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【短編小説】風船のなる木

作者: 青いひつじ


朝。いつものようにニュースを見ていた。

とある村のとある丘に、"風船のなる木"が発見された。それだけでも奇妙な話だが、あるひとつの風船が膨らみ続け、今にも弾けそうなのだという。その大きさは少し大きなバスケットボールほどで、通常の風船であればもう少しの膨らみで弾けてしまうだろう。


木は"バルーンツリー"と名付けられた。

バルーンツリーをめぐって世間では様々な噂が飛び交い始めた。

ある者は風船の中には財宝が眠っているのだと断言し、ある者は風船が割れれば地球は滅亡すると唱え、またある者は風船の中には異世界が広がっているなどめちゃくちゃな噂を流す人間まで出てきた。



1週間後。

お昼のワイドショー、夕方5時のニュースはこの話題で持ちきりだ。

テレビの向こうでは、若手俳優風の研究者が今回の現象について解説している。彼は世界中で起こる超常現象について研究しているらしい。

しかし、気になるのはその解説内容でなく彼の容姿であった。学生時代クラスにこんなイケメンがいたら死ぬほどモテていただろう。そして仮に私が同じクラスだったら彼がモテてる様子を見て、教室の端っこで号泣していただろう。

彼の言動には目に余るものがあったが、その容姿のお陰で女性からの支持は圧倒的であった。

こんな研究をしている人間だったのか。私は新聞に目を戻し、コーヒーをひと口飲んだ。



2週間後。

相変わらず、バルーンツリーの話題は毎日ネットニュースのトップに上がっていた。

研究者による解説。近隣住民のバルーンツリー撤去を訴えるデモ行進、訴訟を起こす者。

初めに財宝説を唱えた研究者が、その存在が明確になった際には、半額を自分に譲渡するよう国の機関に申し出たらしい。

多くの人間がバルーンツリーを餌に配信者としてデビューを果たした。



3週間後。

興味もないクイズ番組を垂れ流していたら、速報が流れてきた。風船が急激な成長を見せ始めたという。

一部の交通機関が止まり、学校や会社が休みとなった。

風船の成長はすぐに止まり何も起こらなかったが、風船が割れれば地球が滅亡するなどと唱えた者のせいで、夜もおちおち寝ていられないという人たちが出てきた。そして、眠れない夜が続きノイローゼになる人が多発した。

"バルーン病"という病名までつき、アメリカのニュースでも取り上げられ社会現象となった。



バルーンツリー発見から4週間後の朝。

毎朝の星座占い、街角調査のコーナー、最新グルメ情報等、様々なニュースが突然バルーンツリーの話題に差し替えられた。

一晩経ち、風船はガスタンクに匹敵する大きさまで急成長し、メキメキと音を立てているらしい。

きっとこのとき、私を除く日本人のほぼ全員が各々の画面にかじりついていただろう。



パチンッ。

テレビにはポカンと口を開けた取材記者が写っていた。




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