第2/隠隠鬼の仮面
暗闇の中、何もない舞台の上に、少年はいた。
古くて黒色のラジカセを持った、キツネ面をかぶった少年は空を見上げている。
「月が、かけていく……」
今日は、月蝕。
地球の影につきが隠れてしまう夜。
少年は、スイッチを入れる。
そこからは、カセットが回る乾燥した音しかしない。
音楽のなるようなものは、入っていない。
ただただ、回っている。
から回り。
「だれも聞こえない新鮮な香。その中でしゃべらない機械仕掛けの子供は生まれ、無邪気に遊ぶ」
観客が座るであろう椅子の上には、白い人形が置かれている。人の形をした、白い布を切り取った人型の。
「だれも見えない深遠な味。その中で、見えない球体関節人形の子供は育まれ、邪悪に戯ぶ」
鬼の手の中に、かわいい二つの人形がある。
「隠隠鬼は永遠の子供、成長しない闇の中をサマヨウ。たくさんの人形と共に」
光と闇の時間が終わるとき。人形たちは、記憶をなくし、再び目覚める為に、眠りにつく。
くりかえされる、繰り返される事象。
子供でいたい鬼。
終わらせたくないあそびの時間。
鬼の誘惑に、あそびも忘れ、目を醒ます。
自我を持ち、その地で生きていく。
しかし、自我を持った子らは、
遊びを忘れ、
鬼を忘れ、
全て忘れ、
鬼はいつも、最後には独りだけ。
夢へ戻ることも、現実へ覚めることも、できない。
いつまでも、いつまでも、くりかえす、くりかえす。
からから、からから、空回り。
キツネ面の少年は、暗闇の底へ消えていく……
月は、もうすっかり闇の中。
挿絵:隅の人様作。