「再会」
ゆっくりと日が上り、辺りが少し明るくなってきた。その少しの変化に牧野はすぐに気が付いた。なぜなら牧野は寝れていない。前夜にカフェインコーヒーをがぶ飲みしたかと疑うほどだ。だが原因は明確だ。女性免疫のない牧野からしたら、あの出来事はかなり衝撃的であった。
そもそも牧野に彼女が一度もできない理由はなんなのか。それは、牧野の思いの弱さにある。牧野はかわいいななどとはよく思う。だが、告白するほど好きにはなれない。勇気がないのだ。免疫がないから、出会いも少ない。そのせいで牧野は彼女なしのオタク大学生なのだ。
今日は大学の登校日。半オタク生活の夏休みも終わり、もとの生活に戻る。普段なら7時に起きて、力の入らない子鹿のような足どりで前へと進む。そして、洗面所で顔を洗う。すると、さっきの眠気は嘘みたいにスーと消えていく。不思議だ。朝食はいつも菓子パンだ。口の中の水分が根こそぎ取られる。だから牛乳は必須であり最高のお供だ。そして、学校へは歩きで向かう。この瞬間に牧野はいつも近くて良かったと思う。しかし今日の牧野は違う。朝起きるのが早すぎた。だからといって二度寝はしない。いつも通りの朝の準備を済ます。当然時間は余る。余った時間で何をするのか...。アニメだ。アニメである。アニメしかないのだ。寝るよりアニメ。なかなかの重症だ。
かれこれして学校に行く。教室に一歩を踏み入れる。
「ん!?」
何かが違う。まるで五感全てを触られたような違和感。回りを見渡すと、牧野にしか見えない不思議な輝きをまとった女性がいた。
「ま、まさか、あの子なのか!?」
あの子である。牧野は、その時恋愛の神様が少し振り向いた気がした。