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第二章:3 無詠唱攻撃魔法


 「折角アルぼっちゃまにお会いできたのに、もうお別れなんて()()は寂しゅうございます〜」



 ーーー…エスコォールが来てから2日

 村人の手伝いもあってカビから奪還した館から、道中の世話係として来ていた本家の老執事と護衛がフォンダルフォン家へと帰るため、見送りをしている。


 「久しぶりに会えて嬉しかったよ。今度は手紙も書くから僕が戻るまでじいも元気でいてね…」


 このアルタスと別れを惜しむ老執事はガリアがフォンダルフォンに来る前の世話係で幼いアルタスをまるで本当の孫のように可愛がってくれた人物だ。

 やはり別れは寂しい。


 「バタバタしていてすっかり忘れておりましたが、こちら前回手紙を書く際は遠征中でしたサマリーヌ様、それとレスリー様からの手紙でございます。…お二人とも大変心配しておりましたが、今のぼっちゃまの立派な姿を見たら…みたら……うおぉん!!」


 ーーー…ついに堪えきれず泣き出してしまったじいから兄とその娘…ーー…年上の姪っ子からの手紙を受け取る。

 前回も受け取ったはずの兄からの分厚い便箋にげんなりしつつも、じいの涙に思わずアルタスも涙ぐみ熱い抱擁を交わした後、いよいよ別れの時間となる。


 「いやぁ、君たちとの旅は中々楽しかったよ!そうだ!アル君も連れてあと()()()()だけ旅しないかい?あっはっは!」


 ーーー…長い時を生きるエルフの『ちょっと』に道中散々振り回されたのだろうか?

 護衛の兵士達は顔を歪め、別れを惜しむじいをアルタスから引っぺがすと、挨拶もそこそこ馬車へ乗り込み逃げるように帰って行ってしまった…


 「ちぇー…っ!つれないなぁ……」

 「ふぁー…あの爺さんアレコレうるさかったから帰ってくれてよかったッスよ…やっと自分一息付けるっス…」


 口を尖らせるエスコォールに対し、ここ2日、本家にバレては行けないと外面モードで気を張っていたガリアはようやく肩の荷が降りたとばかりにため息をつく。


 「ははは!ガリア君には災難だったね!ボクには気を使わなくていいからリラックスしておくれ。」

 「うう、センセが理解あるお方でホントよかったッス〜!自分あと一日でもアレしてたらおかしくなってたっスよ!」

 

 ーーー…そう言って抱きつき甘えるガリアの頭を撫でるエスコォールは、

 「ボク、妹が出来たみたいで嬉しいなぁ!あはは」

 と、この二日間でスッカリ意気投合して、おばあちゃんと孫でもきかない程年齢差のある謎の姉妹が爆誕し、アルタスはガリアが素で居られる環境を作れたことにホッとしていた……


 「……さっ!諸々ひと段落したことだし、いよいよアル君お待ちかねの魔法の授業でも始めようか!」

 

 エスコォールはガリアのツノにチュッとくちづけをして離れ、手を広げて堂々と宣言した。

 いよいよ緑将による魔法の授業が始まる…ーーー



 ーーーーーー



「ーーー…うん、ヤバいね、君。」

 数分後、とりあえず今の実力の確認のためアルタスがいつものように顔の大きさほどの水球を作ったところ、エスコォールから言われた一言だ。


「……そんなに才能ないですか……僕…?」

 やはりいつまで経っても成長しない魔法にエスコォールは呆れたのだろうとアルタスは落ち込む。

 姿は見えないが心なしか頭の上のアーティも笑っている気がする……


 「いやいやいや、違うよ!えっ?今の若い子って褒める時『ヤバい』って言うんじゃないの?」


 ーーー…イケてる言葉で褒めたつもりが妙に落ち込む弟子に対してエスコォールは最近仕入れたヤングでナウな言葉を焦って訂正をする。


 「どっちでも使う汎用性高い言葉ですからね……と、言うか今褒めてくれてたんですか?」


「当たり前じゃないか!流石三代目魔王の生まれ変わりと呼ばれるだけあるね!」


「…三代目の生まれ変わり?なんですか、それ?」


「知らない?街で聞いた君のアダ名だよ、でもよかった、会うなり『魔族以外には破滅を…』とか言い出すんじゃないかってドキドキしてたんだよ。」


 ーーー…魔族にとって力と恐怖の象徴三代目魔王。

 アルタスはどうしてそんなアダ名が自分に付いたかサッパリ心当たりはない。

 この館にある歴史書は二代目までしかないため三代目のことは詳しくは知らないが、エスコォールの口ぶりからしてどうやら三代目とはかなり過激な人物だったようだ……


「…まぁそんな話はどうでもいいんだ。とにかく君はヤバいんだ!そうだな…ボクだと参考にならないし、ガリア君、()()()()で水を出してくれないか?」


 「セーカツ…ーー…?ウッス!」

 若干エスコォールの言うことが理解できないガリアが水魔法を使うと、以前アルタスが見た大きな水球が、ボンッ!と音を立てて遠くへ飛んでいく。


 「……ガリア君…生活魔法…だよ…?」

 「ーーー…??ウッス…?」

 《ボンッ!》


 「…なるほどなるほど………も〜エディく〜ん!?」

 もう一度実演したガリアの水球は先程と同じ大きさの物で、エスコォールは頭を抱えたあと困り果て、エディを呼びに厨房へ向かって行った……


 「ーーー…ちょっ!なんですか?今スープの仕込みが大変で…ッ」

 「い、い、か、ら、!エディ君、生活魔法で水出して!全力でね!」


 「ーーー…?わかりましたよ…ったく…」

 突然連れて来られた上、エスコォールに急かされたエディが不満げに水魔法を出すとアルタスが最初に魔法を使った時のような水がジャバッと掌からこぼれ落ちる。


 これが全力?

 アルタスが首を傾げると、それを見たエスコォールはようやくいつもの笑顔を取り戻し「これこれ〜」と満足そうだ。


 「ーーー…ガリア君の出したのは攻撃魔法、エディ君のが一般的な魔族が出すレベルの生活魔法…ーーー…そしてアル君、君が出したのも生活魔法だ……どうだい?君のヤバさがわかったかい?」


 ……確かに今見たエディの魔法が全力ならば、アルタスは何倍もの水が出せる。

 だが、アルタスにはまだ攻撃魔法と生活魔法の違いも分かっておらずピンと来ない。


 「あっはは!君に魔法を教えたガリア君も分かってなさそうだからね。じゃあアル君、もう一回君なりに魔法を出してみてよ?」


 「ーーー…はい…」

 アルタスはいつも通り()()から絞り出した魔力で水魔法を作りいつも通りの水球を作る。

 それを見ていたエスコォールはウンウンと頷き拍手した後こう続けた。


 「そうやって体内魔力だけ使うのが生活魔法だね、じゃあ今度はボクが攻撃魔法を実演するよ?ゆっくり作るから魔素が見えるその便利な魔族の目でどうなってるかじっくりと観察しててね?」


 エスコォールはピッと左手の人差し指を立て注目させると、指先から水球が現れる。

 その水球はガリアの物より小さいが、もの凄い早さで波打って回っており、その波に合わせて魔素が渦を巻くように…ーー…吸い込まれている?


 「ーーー…これ()()()()が魔素を吸ってる…ー?」


 「エクセレント!これが攻撃魔法…ーー…正式名称、無詠唱攻撃魔法さ!」

 今までアルタスは魔素を一旦体に取り込み、魔力に変換してから魔法を放っていた。

 所がこの攻撃魔法は、魔法を出した後に直接魔素を吸い込ませて力を増幅させている。


 ーーー…聞いてしまえば簡単な事なのだが、そんな事は出来ないと思い込んでいたアルタスには目から鱗だった……


 「ーーー…あはは、その様子を見る限り三代目の生まれ変わりと言うのはタダのデマのようだね!」

 「ーーーー…?…」

 

 「…だってコレ開発したの三代目魔王だからね?」

 「……!」

 ーーー…聞けばこの無詠唱攻撃魔法、二代目魔王時代後期に当時若干18歳だった後の三代目魔王エルドロールが開発したものらしく、あまりに革命的な魔法の使い方にそれはもう大騒ぎだったらしい。


 「あの時は嫉妬したなぁ、なんで先に思いつかなかったんだろうってね……あっ!ボクは年若いエルフだから当時生きてたらって話だけどねぇ……あははは!」


 その当時をリアルタイムで知っているなら既に400歳越えが確定してしまったエスコォールだったが、今も変わらぬ美貌で遠い目をし、何かを思い出すようだった……


 「ーーー…エス先生!僕早くその魔法使ってみたいです!」

 そんなエスコォールにはお構いなしにもう早く攻撃魔法を試したくてウズウズしているアルタスが目を輝かせている。


 「あっはは!子供には昔話なんかより今が重要だね!よしやってみよう!」



 「ーーー…行きます…!!」

 こうして右手を前に突き出し、無詠唱攻撃魔法の構えを取るアルタスはこの後エスコォールの言う己の()()さを思い知る事となる…ーーー






・忙しい方向け今回のポイント


・ガリアはエスコォールに気を使わなくてもいい。

・アルタスが今まで使っていたのは生活魔法。

・今主流の攻撃魔法は三代目魔王が作った。

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