21.多聞の願い
美しき5つの光。
そしてあの袋の紋様。
赤い鳥居のマーク……
間違いない。クラリサだ。
やはりあの夜。
月が灰色に輝くグレームーンの夜。
クラリサはあるべき場所から
取り出されていた。
多聞は受付を立ち、扉へ向かった。
なぜここに?
あの娘が帝女の一族であることは
間違いないだろう。
拓海と何を話していたのだろう。
なぜ拓海を知っている?
ここは境界線に近い。
クラリサが取り出されたたせいだろう。
少し闇の気配を感じる。
強いものではない。
ただ、境界線が不安定になっているため
それほど強い力を持っていなくても
黒い影、ラーサとして太楽国に入ってくる
数は増えている。
帝の一族が持っていたのであれば、
ヴェルグラスに渡る前に
阻止したということか。
なぜここにあるのかはさておき、
クラリサを狙う輩に渡ったのではないことは
確かだ。
ならば早く、あるべき場所へ戻すのだ。
クラリサが目視できる以上、
安心することは出来ない。
何よりも拓海をこの争いに巻き込ませるわけにはいかない。
28年前、青月がクラリサを奪ったと聞いた。
信じられなかった。
だが、彼が望むものに心当たりがないわけではなかった。
俺は本当に青月がクラリサを奪ったとしても
彼を憎むことなど出来ない。
誰でも闇に落ちる弱さを持っている。
俺だってどんなに願っても叶わない願いがあった。
それが叶うのであれば、獅子に魂を売ったかもしれない。
まだ若い娘だった。
闇の力が増している気配を感じる。
祠まで無事辿り着けるだろうか。
彼女を守らなければならない。
帝一族の血にかえて。
俺は、若い娘の後を追った。




