安全自転車
1853年
自転車が今現在、よく知られている形になったのはジョン・ケンプ・スターレーによって1885年に考案されたものだ。スターレー・アンド・サットン社によってローバー安全型自転車という名前で販売されることとなる。
この自転車は、現在のものと形は殆ど変わらない。前輪が後ろに傾斜したフロントフォークではさみこまれており、その先端がハンドルを介して乗る人の手前に存在する。後輪はチェーン駆動を介して乗る人の真下にあるクランクとつながっている。安全型自転車は、低重心でかつ操作性に優れる構造となっている。これにより従来の主流なペニー・ファージング型自転車の欠点である高重心による不安定さが解消され、さらにハンドルとペダルが人間の身体にとって自然な位置にとりつけられた事による操作性が向上した。これにより、簡単かつ安全に自転車を乗る事ができるようになったのだ。
これを今まで思いつかなかったのは、最近コペンハーゲンの街中で見かける自転車がペニー・ファージング型自転車だけなことを訝しんで周囲の者に聞いてみると、まだ安全型自転車は、存在しないことがわかった。ここで金儲けの匂いがした。
たしか、スコットランドのロバート・トムソンが1845年に空気入のゴムタイヤを発明しているはずだ。その権利を買い取れば良い。
あとは、安全型自転車時点の改良だ。変速機に関しては搭載すると価格も高くなるし製造難易度も上がるので固定ギアとして搭載は見送る。フレームに関しては、ダイヤモンドフレームで変更は無し。最後に目玉であるフリーホイールを搭載するのだ。史実での当初の安全型自転車は、フリーホイールではなく自転車を漕ぐのを止めると後輪も止まってしまうのだ。
そこでラチェット機構を組み込んだフリーホイールを使うことで、トルクを1つの方向にのみ伝達させることが出来るようになる。また、反対方向への回転は空転するような仕組みとなっている。ペダルからの力はスプロケットよりハブへ伝わることとなるが、自転車が持つ慣性により、地面から受ける車輪の回転力に対しては空転を起こす事によって、ハブからスプロケットへは力が伝わらずペダルも回転しない様になる。これによって、惰性走行を行う際にペダルをとめても安全になり乗る人の負担が軽減される様になる。
最後にタイヤの耐久性を上げるために補強材としてカーボンブラックを忘れてはいけない。これを混ぜることによって、タイヤの性能が格段に向上するのだ。
ペ二ー・ファージング型の速度は出るものの、非常に高価であり運転において危険が伴うという欠点によって産業革命の影響で裕福になった中産階級の余暇を楽しむようになったスポーツを好む中流階級男性に需要がほぼ限られていた。
だが、危険を伴わず簡単に乗れる安全型自転車の登場は、限られていた乗り手の範囲を一気に広げることに成功したのだ。これによって男性、女性を問わず中流階級の多くの人々が自転車を楽しむようになり、その範囲は階級をも超える事となった。すなわち、高価で危険なペニー・ファージング型自転車に日常生活での必要性を感じなかった労働者階級が、安全型自転車によって自転車への実用性を見出し、そういった人々の需要に呼応して大量生産されていき、価格が低下していくこととなったのだ。
早速会社に設計図を投げつけて、生産ラインを作らせよう。大量生産の為のフォード生産方式を導入してみよう。安価に大量に生産するのだ。
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