20.5つの光
1時間は並んだだろうか。
実際、こんなに並んだのであれば、
本当に申し訳ない気持ちだ。
パン de パラダイス。
円の中に赤い食パンのマークのお店。
食パンのマークの上、3分の1あたりに
横一直線、赤文字で「ーparadiseー」
と書かれておりそれが鳥居に見える原因だった。
そんなことは置いておいて…
やっと辿り着いた店員さんが
覚えているとも限らない。
でも手がかりはここしかない。
「すみません。昨日、ここで
あんバタードーナツを買われた若い男性を
覚えていませんか?」
記憶力の良い店員さんに感謝。
制服と名札を覚えてくれていた。
私は今、水澤プラネタリウムにやって来た。
直も来ると言ったが、
母からの急な呼び出しが入り別行動となった。
伯母の手下は直が片付けた。
数はそれほどいない。
伯母に手を貸す者がいなければ
しばらくは1人でいても大丈夫なはず。
プラネタリウムの上映が終わったようで
お客様が出てきた。
それほど数は多くない。
見渡しても、公園にいたであろう男性は見つからない。
はっきりとは覚えていないが、受付にいる、
いや、受付で寝ている?初老の男性ではなかった。
諦めようとした時、プラネタリウムから
若い男性が出て来た。
よく寝たのか、左目をこすりながら。
間違いない。
彼は私が目印のために持ってきた
袋を見つめている。
「あの、申し訳ありませんでした!」
私は彼に近づき、
持って来た袋(あんバタードーナツ入り)
を差し出し深く頭を下げた。
「……よくここがわかったな」
私は顔を上げた。
「水澤拓海」と書かれた名札が見えた。
オーナーはきっとあの受付の方で
息子さんか。
「失礼とは思いましたが、パン屋さんで
聞きました。
あの、同じような袋を落としたのですが
お持ちではないでしょうか」
彼はポケットから袋を取り出した。
探していた、誰もが欲するクラリサが
入っているであろう袋。
「これだろ?」
「あ、ありがとうございました!
本当に本当にありがとうございます。
あの、中身は……」
彼は袋からクラリサを取り出して
私に見せた。
「ちゃんと入っているよ。
ただ、この袋のマークだが……」
クラリサから5つの光が美しく放たれた。
受付のオーナーが、驚いてこちらを見ている。
何か信じられないといった表情だ。
ここでクラリサの目撃者を増やすわけにはいかない。
私はパンが入った袋を押し付け
クラリサの袋をなかば奪い取った。
「ありがとうございました。本当に感謝いたします。
それでは失礼いたします」
私は急いで出口へと向かった。
「おい!待てよ、そのマークどこかで……」
彼の言葉の最後まで聞かずに私は
勢いよく扉を閉めた。




