40.片桐 駿の記憶①
ここは昏哭界。
永遠の苦しみを味わい、永遠の闇を彷徨う。
絶望の果て……
だが、チャンスがやってきた。
どこの誰かは知らないが、
闇の獅子、ヴェルグラスを復活させることが出来る
クラリサという物を奪い、
泉を探しているらしい。
ヴェルグラスが復活すれば、
この世界の均衡は崩れる。
昏哭界が全ての世界を支配する。
永遠の苦しみから逃れられる。
俺たちは集められた。
天澄界と太楽国の兵がクラリサを奪い返しに
やってくる。
奴らを阻止するために。
いまだに解せない。
なぜ俺が昏哭界に来なければならなかったのか。
俺は太楽国では弁護士をしていた。
有能、敏腕。そんな言葉が俺には付き纏っていた。
裁判所の前には数え切れないカメラが並んでいた。
俺が裁判所から出れば、報道陣が押し寄せた。
「さすがですね。片桐弁護士」
フラッシュが眩しい。
「いや、私はただ正義を貫いただけです。
冤罪を作らせないためにね」
そう、俺はまた一人救った。
若い女性ばかりを狙う通り魔事件。
犯人は被害者の顔に太陽の様な奇妙なマークを残す。
猟奇的だ。
一人の男が捜査線上に上がった。
佐治 太一。23歳。
製薬会社の大手 佐治製薬・社長の一人息子だ。
実績を買われて、俺は弁護の依頼を受けた。
必ず無罪にして欲しい。
そう、俺の仕事は無罪にすること。
依頼者を救う。それだけだ。
白?グレー?何色でもいい。
黒でなければいいのだ。
「本当に助かったよ。どれだけ礼をしても足りないくらいだ」
広い広い社長室で俺は報酬を受け取った。
社運がかかる大事件だ。
これくらいで済むなら安いはずだ。
「馬鹿な息子を持つと苦労する」
社長は頭を下げた。
「あまり叱らないであげて下さいね」
俺は適当なことを言って場を繋いだ。
真犯人は誰なのか、
そんなことはどうでもいい。
できれば本当に馬鹿息子が犯人でなければ
ありがたい程度だ。
俺は社長室にある立派な机に置かれた
社長の家族写真を見た。
そう、今でもあの感覚が忘れられない。
ゾッとする感覚。
社長がまだ若い頃の写真。
太一はまだ小学生だろうか。
太一が一枚の絵を持っていた。
そこには、見たことのあるマークが描かれていた。
太陽の様な奇妙なマーク……
……仕方ない。
彼の無罪は覆らないだろう。
これからまともに生きてくれればいいさ。




