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39.川の向こう

ここは一体……


導きの間に一人の女性がいる。

あの写真の女性だ。

美しい、真琴という女性。


巫女のような姿をしている。

何かそわそわして、誰かを待っているようだ。


川の音が聞こえる。

霧が立ち込め、川の音が大きくなった。



窓の外、庭はいつしか川へと変わり、

一艘の舟が現れた。

男性が舵を握っている。


どこか見たことがあるような気がするが

思い出せない。


天澄界の者のようだ。


二人はじっと見つめ合いっている。


1匹の鷲が川の水を翼でたたき、

水しぶきがあがった。

女性の顔に水がかかる。


見つめ合っていた女性が驚き声を上げた。

男性は笑って、女性の顔の水を拭き取った。


「エイク!わざとだろう」


エイクと呼ばれた鷲は女性の隣にやってきた。

女性に懐いているようだ。


女性はエイクを撫ぜた。


「エイク、真琴は渡せないぞ」


男性は女性を引き寄せ抱きしめた……



ハッとして俺は目覚めた。

左目をこすり、周りを見渡す。


そう、俺は導きの間で眠っていたのだった。

夜明けには出発すると聞いている。


今のは一体、

誰かの記憶……?



「間もなく出発です、準備をしてください」


戦士たちが身支度を始めた。


剣の練習もそこそこでの出発。

恐怖しかない。

だが恐怖を奮い立たせて行くしかない。

親父との約束は守る。俺は親父の息子だから。



外へ出た。

太楽軍が整列している。

俺もその中に加わった。


鞠子様が前に立たれた。


「危険な旅になります。

しかし、必ずやクラリサを奪還してください。


愛する家族、未来のために」


俺は拳を握りしめた。

震える。

すると隣にいた葵が俺の手を握った。


……葵の手も震えていた。


そりゃそうだな。俺だけが怖いわけではない。

俺は葵の目をみて、頷いた。


行こう……


俺は鞠子様に問いかけた。


「天澄軍はいつ来るのですか?」


鞠子様はゆっくりと答えた。


「もう来ています」


霧がかかった。

川の音が大きくなる。


霧の中、黒い影が現れえた。

数十人はいるだろう。



霧がはれていく……

俺は目を凝らした。


川の向こう、天澄界の軍が俺たちを待っていた。

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