第八話 新たなお仕事
「はぁっ!」
「えいっ!」
グガァ
今は俺とリーネでモンスターを狩っているところだ。今日もザナボア討伐にした。安全第一と言うのもあるが、宿でこの肉を使っていて、手に入れてくれると助かるとナタリーさんが言っていたので入手しているところだ。牙は武器になるらしいが宿では使わないので証明部位として提出しお金に変えている。グロブディンの甲羅の中のぷにぷにしたところは肝臓でお酒のつまみにしたり、肝臓の下にある肉は豚肉のような感じで焼いて食べたりするらしいが今日はクエストボードに出ていなかった。
「ふぅ、だいぶ狩ったな」
「そうだね」
因みに今日は朝から狩りに来ている。リーネの宿の手伝いは接客と俺と一緒に食料集めということになった。一部の客には恨めしそうに見られたが気付いてないふりをした。
「そう言えば、宿の料理にはザナボアやグロブディン以外の肉や魚があった気がするんだけど…」
「あるよ。でも、結構強いらしいから。でも、ヨーマさんなら勝てそうだけどね」
「結構ランク上がったしな」
そう、俺はこの前のチンピラを倒したりで一気に緑、D2+まで上がっていた。ステータスプレートを更新してもらおうとするとギルド館の受付が固まったり町中では噂になったりもしたが、最近は段々と慣れてきた。
「そうそう、聞こうと思っていたことがあるんだった」
「ん?どうしたんだ?」
「ヨーマさん、あのとき凄い速さで動いていたから何か使ったのかなって」
「あぁ、その事か。身体強化だよ。まぁ、扱いにくくて壁に突っ込んだけどな」
「確かに突っ込んでた。大丈夫だったんだよね?」
「硬化魔法も使ってたからな」
「扱いにくそうだけど身体強化って便利そう。でも、聞いたこと無いんだよね」
「あぁ……、えっと……」
「どうしたのヨーマさん?」
「誰にも言わないでくれよ?実はな、創ったんだ、身体強化と硬化魔法」
「創った!?」
「しっー!えっとね、俺の能力に魔法の創造とその保存、使用てのがあるの。それで創って使った。急いでたからいろいろと不十分な魔法だったけど」
あの後宿に戻ってから調整したので、今はかなり使いやすくなっている。足に魔法を送れば蹴りや脚力が上がるし腕に魔力を送れば相手を殴る時の威力が上がったり魔力弾を打ち出すことができる。因みに魔力を送った場所は硬化されるように改造した。そんな風にある程度の説明をリーネに説明していると、俺のお腹がなった。
「あっ!」
「そろそろお昼だもんね」
「一旦町に戻って昼にするか」
「待って、今日は作ってきたの。はい」
「おぉ、手作り弁当!」
「町の外だから簡単に食べるものにしたんだ。これは、トラメッジーノって名前の食べ物だよ」
リーネの出したかごの中にはザナボアやグロブディンの肉とレタスのような野菜に甘辛のタレをかけてパンで挟んだものが入っていた。まぁ要するに、サンドイッチだ。
(この世界でもあるんだな。食べやすいし、ちょうどいいな)
「これはね、トラメッジーノ公爵って人がカードゲームの途中で何かを食べたくなって簡単に食べられるものをメイドに作らせたのが始まりって言われてるんだよ」
(ん?なんか、聞いたことのあるような話だな。何だっけな?まぁいいか)
「それじゃあ、いただきます」
「どうぞ、召し上がれ!」
「………うまいっ!やっぱりリーネの作るご飯はうまいな!」
「そんなぁ…。でも、ありがとう♪」
「いや、こちらこそこんなに美味しいのをありがとう」
「それこそだよ。美味しいご飯を作るって約束したしね!」
「あぁ、そうだな。うまいよ、これからもリーネが作ってくれたらなぁ」
「えっと、その、作ろうか?ご飯」
「いいのか?」
「うん!私も作りたい!」
「それじゃあ、お言葉に甘えようかな」
俺は小さくガッツポーズをした。だって、これから毎日リーネの手作りご飯が食べられるとなるとしてしまうだろう。男なら好きな子の手作りご飯は一度でいいから食べてみたいものなのだ。それを毎食となれば、
(胃袋を捕まれる気しかしない。だが、悪い気はしない。むしろつかんでほしい。)
俺たちはその後も話をしながらトラメッジーノを食べ、狩りを再会し暗くなってくる前にギルド館で報酬もらって宿に戻った。
「帰りました~。ナタリーさん、ザナボア30体くらいいるんですけど、どうしたらいいですか?」
「まぁ、そんなに?ありがとう。それは倉庫にいれておいてくれるかな?」
「分かりました」
俺はそう返事をすると倉庫に向かった。因みにザナボアを入れている袋は専用の物だ。入る量は持ち主の魔力量に関係してくるのは変わらないが、それでも普通よりは大きいし鮮度が長い間保たれるから食材入手の時はこの袋を使っている。宿は最近、俺が使っていることやリーネ、あとは親玉さんの加護?があるとかなんとか噂になってかなり客が増えた。ご飯だけを食べに来る客も多く食材が足りなくなってきていたので食材の調達は嬉しいらしい。現に倉庫はかなり少なくなっていた。
「昨日取ってきたばかりなのに」
「でもザナボアって小さいし取れる肉の量がそんなに多くないからね。グロブディンはそこそこ取れる肉があるから出来れば受けてほしいらしいよ」
「そうだな。めんどくさくはないからいいんだが足りなくなると困るからな」
そんな話をしつつリーネとザナボアを倉庫に入れてホールに入った。ホールでは忙しい時間から抜けて休憩時間のようだった。
「ありがとうヨウマ君、あとリーネも。食材の調達は業者だと間に合わないからね。味も落ちたのがあるし、提案してくれて助かったよ」
「いえ、こちらは変わりに宿代の免除してもらってますしね」
そうなのだ。俺は客が増えだしてから食材の調達を名乗り出たのだ。そしてリーネも手伝いにもなるからと言い、することになった。それで、その見返りに借金の肩代わりの分が無くなっても宿代を免除してくれることとなった。
「そうだ、ナタリーさんこれから夕食時になってまたお客さん増えますよね?料理、手伝いましょうか?」
「いやいいよ、そこまでしてもらうわけには。それに、こちらはこれ以上してやれることがないんだ」
「俺がしたいだけなので。リーネも接客をしているのに俺だけ休んでるなんてできません」
「そう?それなら、お願いしようかな」
「はい!任せてください………。あっ!でも作り方知らないんだった」
「それもそうだね。じゃあちょっと厨房に………、いや、そうだね。リーネ!ちょっと言いかい?」
「どうしたのお母さん?」
「ヨウマ君がね宿の料理を手伝ってくれることになったから教えてあげてほしいんだ」
「そうなの!いいよ、でも何で私?」
「そりゃあ、私が教えるよりもリーネが教えた方がやる気が出そうだからね」
「な、ナタリーさん!?」
俺は恥ずかしくなって目をそらした。見るとリーネも少し照れ臭そうにしていた。その後その場から動かなかった俺たちはナタリーさんに押されて厨房に入り俺はリーネに作り方を教えてもらった。その日はいつにもまして客が多かったが俺が入ったお陰で助かったよとナタリーさんにお礼を言われた。その後は約束通りリーネが夕食を作ってくれ一緒に食べた。
「ごちそうさま。ふぅ、お腹いっぱい」
「お粗末様。お皿洗ってくるね」
「俺も手伝うよ」
「本当に?じゃあお願い」
最近はリーネもナタリーさんもは最初の頃に比べると遠慮をしなくなってきた。別に態度が悪くなったとかそう言うわけではない。俺は何だか、さらに仲良くなってきているみたいで嬉しくなった。そして、うかれて皿を落としそうになり冷や汗をかくのであった。皿を洗い終わると部屋に戻った。部屋はリーネと同室になった。これを言い出したのはリーネだ。俺もナタリーさんもかなりびっくりしたが俺は構わない、と言うか大歓迎だしナタリーさんも嬉しそうにしていた。
「ふぅ、疲れたね」
「そうだな。でも、嫌な疲れじゃないな」
「そうだね。私も」
「やっぱりここに泊まってよかったよ」
「私もヨーマさんがここに泊まってくれてよかった」
「っ!!そう?それなら、よかった。………そうだ、明日も朝から狩りに行くつもりだし疲れが残ったらいけないからもう寝ようか?」
「そうだね。じゃあ、お休み、ヨーマさん」
「あぁ、お休み、リーネ」
俺はリーネの笑顔にまたドキッとして誤魔化して寝ることにした。その後、リーネには耳元で反応が可愛いとは言われたが。