1. 太楽国〜この世
ここは太楽国。
天澄界と昏哭界の
狭間を渡る者たちの世界。
簡単に言えば現生である。
そう、今貴方たちが生きている世界と
さほど変わりはない。
違うところといえば、代々この国を治めるのは
帝女の一族であることくらいだ。
天澄界はいわゆる天国、
昏哭界は地獄をイメージしてもらえれば
よい。
太楽国の人々は、その命が尽きると、
行いにより次の世界が決まる。
全う(まっとう)な人生を送ったものは
「天澄界」へ。
全うのレベルは……
きっとそこそこでいい、はず。
そこへ渡った者は
長い年月の後、新しい命を授かり
再び太楽国へ。
いわゆる輪廻転生というやつだ。
そして悪しき行いをした者は
「昏哭界(闇の国)」へ堕ち
永遠に続く苦しみ、
憎しみの闇をあじわうこととなる……
どんなに後悔してもその声は届かない。
そこから逃れられる方法はただ一つ。
太楽国と天澄界がそれぞれ持つ
クラリサを奪い
昏哭界の泉に住む闇の獅子「ヴェルグラス」を
復活させること。
クラリサとは赤・青・黄色・緑・紫
5つの珠からなるスクエアピラミッドだ。
炎、空海、大地、樹木、光…それぞれの
パワーを秘め絶大な力を持つ。
太楽国と天澄界は、クラリサの力で
昏哭界からの侵入を防いでいる。
クラリサの場所は誰も知らない。
探したくても見えないらしい。
しかし、どんなことにも「完全」はない。
そう、絶大な力を持つクラリサも
例外ではなかった。
28年に1度。
月が闇の影響を受ける「グレームーン」の日。
闇の光に照らされて、クラリサの場所が
わかってしまうらしい。
そのときヴェルグラス(闇の獅子)は囁く。
「クラリサを渡せば、どんな望みも
叶えてやる」と。
そんな誘いにのるやつなどいない?
そうかな。
もしどんな願いでも叶えてやると言われたら?
いまだかつて、クラリサを
昏哭界に奪われたことはない。
だが次のグレームーンは
もうすぐだ。
今も誰かには聞こえているはず。
ヴェルグラスの囁きが。
心に闇を持つそこの誰かに…。
クラリサには一つ
言い伝えがある。
「クラリサ奪われしとき
五人の戦士現る。
美しき五つの光
深い闇を消し去る」
そして知る者は少ない。
28年前のあの日
天澄界にあるクラリサの
青き珠が失われたことを
昏哭界に渡ったのではない。
青い珠はどこにいったのか。
またグレームーンがやってくる……
俺は誰かって?
この話に巻き込まれる主人公さ。