35.選ばれし戦士
天澄界、王の館。
「疾風様。三名の戦士が王の部屋に」
俺は王の部屋へと向かい、後方で様子を見ることにした。
王の前に一人の女性と男性。
そしてなぜか大地の姿があった。
女性は優輝、男性は晃という者だ。
優輝は男装の麗人のような雰囲気だ。
晃は太楽国では俳優だったのだろうか?
華やかな容姿をしている。
三人は王の前に跪づいている。
三人とも若くしてこの世界にやってきたことは
一目でわかる。
王は三人の前で頭を下げた。
「よくここまで来てくれた。
其方たちを待っていた。
珠はお持ちかな」
三人は手を差し出し、
手のひらの上に置いた珠を
王に見せた。
優輝は赤、晃は紫、大地は黄色の珠。
王は、三人の後方に視線を移した。
「ほう……伝説は真実だったのう」
三人それぞれの後方には、
真っ赤な蠍、紫色の猫、黄金色の狼が
王を見つめている。
王はまた三人に視線を戻した。
「其方たちは珠に選ばれた。
クラリサを取り戻しに行ってもらえぬか?」
優輝、晃は驚き王を見上げる。
大地は顔いろも変えず、ゆっくりと王を見つめた。
「驚くのも無理はない……選ばれし戦士の話を?」
「聞いたことならあります。しかし……
なぜ私たちなのでしょうか」
優輝はなぜ自分なのか、理解できない様子だ。
「理由は……きっとあるのだろうが
私にもわからない。
ただ、其方たちの力が必要であることは
揺るぎない事実。
迷うのも仕方ない。
危険な旅だ。
もし失敗しても其方たちに責任はない。
成功した時は、願いを聞こう。
私が叶えられる範囲でだが」
「願い……ですか?」
晃が王を見つめる。
「其方たちはこの世界で長い時を過ごす。
その間に太楽国の記憶は薄れ、また新しい生命を授かる。
例えば、まだ太楽国の記憶がある近い未来に
新しい生命を授けることも可能だ。
さすれば愛する者、愛された者と再び巡り会うことも
可能。
この戦いに勝つことが前提ではあるが」
優輝、晃、大地は顔を見合わせた。
大地が沈黙を破った。
「もし、クラリサを取り戻せば
願いを叶えていただけるのですね?」
王は頷いた。
「叶えよう。人の心を変えること以外なら」
「ならば行きます」
晃は、紫の珠を握りしめた。
「もし成功すれば、二度と太楽国へ落とさないで
いただけるなら」
晃は強い眼差しで王を見つめる。
「落とす?」
王は晃に聞いた。
「はい…二度と戻りたくないのです。
お願いです。どうか……」
晃は頭を下げる。
「私もお願いします」
優輝も続ける。
「私も、私もここにいさせて下さい。
太楽国に愛する者も、愛された者もおりません」
王は大地を見た。
大地も大きく頷いた。
二度と戻りたくない?
それが願いだと?
なぜ奴らが選ばれたのだ。
珠が選ぶとはどういうことだ?
奴らより俺のほうが行く価値がる。
絶対に。
俺は三人の後ろ姿を見つめていた。




