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30.疾風の記憶②

舟を操る渡守わたしもり

していない時間は、

俺は王に剣の腕を見込まれ

家臣として支えていた。



青月あおつきもその一人だった。

奴とは気が合い、武道の稽古をしたり

もし次、太楽国での人生が始まったら

何をするか、などくだらない話をよくしていた。



その日も剣の稽古をした。


汗を拭きながら、青月は言った。


「やはりお前には勝てないな。疾風はやて

お前なら剣士隊長の座だって手に入るだろう?

なぜ川の渡守を続けている?」



俺は、真琴の顔を思い浮かべた。


「それは……楽だからさ」


俺は嘘をついた。

おそらくこの世界に来てから初めての嘘を。



そして、俺は親友にある頼み事をした。


その頃、王の周りで不穏な動きをする者がいるという

話があった。


俺は王に呼ばれ、少しの間、

渡守を休み、警護をして欲しいと頼まれていたのだ。


真琴に会うことが出来ない。

それはとても苦しい。

だが、王の頼みを断ることなど出来ない。



俺は青月に言った。


「王に呼ばれた」


青月は喜んだ顔を見せた。

「王に?すごいな。剣士隊長の話か?」


青月は心の底から喜んでいるように見えた。

そういう男だ。



「いや……青月、お前に頼みがあるのだが」


「何だ?俺にできることか?」



「少しの間だけ、渡守わたしもりの役を引き受けてもらえないか?

王の頼みを断るわけにもいかない。

それに……」


俺はいっそのこと、青月に話してしまおうかと

思った。

俺の心の奥底にある感情を。


太楽国の女性を愛している、

だが、ただの片思いであるなど

どうしても親友に言えるわけがなかった。


渡守の座を誰かに渡してしまうことだけは

避けたい。

しばらくの間、代わりを頼み

また戻れるようにしておきたい。



「どうだろう?頼めるだろうか?」


青月はにっこり笑って答えた。


「お前の頼みだ。断るわけにはいかない。

それに……楽なんだろ?」



俺は少し不安を感じ、友を見つめた。

だが、すぐに不安を打ちけし、頷いた。


「ああ、そうだ。楽だから頼んだ。友よ」



あの時……

王は俺の気持ちに気づいていたのだろう。



結局、王の周りに不穏な気配は感じられなかった。


王はきっと、距離を置けば

真琴への気持ちも薄れると思ったのかもしれない。


だが、想いは募るものだ。

俺の真琴への気持ちは薄れることなどなかった。


だが、王にも知り得ないことがあった。


そう……


親友の青月と真琴が恋に落ちることなど

誰が想像できたであろうか。



なぜ俺はあの時、自分の気持ちを

友に伝えなかったのだろう。

もし青月が俺の気持ちを知っていれば…

いや、おそらく同じこと。

愛する気持ちを抑えることなど出来いやしない。



嫉妬……


あの時、青月に頼まなければ…。

この世界に来てから忘れいてた

嫉妬という感情を

感じることはなかっただろうに……

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