「謎の進展」
「う、うそだろ...」
牧野の脳裏にいろんなことか行ったり来たり、回って戻ったりした。初めての感覚だ。感情が追い付かず、絶望が押し寄せてくるのは、少ししてからだった。
更科が亡くなっても大学の授業は全くもっていつも通りに進んで行く。朝の知らせから頭がおいていかれているのは、牧野だけだ。授業に精がでない。当たり前だ。
大学の帰り、過去一番の重い足を引きずりながら下校する。悲しい、辛い、今日は1日中更科のことでいっぱいだ。そして、あの横断歩道に着く。向こう側に女性が信号待ちをしている。その女性はなんとなく更科ににている気がした。
「!?...まさかな」
信号が青になる。牧野と女性しかいない横断歩道をゆっくりと歩き出す。次第に距離が近くなる。牧野は今日1日でやつれた顔をその女性にチラりと向けた。そこには、死んだはずの更科が悲しみに溢れた顔で歩いていた。
「え、え、え!?」
思わず声が漏れでた。すると、更科は牧野を見つめる。その時間は一瞬だったはずだが、スローモーションに感じゆっくりと長かった。そして、更科は口を開く。
「私が、見えるの?」
悲しみに溢れていた顔が驚きへと変化したのがよくわかった。牧野は、頭の整理がつくまえに答えた。
「う、うん」
更科は少し安堵したような顔をしていた。そして驚くことを口にする。
「詳しいことは後で話すから、あなたの家にいさせてくれない?帰える場所がないの。」
牧野は目を丸くし、瞬きすることすら忘れていた。更科は死んだはずだ。なぜここにいて喋っている。頭が追いつかない。だか、牧野にとって更科が自分の家に来るなんてことは夢のまた夢だ。よって答えは明確だ。
「ま、まぁいいよ。」
声が震えた。緊張している。だが、同時にワクワクもしている。許可をもらった更科は嬉しそうだ。牧野は気付いていないが、更科にとって牧野は窮地を救ってくれた小さなヒーローになりつつあった。
「ほんと!?ありがと!」
そして牧野と更科の謎だらけの同棲が始まるのであった。