3話.これが恋?
マッチングアプリに登録して早2年——。未だに誰ともマッチングすることなくただただ日数だけが経過していた。
奏太に勧められたアプリをいくつかインストールし、登録だけはしているものの、何の音沙汰もないアプリに関しては消すことにした。
――有料会員制に切り替えるべきなのか?
今まで登録していたものは相手とマッチするまでは無料会員のものばかりだったため、これを機に有料へ移行するべきか悩んでいた。
そもそも相手に求めることが多いのか、趣味や価値観が同じでなければ結婚してもすぐに離婚してしまうかもしれない……。僕自身で考えても、何の答えも出ないとわかっていてもついつい考えてしまう。そんな時、ふと思い立った。
――オタクの恋活って普通と違うのでは?
そう思い、パソコンでネット検索をしてみた。
『オタク 恋愛 方法』
僕の思っていた通り、オタクにはオタクの恋活があると検索結果でわかった。趣味が同じ人同士で繋がれる、そんな淡い気持ちを抱き、僕はこれまで登録していたマッチングアプリを退会し、新たなアプリに登録をすることにした。今まで使用していたアプリと違い、プロフィールに記入する項目が桁違いだった。好きな○○、という項目がいくつもあり、趣味に重きを置いていることがわかった。
こうして始めた新たなアプリ。これまでにも相手が見つからず時間だけが過ぎていたが、今回ばかりは巡り会いたい、そんな気持ちが勝っていた。
『新着メッセージが届いています』
アプリで通知が届いたのは、登録して半年後のことだった。
僕はこれまで自ら相手の女性にいいね♡を送ったことがなかったことを反省し、僕からプロフィールを見ていいな、と思った女性にはアプローチをしようと思い、何名かにいいね♡を送っていた。その中でようやくマッチした女性とこうしてアプリ内でメッセージ交換をしていた。
はじめは何気ない会話、地元のこと、お互いの趣味について、これまでの恋愛について……。お互いニックネームで呼び合っていたが、メッセージのやりとりをするうちに本名を明かしても問題ないと思った僕は、相手の女性に確認した上でお互いの名を明かすことにした。
相手の女性の名は、金城美空さん。僕よりも年上ではあるが、そこは気にしていなかった。恋愛において年齢はさほど関係ない、僕はそう思っていた。
美空さんと連絡を取り合ううち、僕にはある思いが込み上げて来た。
――美空さんと会ってみたい、連絡先を知りたい
そんな思いを言っていいのかわからなかったが、僕は意を決して聞いてみることにした。
『今度、お会いしませんか?』
『いいですね!会ってお話がしたいです』
――よっしゃあ!第一関門突破!
『でしたら、アプリでのやり取りではなく、連絡先の交換もしませんか?』
『そういえば、このアプリって男性は有料なんですよね。気づけなくてすみません。連絡先の交換しましょ!』
――第二関門も突破!
お互いの連絡先を交換できた嬉しさは、今までに感じたことがないくらいの感情を僕に与えてくれた。
昂る感情
——これが恋?いや、断定するにはまだ早い
僕は美空さんと会う約束をし、美空さんの地元でゆったりと話せる場所を検索した。駅から歩いてすぐの所にそれとなくいい雰囲気の店を見つけ、あとは当日を迎えるだけとなった。
迎えた当日——。
待ち合わせ場所に指定された駅の改札口。予定より少し早めに到着した僕は緊張を和らげるためにウロウロしていた。何度もアプリに登録されている美空さんの写真を確認しては、人込みを確認していた。
しばらくウロウロしていると、
『今、目の前を通り過ぎたね』
――え?
振り返った先には、満面の笑みで僕を見ている美空さんの姿があった。
「初めまして、大和くん」
「あ……えっと、初めまして」
――僕は肝心な時にいつもどもってしまう……
「だいぶ緊張してるね」
「うん……その……初めてだから」
「その緊張が少しでも和らぐといいなぁ」
僕の中で何かが芽生えた。
そしてこの感情の意味が『恋』であると気付くまで、そう時間はかからなかった。
カフェで話をしているときも、その後に2人で歩いてるときも、何気なく目に入った映画館で映画を観て過ごした時間も、僕にとっては幸せな時間だった。そして何より隣に居てくれる美空さんの存在が大きかった。見た目は普通の女性に見えても、趣味の話をするときには目がキラキラと輝く姿は眩しかった。
――この女性と一歩先に進みたい
美空さんと初めて会った2日後。
『今日も1日お疲れ様。大和くん、これからどうしたいとか要望ってある?』
ふいに来た美空さんからのメッセージ。
あまりにも唐突すぎる内容だったが、これからの関係を考えての内容だろうと思い、僕は返事をしてみた。
『どうしたいっていうと、今後の関係というか、交流を続けるかみたいな話で合ってる?』
『そう今後の関係。今は……友達一歩前進って感じかな?』
――これはまたとない好機、いくなら今しかない
そう思い、僕はスマホに打ち込んでいた。
『あまりこういうのはメッセで言う事でもないかもだけど……美空さんさえよければ、本格的に交際したいかなと思ってます。この前お茶して性格も合いそうだって思ったし、何より一緒にいて楽しかったから。もちろん無理強いする気はないけど、いいお返事もらえると嬉しい』
手に汗をかき、緊張しながらも送信ボタンを押した。
初めての告白……。どんな返事がきても受け止める、そう思っていると、スマホ画面には美空さんからの着信が来ていた。
――で、電話!え……
緊張しつつも、僕はスワイプして電話に出た。
「もしもし」
「……もしもし。さっきの……」
「あ、えぇっと……」
「私でよければよろしくお願いします!」
「うぇっ!ほ、ほんとに?」
「ほんと!」
「こちらこそ、よろしくお願いします……」
奥手な僕にこの日、人生で初めて彼女ができました。
虎娘『奥手な僕に初めて彼女ができた話』
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