THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES
レビュー執筆日:2021/6/2
●ヘビーなサウンドに様々な要素を取り入れることにより、彼らならではの「個性」が浮かび上がってくるアルバム。
【収録曲】
1.No One Knows
2.SiCK
3.Devil in Your Heart
4.HEADS UP
5.BASEBALL BAT
6.Smoke in the Sky
7.BLACK & WHiTE
8.Crying for the Moon
9.YO HO
10.CAPTAiN HOOK
11.SAND CASTLE Feat. あっこゴリラ
12.BULLY
13.FATHERS
「レゲエパンクバンド」を自称する4人組バンド・SiMのアルバム。このアルバムを聴いて分かりやすく感じられるのは、低音を強調させたヘビーなサウンドでしょう。特に、『CAPTAiN HOOK』はイントロから重量感のあるサウンドが急に飛び出してくるような感じで、開始数秒でその雰囲気に一気に引き込まれます。
全体的に見れば、ダークで攻撃的な空気感をまとったアルバムで、ほぼ英語詞ということもあって個人的には耳にするだけで曲ごとの歌詞のテーマの違いがすぐ分かるというわけでもないのですが、そうでありながらも一辺倒にならないような工夫が色々となされているように感じられました。「レゲエパンクバンド」を自称するだけあって、『HEADS UP』や『Smoke in the Sky』のようにレゲエのリズムを取り入れた曲もありますし、『Devil in Your Heart』や先程挙げた『CAPTAiN HOOK』における歌謡曲的なメロディは非常にキャッチー。『SAND CASTLE』ではボーカル・MAHとゲストラッパー・あっこゴリラのラップやスティールパンの音色が印象に残りますし、最後に『FATHERS』という明るく爽やかなナンバーで締めるという構成からはアルバムとしての「流れ」を意識している点がうかがえます。
ここまで挙げた「工夫」はこうやって言葉にするとそこまで珍しいものではないかもしれません。歌謡曲的なメロディに英語詞を乗せるというのはある意味「日本のバンド」的ですし、ロックバンドにラッパーがゲストとして参加するのもよくあるケース。ただ、そういった様々な「引っ掛かり」をヘビーなバンドサウンドに上手く絡ませた結果、アルバム全体を通してしっかりと彼らならではの「個性」が浮かび上がってくるように感じられます。私はどちらかというと日本語詞を中心にしているバンドが好みなのですが、そんな私でも色々と興味深く聴くことができたアルバムでした。
評価:★★★★★