった」
すみれは美しく笑った。




