第8/もういいよ
「只今、祭りの現場からお伝えしております」
黒子が人形を二つもってくる。それは、ガンマとデルタと同じ服を着たかわいい人形であった。
アナウンサは、黒子からそれを受け取り、先ほどの人形の横に置いた。3体の人形がここに集う。
「僕らは鬼に見つかれば」
暗がりの中でベータは空を見上げ、つぶやいた。
「人形……?」
黒子から手渡され、アナウンサーはそうつぶやいた。アナウンサと、ベータの声が重なった。
再び電気が消え、暗闇が襲う。
「今日は本当に停電が多いね。電気使いすぎなんじゃないの」
祭り客の男の声。
「この作為的な闇。迷い込んだ幻には、出口はない。あるとすれば……」
ベータは暗がりを渡り歩く。
「それにしても、空が綺麗ね」
祭り客の女の声。
「もう手遅れだよ。みんな、みつかっ……」
「あ、流れ星だぞ」
「ん? あ、消えちゃった……」
男と女の声。
「あーあー……停電といったハプニングがありましたが、皆様は楽しんでいるようです。えーあー、以上、暗闇の大祭りの現場から、中継でお伝えしました」
アナウンサは、人ごみの中に混じり、もうどこへ行ったか分からない。
月の光が、点いた。月蝕は終わり、月の光が戻ってきた。
地面に散らばる、たくさんの人形たち。男も女もすべて白い無地の人の形で形どっている。その中に、ベータと同じ服を着た人形も紛れ込んでいた。
「……6、7、8、9、10。もういいかい?」
鬼は言うが、誰も答えない。何も聞こえない。鬼は散らばった、人形を拾い始める。
「さぁ、かくれんぼしようか。新しい仲間がこんなに、たくさんいるしね。……じゃあ、数えるから隠れて。でも、外の祭りに行っちゃ駄目だよ。いなくなった子が、たくさんいるから。本当にたくさん……」
隠々鬼は、再び数を数えだした。
「1、2、3、4、5、6、7……」