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笑い合う

「あなた・・フィンのこと好きなの?」




「人として。恋愛として育てる気はありません。エレノア様がフィンを好きだと知りましたので」


「わたくしのために諦めたの?」


「いえ。そんな大げさなことではなく。フィンには幸せでいてほしいなって思うので、その相手が私じゃなくても全然構わない感じですね」


「そう・・」


「仲良くなるコツなんて人それぞれだと思いますよ?」


「それが難しいのよ」


「もし、明日フィンがいなくなったらどうします?」


「そんなの嫌!」


「では、今日伝えたいことはできるだけ素直に伝えてみるとか」


「・・・努力するわ」


「エレノア様の立場だと素直になるのは難しいでしょうに、そんな風にすぐに飲み込もうとされるのはとても可愛いなって思います」


「ううっ・・そういうところがあなたの素敵なところだと思うわ、本当に」


「ありがとうございます」


□  □


相変わらずイアサントの目は光っているので、魔法を少し進化できないものかと思うようになった。

だって私にとっては魔法を使うことが自然で、使えないと不便なのだ。


風を使った魔法でバレたのだから、バレない方法を試してみることにした。


今回はできるだけ白い石を探してみる。


石を風で集めるのは難しいし、要は見つけやすければいいだけだ。


最初に白い石をひとつ見つけてから、目に力を集中する。同じ成分の石は元々大きな石が砕けたりして小さくバラバラになっているので、同じものだけをサーチできるように集中してみる。


中々上手く行かなくてイライラしたけれど、これならイアサントが見ていたとして単にぼーっとしているように見えるだけだと思う。


ひとつふたつ見つけたところでトレーニング終了。

これを地味に毎日繰り返す。

1週間経った頃、同じ石が振動して教えてくれるようになった。


違う。これだとイアサントにバレる。


目だけでいいのに。石が答えてくれるなんて。

どうやら私の魔法は自然と仲良しらしい。


「自分の目や身体を変化させるのは無理ってことかなあ?」


カタカタ揺れて「私はここだよー」と教えてくれている石をつつきながら呟いた。


仲間が誰もいないから、相談することができない。でも色々工夫してみるのはものすごく楽しい。だから研究所に入りたい。監視する目がなければ、この揺れて教えてくれる魔法は可愛いし嬉しいんだけどな。


□  □


「こそこそと何をやっているんだ?」


カタッ


揺れていた石が止まる。


「石を見ていただけです」


「集めるのか?」


「いいえ」


「石は風で集められるのか?」


「さあ?イアサント様はできるのですか?」


「できない。だけどできるならすごいとワクワクする」


「はあ・・」


「小さい頃魔法に憧れていてね。ホウキに乗って飛んだり、姿を消したりできたらどんなに楽しいだろうって思ってた。そんなワクワクする気持ちを、君を見ていたら思い出したんだ」


「・・・」


「どうしたら君の信頼を得られる?」


「私の名前・・わかりますか?」


「アリーチェ。アリーチェ・ソルタント」


「では、私のことはアリーチェと呼んでください」


「じゃあアリーチェは僕のことをイアと」


「は?」


「みんな呼ぶだろう?イアサント、と」


「それがお名前ですし」


「みんなと同じじゃ特別に仲良くなれないと思ってね。だから君のことはアリーと呼んでもいいか?」


「嫌な予感しかないのですが・・・こそこそ動き回るのにも飽きてきたんですよね」


「ん?聞き取れない」


「いえ。アリーでいいです、イア」


「ほう・・新鮮だな」


「そうですか」


初めてイアサントと少し和んだ空気に包まれて自然と笑う。



□  □


笑った。


初めて僕に笑いかけてくれた。


地味な印象なのに、目の前で笑うと明るくて華やかで・・可愛い印象になるんだなと少し驚いた。



□  □


「あなた、前よりイアサント様と親しくなってるわね」


「面目ない・・です、はい」


「うふふ、責めてないわよ?」


「責められているとは思っていないのですが、協力してもらったのにと思って」


「あれだけ効果なかったんだし、協力もなにもって話だけど。どうやらぐいぐい来られてるのね?イアサント様に」


「私の何かが興味を引くらしく」


「今のところ・・恋愛の甘い感じは無さそうと見てたんだけど」


「そうですね、それは全くないです」


「この先そうなっても私は納得するわよ?」


「そんなことにはならない自信があります」


「バカね。何が起こるかわからないから楽しいんじゃない」


「はうっ!」


「でしょう?」


「そ、その通りかと」


「頭ごなしに否定して可能性を狭めるのではなく、どの方向にも動けるように心構えしとけばいいの」


「・・・」


「なあに?」


「キアーラ様がすごくて絶句してしまいました」


「でしょう?すごいのよ、私は」


ふふふと笑うキアーラのようになりたいと心から思う。


「で、学園祭なんだけどね」


「はい」


「どうしても伝統とかそういう古臭いものを一蹴したいの」


「はい」


「まあ限界はあるのかもしれないんだけど、今まで通りというのがとにかく嫌で」


「例えば」


「そうね・・パーティ的なものを開かなきゃならないというのなら、それはしょうがないんだけど、それぞれ着飾って普通にダンスするのは嫌なのよ」


「なるほど・・・」


「みんな同じようなドレスを着て同じダンスを踊るのの何が楽しいのかしら?」


「それは・・うーん」


「例えばね、男性と男性が踊ってもいいと思うの。女性と女性でもいいわ。人気のある人ならチケット販売制にしたっていいし。でもこれは本人が嫌がりそうだけどね」


「イアサント様は無理でしょうね」


「もういっそ、お互いに目隠しをしてぐるぐる目が回った状態で最初に掴んだ人と踊ればスリル満点でしょうに」


「・・・」


「どうしたの?」


「今、思いついたことが」


「なになに?」


「えーっとですね」



□  □


「最近すごく楽しそうだな」


「はい!楽しいし忙しいです!ではまた」


「ちょっとまて」


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