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第一章:11 ただいま


「はぁ!?倒したぁ!?…盗賊団を?」



 盗賊団を倒し、なんとか森を出たアルタスは疲労の中フラフラと街道を歩いている所、街へ衛兵を呼びに行く途中のエディに保護され、今は家に帰るため引き返している途中だ。



 てっきり盗賊からうまく逃げ出したものだと思って話を聞いていたら、なんと倒したと言うものだからエディは大層驚いていた。



「…まぁかなり小規模の盗賊団だったからね…捕まったのが恥ずかしいくなるくらいの…」


「いやいや!まず小規模だろうが子供が大人相手に勝つことがおかしいですって!まったく……流石はフォンダルフォンの血筋というか…ぼっちゃんは規格外過ぎて俺は末恐ろしいですよ!」



 ーーそう言われれば確かにそうだが、ガリアだって子供の内から戦場を駆け回っていたらしいしそんなに特別な事なのか?



 基準が色々とおかしくなってしまっているアルタスだがそんなことより気になることがある。



「……僕がいなくなってガリアの様子はどうだった?……落ち込んだりしてなかった?」



「…ええ……あいつもアレでプロの護衛です。泣き言一つ言わず自分のするべき事をやっていましたよ。ただ内心かなり動揺してたと思うんでぼっちゃんは帰ってからも大変ですよ!」


 ーーははっ…それは大変そうだ…早く帰って安心させてあげなきゃな……




 「…ねぇエディ…今回の事、あんまりガリアのこと怒らないであげてね……」



「………家事や寝坊ならともかく、今回の件はぼっちゃんを守らなきゃいけない立場なのにガリアに任せっきりだった俺も同罪です。怒る資格はありませんよ……」




 ーーそもそも少ない人数の中、二人はよくやってくれている。だからそんなに責任を感じないで欲しい。


 二人の負担を減らすためにも村で新たな使用人を募ったほうがいいのかもしれないな……




 そんな使用人増員キャンペーンを考えながらしばらく馬に揺られていると思い出したかのようにアルタスのお腹が鳴る。



 「あはは…そういえば今日は朝食べてから何にも食べてなかったな……お腹減ったや…」


 「ああ……昼間は、ばぁさんのこともあったんですもんね……本当に今日は大変な一日ご苦労様でした…」



 アルタスがおばあさんを思い出し、再びしんみりとしはじめたため、エディが何か違う話題に変えようと焦っていると遠くからものすごい速さでこちらに迫ってくる松明の灯りが見える。



 「……ん…もしかしてあれは……?おい!ガリア!」


 何やら肩にぐるぐる巻きにされた男を担ぎ、脇目も振らず走っていたガリアが通り過ぎてしまいそうになった所をエディに呼び止められズザザっ!と砂埃をあげ立ち止まる。




 「ーーー!!エディ!?お前こんな所で何やってるんだ!!街への報告は……どう……し…」



 いつもの「〜〜ッス」と言う口調も忘れエディに怒鳴りつけるガリアの目に馬上から手を振るアルタスの姿が写る。


 「ガリア!心配かけたね……」

  



 「……ぼっ……ちゃん…?」


 「あああ…ああ……!!」


 アルタスの無事を確認したガリアは今まで抑えていた何かが弾けたのか、担いだ男をその場に落とし泣き出してしまう。慌てたアルタスが馬を降りて駆け寄ると、思い切り抱き寄せられ

  


 「うわぁぁあ!!ーーーぼっちゃんが拐われて自分怖かったッス!言い訳のしようもないっス!本当にすみませんでした!」




 「いいんだガリア……いいんだ…」

 


「…自分は自分の能力過信してたっス…自分護衛失格ッス…もうぼっちゃんをどこにも行かせたりしないっス…」


 

アルタスはこんなにも取り乱し泣き叫ぶガリアを見たことがなかった。アルタスはそんなガリアをギュッと抱きしめ、自分を責め続けるガリアを優しくよく励まし続けた。



「…服…びじょびじょにしぢゃってごめんなざいっス……」



「いいよこれくらい…気分は落ち着いた?………所でこのぐるぐる巻きの男は……?」



「ぐすっ……!ああ…こいつ!!こいっつ!!この野郎が首謀者ッス!!」


 「ひぃ!!」



 今まで泣いていたのが嘘のようにに赤い肌を更に真っ赤して怒るガリアが地面に転がってうめいている男をものすごい表情で睨んでいる。



 今回の誘拐事件の首謀者と言われたこの男は、収穫祭の時に、村へ来ていた行商人の中に紛れていたらしく、盗賊団の「新入り」と呼ばれていた男だった。


 村でコソコソしていた所を捕まり、ガリアからのきつい尋問でアルタスの誘拐は発覚したそうだが、よほどひどい目にあったのかガリアに睨まれただけで白目を向いて気絶してしまった。



 「……それで…この男…目覚めたら魔法使って逃げたりしない?」


「それは大丈夫っス!村に魔封石なかったんで関節外してるんで!」



ーー結局僕と似たようなやり方をしたんだな。縄の中がどうなってるか想像もしたくもない……



 気絶する男に少し同情していると、その男をエディがひょいと担ぎ上げ馬に乗せる。



 「おれは今からこいつを連れて改めて街へ向かう。悪いがガリア!ぼっちゃんを頼めるか?」


「わかったッス!ぼっちゃんは自分が無事家に連れ帰るっス!」 



 「ああ!それと!ぼっちゃん何にも食べてないから何か食べさせてやってくれ!」


「よっしゃあ!ガリアスペシャルでおもてなしっス!!」


と使用人同士の連絡事項をし、アルタスが盗賊のアジトの大体の場所を教えると、エディは街の方へと馬を走らせ夜の闇へと消えていった。


 そんなエディを見送り


 「さっ!ぼっちゃん疲れたっスよね!自分おぶって帰るっスよ!」


少し恥ずかしい気もしたがさぁさぁ!と急かすガリアと疲れもあって、遠慮なくガリアにおぶってもらい帰る事にした。



 「何があっても落とさないスから家に着くまで寝ていいスよ!」


 と言うとガリアは急加速し、ものすごいスピードで走り出す。

 

 ーーーこんなの寝れるか!!と心の中で思っていたアルタスだったがガリアの背中から伝わる心地の良い温かさに「ただいま…」とつぶやいた後、疲れもピークだったのかいつの間にか眠りに落ちていた……




ーーーーーーー




「………ん…」


 ーー外が眩しい…朝…?そうか昨日は結局そのまま寝ちゃったんだな……


 朝日にぼんやりと目覚めたアルタス。


 魔族は回復力が高いため一晩寝れば疲れくらいならバッチリ取れる。グッと背伸びをし、体を起こす。


 「ん…?」



 ふと傍を見るとアルタスのために作ったであろう焦げたパンとガリアが椅子に座ったままベッドにもたれて眠っている。



「はは…一晩中いてくれたんだ…」



 行儀は悪いが、折角なのでベッドの上で焦げたパンの苦味を味わいながら、ガリアの頭を撫でる。


 幸せそうな寝顔を見ながらパンを食べ終え、ガリアを起こさぬよう、ベッドを降りると…何故か寝ていたハズのガリアが腕を掴みこちらを見ている。


 「ぼっちゃん…どこ行く気ッスか…?」


 「いや…トイレだけど…?うわっ!」


 「自分が連れて行くッス!部屋の外は危険がいっぱいっス!!」


そう言うとガリアはアルタスを抱えトイレまで運び、中にまで一緒に入ってくる。ひともんちゃくした後、何とか追い出し用を足すと、外へ出た瞬間に再び抱きしめられ離れない。



「もう自分ぼっちゃんから目を離さないっス…ぼっちゃんは一生自分とココにいるっス…」



 と、ガリアはすっかり過保護モードになったしまっていたが、後に盗賊団を捕縛しに行った衛兵達が見たアルタスの容赦ない制裁と、怯えきった盗賊たちの証言により


「アルタス・ジュガリア・フォンダルフォンは三代目魔王の生まれ変わりだ。見たことの無い不気味な魔法を使い、手を出せば死よりも恐ろしい目にあう」


 ーーーと魔族最大の力と恐怖の象徴の生まれ変わりという、大分尾ひれのついた噂が流れたことによりこの地ではもう犯罪者たちから狙われる心配がなくなったことをガリアは知らない…





「ーーーガリア。人生には失敗が付きものさ!僕だって毎日失敗だらけさ!でも失敗をいつまでも引きずらず次への糧にする事が重要なのさ!」


「ぼっちゃんは五歳の癖に達観しすぎなんス!!……もしかして前世の記憶でも残ってるんじゃないッスか!?」


「ふふん…!何言ってる。僕は僕さ!なんてったってもうすぐ六歳!大人の男だ!達観もするさ!」





 この先も何とか外に行きたい遊び盛りのアルタス少年は、この後もぐずるガリアを一日中説得し、渋々ながら外へ出ることを了承させたのだが……正直盗賊団を討伐するより疲れ、ぐったりとした一日になった。


・忙しい方向け今回のポイント


・無事アルタスは保護された。

・アルタスは使用人の増員を考える。

・ガリアは自分を責め過保護になった。

・巷でのアルタスのあだ名は「三代目魔王の生まれ変わり」

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