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いろいろな概念

「え?」


フードを深く被っているその人は木に抱きつくような姿勢で動かない。


「え?」


この事実がなかなか理解できず必死に考えた。


私は何かに引っ張られ、その引力に逆らって風を利用し、この引力の元へ行って正体を見極めるつもりで準備をし、いざ引っ張られようとしたら細い糸のような弱々しい引力だったので焦れったくて引っ張った。


魔法使い現れる。


「え?」


大事な人たちを連れ去り、記憶を操作するような強い魔法使いが私に引っ張られた?


「まさか」


そんな現実あるものか。私も連れ去られて記憶を消されるんでしょう?


そう思っているのに、その白いローブの人は体力が切れたかのように動かない。

荒い呼吸を繰り返して辛そうだ。あまりに辛そうなので思わず


「大丈夫ですか?」と声をかけた。


首を横に振ったので、何か飲み物をと考える。

近くに湧き水や川があれば・・・ある!水の気配を感じたので指を鳴らしてふわふわと水球を移動させる。


「たぶん綺麗な水だとは思いますが」


白いローブの人の口元へと近づけてみるとまた首を横に振られたので、


「少し乱暴ですけど・・」パチンと水の球体をその人の頭の上で壊す。


ばしゃーっと頭から水をかぶってびしょ濡れになった人が顔を上げた。

男性だか女性だかわからないその人の顔がどんどん変化して見たことのない生き物の顔になった。


「えーっと・・・水は苦手でしたか?」


私の質問が不思議なのかきょとんとした顔で首を傾げるので


「顔がずいぶん変わりました」


「!!」慌てて手でペタペタと顔を触って確認している。


元はフサフサしているであろう白いヒゲも水をかぶってくったりしている。


慌てている様子でも呼吸は落ち着いてきていると判断し、指を鳴らして水を取り除く。少し濁った水球は木の根元に還元しておいた。


「えーっと・・・あなたは誰ですか?」


「・・・」


「私はアリーチェと申します。ご覧の通り魔法使いです」


「・・・グリ」


「グリさん」


「違う。ティーグリだ」


「ティーグリさん?」


「合ってる」


「あなたが私の大切な人たちをさらって記憶を操作した犯人ということでよろしいですか?」


「・・・犯人」


「イアから私の記憶を消した悪い魔法使いという認識ですが」


「ごめん」


「簡単に謝られても納得できないわ」


「!!」


「簡単に『ごめん』っていう人の謝罪って信じられない」


「・・・い、いや」


「私のこともさらおうとしましたよね?」


「君を狙ったわけじゃない」


「では誰を狙ったのですか?」


「・・・綺麗な人」


「怒りが倍増しました」


「だって君は地味じゃないか!」


「地味の良さもあるんです!」


「華やかな人がいいんだ!」


「まあそれは確かに地味から急に華やかさを身につけるのは困難ですけど」


「華やかで綺麗な人がいい」


「その華やかで綺麗な人をさらって何をしたの」


「華やかで綺麗な人の綺麗な魂を少し」


「は?」


「あと、単に目が嬉しい」


「それはわかる」


「あと、少し素材を」


「は?」


「ほんの少しの爪とか髪とか血とかだ」


「血!?」


「血は傷つけてまで使わない」


「・・その血とかをどうするの?」


「魔法陣を描くインクの材料」


「!!」


「君は魔法陣を使わないのか?」


「発動しない理由がわかった気がする・・・って重要なことを飛ばすとこだった!魂を少しってなに?!」


「食べ・・・たりしてない」


「怖い冗談はやめて」


「少し触れさせてもらっているだけ」


「触れる?」


「ピュアな魂かどうか」


「ピュアじゃない魂なんてあるの?」


「ある」


「ど、どんなの?」


「不味い」


「やっぱり食べてるじゃない!」


「食べてない」


「食べてる前提で質問するけど、食べられたら寿命が縮んだりしないでしょうね」


「食べてない。エネルギーに触れるだけ」


「・・・舐めてない?」


「舐めたりしない」


「舐めてないのに不味いってわかるの?」


「重くて色々と混ざっている。だから一緒にいると体が辛い」


「・・・そうなのね。ちなみに私といて辛くない?」


「・・・・」


「・・・」


「・・・」


「そんなに答えにくいの・・」


「いや、君は魔力があるから魂より魔力のほうが伝わってくる。そしてとても心地がいい。自然と相性のいい魔力なんだな」


「!!」


「まだ目覚めてない部分もあるが、そこは未知の領域だ」


「ふーん」


「・・・」


「ねえ、体が辛そうだけど移動できる?」


「無理だな」


「無理なの?」


「この体はもう寿命が近づいてきていて、魔力や体力がすぐ切れる」


「何歳なの?」


「1000歳は超えてる」


「長生きね」


「そうだな」


「あとどれぐらいの寿命なの?」


「あと50年ぐらい」


「・・・長生きね」


「そうだな」


「お腹空いてる?」


「もう随分食べてない」


「何でも食べられる?人の生き血じゃないと無理とか言う?」


「血なんか飲んだことない」


「動けないみたいだからちょっと待ってて、学園の森から出ていないと思うから15分ぐらいで戻って来る」


「逃げるぞ」


「逃げる体力ある?」


「・・・ないな」


「じゃあ待ってて。待ってたほうがきっと良いことあるから」


「わかった」


少し迷いそうになったけれど、すぐに学園への小道を見つけて戻り、荷物を取ってから食堂で残っている食べ物を買って早足でティーグリの元へ戻る。


木の幹にもたれていて、まだ力は回復してなさそう。


「とりあえず食べて」


「分かった」


飲み物を準備している間にペロリと食べ終わっていた。


「ヒゲに隠れてるけどものすごく口が大きいの?」


「そうかもしれないな」


「ずっと気になっていたんだけど、話し方や言葉が若いのか年寄りなのか女性なのか男性なのかわからないわね」


「・・・人間じゃないからな。若いか老いてるか男か女かの概念があまりない」


「ってことは・・・体は寿命が近くても、精神は歳を意識して生きてないってことよね」


「千年以上も生きているが、老人らしく振る舞おうと思ったことはない」


「そう・・・」


「万年生きているような存在がいたとして、そいつから見れば私は若いだろう」


「なるほどね」


「・・・」


「で、家は近いの?」


「近いがまだ動けそうにない」


「じゃあ背負っていってあげるわ」


「親切だな」


「そうなの。悪いけど荷物は持ってね」


荷物を手渡して、ティーグリをよいしょと背負い、魔法をかけて軽くする。


「背負わなくても運べるんじゃないか?」


「たぶんね。でもなんか荷物を運ぶみたいで嫌なの」


「・・」


「はい、道を教えて」


「そこを左」


「え?」


言われた通りに曲がった途端に目の前にこじんまりとした家が出現した。


「これ、魔法で隠してるの?」


「普段はカモフラージュしてるし、人よけしてる」


「これも魔法陣?」


「そうだ」

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