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男心と友達心

□  □


確認の時間は一緒に外に出たけれど、お互いに仮面を外して確かめあうのはなんとなく無粋な気がして。でもそのまま離れるのは二度と手がかりを掴めなくなるようで不安だわ。


下を向いて考え込んでしまった私を無言で待ってくれている。


「そうだわ!」


思わず声を出してしまったけれど、また口を噤んで腰につけていたタンポポの札を外して急いで裏に「E」と書いて渡した。


それだけで伝わったらしく、その人は裏に「I♡」を書いて渡してきた。


ハートがやけに可愛らしく見えて、思わず笑ってしまう。

それを見たその人も大きな笑顔らしき口元になる。


最後まで言葉を交わすことはなく、いつか答え合わせが必要になったときのために札を交換して会釈をして別れた。


□  □


「スタッフのみんなは集まってちょうだい」


キアーラの声がかかる。


「イア、大丈夫?」


「たぶん」


「たぶんって・・・」少し焦点が合っていない目を覗き込む。


「ちょっとごめんね」


イアのおでこに手を当てて熱を確かめた。


「熱はないみたいだけど・・立てる?」


「ああ」


ゆっくり立ち上がったイアの瞳を覗き込んだ。


魔法使い?


もし本当に私以外に魔法使いがいたとして、イアに変な魔法がかかっていないか確かめる術はあるのかしら。


魔力の残り香みたいなものを探す。

今までそんなものを探そうと思ったこともないけれど、イアに何かあったら心配だし。

イアの肩、イアの腕、イアの背中、ゆっくりとポンポンと叩きながら探していく。


・・わからない。


それならと、まだ少しぼうっとしているイアの目の前で思い切り手を叩いた。

心ここにあらずなら、大きい音でびっくりして戻ってくるかなと期待して。

少しビクッと体がはねたけど、そこまでしっかり戻ってきていない感じがして、


「ちょっと今のイアの状態が不安だから、私の側にいてね」


そう声をかけて手を繋いだ。


□  □


「えーーっと・・」


「イアサント様と、アリーチェは恋人同士になったと理解すればいいのかしら?」


エレノア様が戸惑いながら尋ねてくる。


「違います!ちょっとなんか調子が悪そうなので、手をホールドしているだけです!」


「なんという奇っ怪な」


「奇っ怪って」


キアーラがおかしな言い回しをするので思わず突っ込んでしまった。


「具合が悪いなら医務室かお家の方に知らせて」


「そうします。えっと・片付けを抜けることになりますが」


「片付けは頼んであるから大丈夫。月曜に反省を兼ねて報告会をする予定だからいつも通り来てね」


「はい!では失礼します」


お辞儀をしてからイアの手を引っ張ると、さっきよりはしっかりした目つきになっていた。


「とりあえず、明日イアも落ち着いたら私の家に来て」


「うん」


「大丈夫?」


「あ、うん」


「なんか返事が変なんだけど」


「え?そうかな」


「うーーん・・」


不安を感じながらも今日できることはないと判断して車に乗せて見送った。


□  □


魔法使いらしき人物に会ったのはびっくりしたんだけど、アリーに触られる感触と繋いだ手に集中していた。


そんなことを言ったらアリーは手を離して遠ざかるんだろうな。

その様子が簡単に想像できて思わず笑う。

魔法使いにはびっくりしたけど、心配と驚きで簡単に僕に触れるアリーのほうが記憶に強く残り何度も思い出しながら遅くに眠りにつく。


□  □


気になって落ち着かない夜を過ごし、翌日の午後にイアがやってきた。


「何があったのか教えて」


「顔とかわからないし、どこか記憶が曖昧だけど・・急に体が動かなくなって『魔法を信じてるのか』」


「え、全然わからない」


「うーん」


「じゃあ推測するから違ったら教えて」


「わかった」


「誰かに出会った」


「うん」


「その誰かのせいで体が動かなくなった?」


「たぶん」


「その人物が『魔法を信じているのか』って言った?」


「そう」


「急にそんなことを言われるのがよくわからないんだけど・・」


「それはたぶん僕が『魔法か?』みたいなことを言ったんだと思う」


「それに対しての答えが魔法を信じているのか、なのね」


「たぶん」


「他に何か言われた?」


「やたら『美しい』って言われた気がする」


「まあ」


「やめろ。僕を【ナルシストってこれだから】みたいな目で見るのはやめろ」


「何も言ってないじゃない。美しい顔だと私も思ってるし」


「僕の顔・・好き?」


「好き」


「へえ」


「その人、性別は?」


「・・わからない」


「そう」


「手が」


「ねえ?」


「うん?」


「耳が真っ赤なんだけどどうしたの?」


「え?」


「魔法の後遺症かなんかなの?」


「え?」


「ちょっと見せて」


耳にだけかけられる魔法があるのかしら?


でもさっきまでは赤くなかったし・・顔は赤くないし・・体をとめる魔法が使えるなら、耳になにかかけていてもおかしくないし・・


近くで耳を覗き込んだり、耳たぶ引っ張ったりして調べる。


「う・・ん」


「どうしたの?何か異変?」


「い、いや・・ゾクゾクするというかなんというか」


「あ」慌てて手を離す。


「ごめん、夢中になって触りまくってた。こそばゆいわよね」


「・・」


「で、なんの話だったっけ?」


「えーっと・・手」


「手が?」


「カサカサしてた」


「そう」


「なんだったんだろう」


「何か探しに来てたとか、調べに来てたとか?」


「うーん」


「ねえ・・・その人、怖かった?」


「わからない」


「もう一旦忘れてまた接触があれば考えましょうか」


「アリーはそれでいいの?」


たぶん魔法使いの仲間がいるかもしれないのに探さなくていいの?ときかれているのだろう。


だけどやっぱり魔法が使えることは言う気になれず


「いいわ」


そう答えた。


□  □


「さて!皆で反省と満足と興奮について話し合いましょう」

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