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4.多聞の家

霧の向こう、一軒の家が見えた。


質素ではあるが、手入れの行き届いた庭から

主人あるじの優しさが感じられる。

玄関の脇には、円の中に赤い鳥居が描かれた

マークが刻まれている。



この子を託せるのはあの人しかいない。


俺の腕の中では男の子の赤ん坊が

きゃっきゃっと声をあげている。


その声を聞いていると

肩の痛みも、もうすぐ命が尽きようとしていることも

現実だとは思えない。


夢であってくれたらどんなによかっただろう。



空ではエイクがヤキモチを焼くかのように

バタバタと羽を広げ、邪魔をしてくる。



「俺の相棒はお前だけだ。

だが、俺が消えたら……自由になってくれ」




庭さきに置かれた木の籠を見つけ

手に取り、着物の袖を引きちぎった。


もちろん、血がついていない綺麗な

袖のほうだ。



ちぎった袖を籠の底にそっと敷き、

男の子を入れた。



男の子はじっと俺を見つめ笑顔を見せた。


俺は男の子の左目の当たりにそっと手をかざした。




「誰かいるのか?」



家の中から主人の声が聞こえた。





水澤多聞みずさわたもん

庭先に人の気配を感じ

扉を開けた。

歳の頃は30代半ば。

質素であるが、整った顔立ちをしている。



多聞が周りを見渡すと

大きな鷲が悲しそうな鳴き声をあげ

飛んでいくのが見えた。



ふと庭先に置かれた木の籠が見えた。

中には赤ん坊の姿が見える。

男の子だ。



赤ん坊を取り上げた。

赤ん坊はきゃっきゃっと笑顔を見せる。


「そういうことなのか?青月……」



多聞は赤ん坊を抱きしめ、空を見上げた。

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