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44.昏哭界へ

天澄界と太楽国の境界線。


一艘の舟が現れた。

舟を操っていえるのは若い女性だ。

頬に傷がある。



女性は舟を岸につけた。

後ろからも何艘か続いている。

川を下り、昏哭界へと入るようだ。



隊長の疾風が指揮をとる。

「すみれ、ご苦労」

すみれと呼ばれた女性は舟を降り頭を下げた。

すみれは、戦士達を舟へ導く。



先頭に大地。

優輝や晃など珠を持つ戦士達が続く。


隊長の疾風を含めたその四名が

珠に選ばれし戦士だと聞いた。

戦士はそれぞれ珠の色の特徴を持つ

動物たちを従えていた。


太楽軍の番が来た。

俺は葵、直たちと共に舟へと乗り込む。


「いざ、出発」


疾風が最後に乗り込み、舟は岸から離れた。



長い川を下った。

そしてある所から空気が変わったのを肌で感じた。


ここからが昏哭界なのだろう。

憎しみと妬み、恨みや怒り。

ここにいてはいけない。

普通の者ならきっと耐えられない。

そんな空気を感じる。


だが行かなければならない。

この奥のどこかにある泉を

誰かが見つけてしまうまえに。



舟を降りた。


そこは霧がかかった暗く険しい道だった。

大きな岩山が続く。


天澄界の戦士達は、軽々と超え

先を目指す。


俺は岩を越えることに精一杯だ。

葵も苦しそうだ。

おそらく酸素が薄い。

歩くだけで苦しい。早く慣れなければ。



天澄軍の中ですみれだけが少し苦しそうだ。

俺たちと同じように、まだこの世界に

慣れていないようだ。


紫の戦士・晃がすみれに手を貸した。

すみれは頭を下げ、岩を超えていく。


晃の肩に乗った猫が少し機嫌の悪い鳴き声をあげた。



周りは高い崖が続き、鳥の声や怪しい獣の気配がする。


疾風、周りを見わたし、谷に入ろうとした。

その時だった。


「伏せろ!」


疾風が叫んだ。


崖の上から一本の矢が飛んできた。



本当はまだ信じていなかった。

どこかで夢なのではと思っていた。

だが夢なんかではない。

人が死ぬかもしれない。

本当の戦闘がいま、始まった。

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