「0.5秒の出会い」
ここはとある都会の町、燦々と輝く太陽のもとで一人の少年とその友達がいた。
「あーあっちー」
「お前それしか言えねーのかよ」
「それ以外言うことねーもん」
彼の名前は牧野楽翔その友達は高野幸平。牧野は人生で一度も付き合ったことのない大学生だ。その現実から逃避するために、高校生の時オタクと成り下がり現在進行中である。
「じゃ、俺あちーし本屋寄るからここで」
「またオタク漫画かよ」
「そーだよバカ」
牧野と高野は駅の前で別れた。ここから本屋に行くために電車に乗る。
「ここ人多いんだよなー」
人の波にのせられて電車乗った。車内は冷房が効いているはずだが、人の体温のせいでむしむしと暑かった。
「あ、あと十分く、くらいか」
やっとの思いで目的の駅に到着した。外に出ると開放感が一気にきた。そこで車内に冷房が効いていたことに今さらながらに気付いた。
本屋までの道のりは少しキツイ。しかし、牧野はたんたんと進む。踏みしめる一歩一歩が弾んでいた。
「運動してたかいがあったわ」
本屋に着くと、今までの疲れがスーと抜けて気持ちが良かった。牧野のようなオタクからしたら本屋は宝庫だ。まるで宝探しのように、ウキウキした気持ちで宝を探す。
「あーこれもこれも欲しいなー」
欲しいものが多すぎてなかなか決められない。
かれこれしているうちに時間が随分経ったようだ。
「よし、帰りますか」
帰りは結構空いていてすんなり帰れた。駅を降り、この横断歩道を渡れば家だ。すると、反対側の方から女の人が歩いて来る。牧野は確信する。あの子はかわいいと。そしてすれ違いの瞬間、パッと彼女の方を見た。一瞬だがやはりそうだ。
「かわいい!」
彼女の髪は短く、毎日ケアを忘れていないほど、サラサラだった。そして、わずかにシャンプーのいい匂いがした。
もう会えないと分かっているのにその日は気になって夜も眠れなかった。