表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/87

47.分かれ道

連合軍はしばしの休息の後、誰からともなく

立ち上がった。


疾風が右手をあげた。

出発の合図だ。


あとどれ程の猶予があるのだろうか。

今、クラリサを持つ者はどこにいるのだろう。


川ぞいを進んだ俺たちの目の前に

2本の道が広がっていた。


一つは細く険しく、一つは平坦な太い道。


疾風は険しい道へと足を進めた。

すぐ後にいた優輝が疾風に問いかける。


「そちらは確かに近道だが、とても険しいと聞く。

危険なのでは?」


「時間がない。この先は昏哭界の者さえも敬遠する道だと聞く。

敵もまさか我らがこの道を通るとは思わないだろう」



リュープスが首を振り唸る。

大地がリュープスの頭を撫ぜ、

「信じよう。時間がないのは確かだ」

と呟いた。


空を見上げるとうっすらと月が見えた。

闇の中でも月が出るのか。

いや、昏哭界の者たちには見えないのかもしれない。


「とにかく急ごう」


俺は葵を見つめた。

うっすらとした月の光に照らされた葵からは

皇女の気品が感じられた。


だがその視界は直によってすぐに遮られた。

さっと間に割り込んできたのだ。


「なんなんだよ、さっきから」  


そうだ。

葵に見惚れている場合ではない。

俺たちは敵さえも恐れる道へと足を進めた。





※※※※※※※※※※※※※※※※


昏哭界では高い丘に本陣が置かれていた。


悪そうな奴らが我先にと蠢いている。

こいつらは一体、太楽国でどんな悪事を働いたのだろう。

俺の弁護能力なら無罪にできた奴もいるかもな。



隣の女が話しかけてきた。

「貴方は何をしてここへ?

私は出来の悪い娘のせいでここに来てしまって」


大体、悪いやつほど人のせいにする。

俺は答えた。

「俺は何もやっていない。何かの間違いだ」


女は俺の顔をまじまじと見た。

「おや、貴方弁護士だね?テレビに出ていた。

片桐?とかいったっけ。まさかこっちの世界にいるとは」


そうさ、何かの間違いに決まっている。


軍の大将は伊織という男だ。

太楽国と昏哭界を行き来できるほどの

力を持っていると聞く。

強い怨念。どれほどのものなのか。


伊織の直属の部下達が小隊軍をまとめている。

ここの指揮官は顔に傷がある大男だ。


指揮官は大きな声で叫んだ。

「野郎ども!枯木の道へ進め!」


群衆からは地鳴りのような歓声が飛ぶ。

戦いに勝てば闇からの解放。

ちょうど力を持て余していた暴れ馬の集まり。


枯木の道とは開けた大道だ。

泉を目指すためにはおそらくここを通ることは

間違いない。

何故なら、もう一つの道は、獣さえ恐れるという

険しい道。

この世界の者さえも近づく者はないと聞く。


俺はそっと指揮官の前に出た。

「恐れながら」


「何だ?不服か?」


「地獄道にも兵を出してもらえませんか?」


大男は大笑いして俺を見た。

「確かに近道だがあの道は険しい。

敵に合う前に何人たどり着けるかわからんのだぞ」


「だからこそです。敵は時間がない。誰もあの道を通るとは思わない。それこそが敵の狙い。

俺が指揮官なら地獄道を選ぶ」

   


大男はじっと考え込み、片手をあげた。


「地獄道にも兵を」



数隊が行き先を変更し二手に分かれた。



「お前はここの連中とは少し違うようだ。これからは私の傍で指示を出せ」


そうだろう。俺の能力に気づけたお前は見どころがある。

そう、俺の戦場は頭の中だ。


「は、かしこまりました」


俺は頭を下げた。

こんな奴に?いやいずれ、俺の方が上に立つさ。

今だけさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ