38.天澄軍
天澄界、王の館では
精鋭軍が戦いの準備をしていた。
優輝の手首に絡む
真っ赤な蠍は「スコルプ」と名付けられた。
晃の肩に乗っている紫の猫は「リンク」、
大地の側に控える黄金の狼は「リュープス」
と呼ばれていた。
三名の前に王が立ち、声をかけた。
「数は少ないが、精鋭部隊をつける。
選ばれし戦士たちよ。
クラリサの奪還を頼む」
王が頭を下げた。
三名の後には数十名の戦士たちが控えていた。
中には少年の姿もある。
布で覆っており顔は見えない。
また若い女性の姿もあった。
頬に太陽のような奇妙な傷がある。
名前は「すみれ」というようだ。
晃は全体を見渡した。
最後にすみれと目があった。
すみれは軽く頭を下げる。
晃の肩の上ではリンクが「ニャー」となき
晃の顔を舐める。
すみれに嫉妬をしているかのようで
隣にいた優輝が、少し微笑んだ。
が、すぐに顔を引き締めた。
戦いが始まる。
天澄界・太楽国の命運がかかった戦い……。
手首のスコルプが大丈夫だといわんばかりに
こちらを見つめる。
大丈夫。
燃え盛る火の中、命が消える瞬間に見た景色より
恐ろしいものなどないのだから。
いざ、出発!
その時だった。
「王!お待ちください!」
後方で男性の声がした。
振り向くと、疾風と呼ばれる剣士隊長が
王の前に走り寄って来た。
「王、それが私にも……」
疾風は王に手を差し出し、手のひらを見せた。
そこには緑の珠があった。
四人目の戦士が現れたのだ。
旅の途中で見つかると言っていたが
こんな近くにいたとは……
王は驚いて疾風を見つめている。
「そうか……ならばお前も……」
王は何故か少し迷われている様に見えた。
何故だろう。
この国の守りが手薄になるからだろうか。
隊長が入ってくれるのであれば
こちらとしては、とても心強い。
「では前で皆を先導してくれ、疾風」
疾風は礼をして隊の前までやってきた。
疾風の肩には大きな黒いコブラのような
蛇が乗っていた。




