プレス
プレス機は触ったことがないからわかんない。
1852年 6月
フレデリック製鉄は僅か1年を持って大規模な製鉄所に成長した。そしてその成長は今年も止まらないだろう。今年5月8日にロンドンで最終的にロンドン議定書として妥協が成立したからだ。これにより、デンマークとプロイセンの戦争状態は完全に終了した。これによってドイツ諸国に鋼を売ることが出来るようになったのだ。
安価な鋼をイギリスよりも近いドイツ諸国に売れるし、ルールからの石炭の輸入もやりやすくなるのはとても嬉しいことだ。シュレースヴィヒ・ホルシュタイン両公国を経由することで、ドイツ関税同盟の恩恵を受けることが出来る。
オーフスのフレデリック製鉄所は、更に転炉を増やし新たに平炉も新設することとなった。所謂シーメンス・マルタン法である。
この平炉は左右対称に蓄熱室があり、炉体は鉄柱や鉄板で覆われた内部に耐熱レンガが張られる。この場合使用された耐火物によって酸性と塩基性に分けらる。酸性平炉は精選された原料により高級鋼を作れるのだが、コストが高くなってしまうので塩基性が主流となるのだ。今回新設した平炉も塩基性である。
転炉に対して鋼を製造する時間は6時間程かかるが、転炉で作られた鋼より良質な鋼を得られることが出来るので、浸炭等を通して高性能の装甲板を作れるようになる。このまま研究を進めていけば前弩級戦艦擬や装甲巡洋艦を作ることも夢では無いだろう。
様々な品質の鋼を安価に取り揃えることによって、デンマーク国内でも鉄骨で作られた橋や建築物が建てられ始めている。穀物の輸出も好調であり、お陰でデンマーク国内は未曾有の好景気に湧いている。
コペンハーゲン
エーダム・ヴィルヘルム・モルトケは前年よりも上がった税収を見て嬉しい悲鳴をあげた。穀物や新しく出来た鋼の輸出等の利益によって戦争が終わった今、デンマーク各地に新たなインフラの建設等ができるようになったからだ。
戦争の結果こそ妥協的なものであったが、その中でデンマークの工業化は民衆の力によって着実に前進していることがわかる。オーフスは今やデンマークの一大工業地域となっている。多くの労働者が集まり、ここコペンハーゲンにも劣らない賑わいとなっている。
「オーフスは、今やデンマーク第2の都市として発展している。港は拡張され、港湾設備も整っている。鉄道も敷設され、南北に延伸する計画もあるようだ。鋼がデンマークの経済に良い影響がこれからももたらされるに違いない。」
優秀な法律家・政治家である彼もオーフス繁栄の中心にあるフレゼリック製鉄の支配者がフレゼリク7世の息子であるフレゼリックであるとは思いもよらないのであった。彼は早速報告書を纏めて王の元へ赴くのであった。
オーフス
「これが新たな設備ですかい。」
そう言って新たに建てられた施設の中に鎮座する設備を技術者たちが興味深そうに眺めている。
「そうだ。これは最新式の水圧プレス機である。これを改良してより良いものにするのが我々の仕事だ。この改良はフレゼリック製鉄の創業者より最優先の課題とされている。皆、心してかかるように。」
そう言うと技術者達は早速水圧プレス機を分解しはじめた。
プレス機においてより高い圧力を、加えることができるようになれば銃等の部品を安価に大量生産出来るようになるし、他にも様々な物事にも応用できるようになるからだ。
金属薬莢においても、今現在リムファイア型の金属薬莢が発明されており、かなり出回っている。かなり技術的蓄積があるのでセンターファイア型金属薬莢も直ぐに試作することが出来た。
ただ、これを安価に量産するとなると先程も出てきたようなプレス機の改良が必要なのだ。他にも機関銃等の部品にも軽量なプレス加工部品を使いたい。
ご意見・ご感想お待ちしております。




