28.クラリサの伝説
一つ疑問がある。
この戦いの命運を握るもう一つのクラリサ。
それは天澄界が持つ。
もし、万が一、
俺が、俺たちの誰かがクラリサを
取り戻しに向かったとして
もし、万が一、
クラリサを取り戻せたらそこでこの戦いは終わる。
だが、もし、取り戻せなかったら?
一旦、ヴェルグラスとやらが復活したら?
天澄界のクラリサを持つ者がいない限り
勝てる可能性はない。
そもそも天澄界のクラリサは?
「よくわからないですけど、
太楽国のクラリサが奪われた以上、
天澄界の明日も危ういわけですよね?
応援とか援軍とかないんですか?
天澄界のクラリサは今どこにあるのですか?」
鞠子様は、俺の疑問に対して答えた。
「28年に一度、クラリサの在処が見えてしまう時、
ヴェルグラスの声が聞こえた者に奪われないように、
天澄界は王の家臣が、太楽国は帝の一族が
それぞれ一度、祠からクラリサを
取り出し、守ることにしています。
祠に戻す前に太楽国のクラリサが奪われたことは
天澄界には伝えております。
戦いが始まる……
天澄界のクラリサは
祠に戻すことなく、今
王の手にあります。
クラリサ奪われし時、五人の戦士現る……。
クラリサが奪われた時、五人の戦士が現れるという
言い伝えがあります。
天澄界も、王も、伝説を信じ、
戦士の出現を待っていることでしょう。
ただ、残るクラリサは天澄界のもの。
青の珠がない今、おそらく戦士は四人しか
現れないはず……」
天澄界のクラリサは完全ではない。
青の珠がないために四人しか現れないであろう
伝説の戦士。
生まれるかわからない武器。
何から何まで不利な状況ときてやがる。
だが、諦めるのか?
数日後に、なんだ、嘘だったのか言えたら
どんなにいいだろう。
でも実際に俺の親父の命は目の前で絶たれた。
俺は鞠子様に一枚の写真を見せた。
今の葵と同じ装束をまとった美しい女性。
胸元に円の中に赤い鳥居のマーク。
「この写真は父が持っていました。何か
ご存知ではありませんか?」
鞠子様は写真を手に取った。
「この国を守る帝は代々、女性と決まっています。
男の子が産まれたら、帝の館から出され
特定の職業を受け継いでいきます。
太楽国の境界線、この導きの間も
その一つ。
かつて帝の一族であった男性の子孫が
ずっと引き継いでおりました。
今、葵は身を隠すために
ここに間借りをさせてもらい、
巫女の手伝いをしております」
「親父が帝の一族と関係があると?」
鞠子様は俺を真っ直ぐに見つめ、言った。
「……その答えはきっと見つかります。
貴方の目で確かめてください」
俺の心はもう決まっていた。




