第4/みんな同じ顔
華やかな音楽が、黒いスピーカーから流れている。パイプ椅子がいくつも並び、人々がまばらに座っている。
アルファはあいている客席に座り、人々の様子を観察した。みんな、同じ格好、同じ顔。だれがだれがだれなのか、さっぱりわからない。
突然客席が照らされた。どこからともなく、急に現れたアナウンサーが、突撃インタビューを始めた。
「ハイ、こちら只今、お祭りの現場より生中継致しております。わたくしこと、名アナウンサ「安達」は、今日も元気で、ハイ、仕事をしております。それでは、芝居が始まるまでの間、皆様方に今日の感想を聞いてみましょう。ハイ、あなた」
客の一人に、マイクを向けた。
「一言で良いので、感想をどうぞ」
「●●●●●●」
突然のことに惑いながらも、観客の一人は答えた。
「ハイ、ありがとうございました。それでは、次の方にも聞いてみたいと思います。ハッキリ言って、どうでしょう?」
「……」
マイクを向けられたが、何をいったらいいのか分からないらしく、黙っている。
しかし、それは、想定のうち。
名アナウンサは、こんなことでは、困らない。さっさと切り上げてしまうのだ。
「ハイ、分かりました。貴重な意見、ありがとうございました。最後に、もう一人お願いしましょう。そこのあなた」
客席に座っているアルファにマイクが向けられる。
「そこの、変わった服のあなたです。どうでしょうか?」
「……あ、まだ、来たばかりだし……う……ん?」
何の前触れもなく、停電のようにばちんと、電気が消え、闇に包まれる。
マイクの音声も切れた。
暗闇、無音。
どたばたと、スタッフが走る音がする。何かトラブルがあったらしい。黒い服を着た大人、黒子が、ペンライトと拡声器と共に現れ、アナウンサになにやら耳打ちし、去ていく。
「あー、只今、照明担当より、停電中という情報が入りました。すぐに復帰すると思われるので、少々お待ちください。あー、只今、停電中という……」
何が起こったか繰り返し、情報を流していた。